第3話 悪役の俺、男爵相手に粗相を連発する
「今日、今から行く男爵の家はレイフォンと言う名の家だ」
「なるほど」
「令嬢のフルネームはティナ・レイフォン。粗相のないようにな」
むふふ。
ティナちゃんか。
顔写真は見せてもらったが中々可愛かった。
俺は悪党なので犯したいと既に思っていた。
いつになったらティナちゃんを犯せるのかワクワクしながら馬車に乗っていた。
そして俺たちを乗せた馬車はやがてレイフォン家に到着したので呼び鈴を父上が押した。
数分しても出てこない。
「出てこないな?」
出てこないな、じゃないんだよ。
出させるんだよ。
「こういうのは出てくるまで押すんだよ。出なきゃめんどくせぇなぁ、と思わせるのが出させるコツなのさ」
俺はそう言って呼び鈴を連打する。
ピンポ、ピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポ。
「はいはい、どちらさま?」
若干鬱陶しそうな顔で出てくるレイフォンの当主。
「すごいなカイン。ちゃんと出てきたぞ」
「だろ?」
俺は父上にそう言いながらレイフォン家当主に父上が話すのを黙って聞いていた。
「あ、あぁ、婚約の話ね」
すげぇフランクな話し方をする当主が家の中を案内してくれる。
通されたのは応接間。
俺は通された部屋のローテーブルに足を置いてソファにもたれかかる。
「ふぃ〜」
俺の父上はとんでもないものを見るような目で俺を見てきたが、俺は悪党なので気にしない。
それにレイフォンの男爵も特に気には止めていないらしい。
それどころかこんなこと早く終わらせたい、と言うようなちょっと焦りが見えている気がするが、ティナちゃんに会いたい。
「ところで、ご令嬢はまだなのかな?是非とも顔を見たいんだが」
「すまないね。今日娘は体調が悪くて出られないだ」
「なら俺が看病してやろう。未来の嫁なのだ。それくらいは俺がしてやる」
と言って立ち上がろうとしたが慌てて止めてくる男爵。
「風邪が酷くてね。すまないね」
「俺のヒールなら風邪くらいすぐに治るさ。さぁ、案内してくれ」
何やら困惑しているらしい男爵。
そうか、俺の優しさに言葉も出ないのかもしれないな。
「未来の嫁さ。勿論治療代なんて請求しないさ」
そう言って立ち上がると俺は部屋を出ようとしたが呼び止められた。
「ま、待ってくれ。ははは。そこまで言うなら娘を呼んでくるよ」
そう言って男爵は出ていった。
数分後。
メイド服に身を包んだティナが応接間に入ってきた。
咳き込みながら。風邪も大変そうだなとか思いながら俺はティナを近くに寄せた。
そして
「ヒール」
呟く。
するとみるみる回復していく……いや回復してないなこれ。
俺がヒールを使えば使用された側がどの程度回復してるかは何となく分かるんだが、今回の場合一切回復してるような感じがしない。
なんと言うか既に体調が万全な人間に更にヒールしてるようなそんな感覚。
なんだこれ?風邪なんじゃないのか?
「ん?」
「か、肩もみますね」
俺が首を傾げようとしたところティナは俺の後ろに回ってきて肩もみをし始めた。
そしてその右側の指だけ少し特殊な動きをしていた。
(ん?O?S?)
何か伝えようとしているようなのでそれとなく集中してみる。
(S.O.S?)
何だ?助けが必要なのか?
そう言えば初めからなんか違和感はあったな。初めのピンポンで出てこずに、ピンポン連打で出てきたこと。
有り得なくね?
父上だって男爵に話は通しているはずなんだから、予定は開けてあるだろうし1回目のピンポンで出てくるはずだ。
数分も出てこないなんておかしい。
それに俺がローテーブルに足を投げ出した時父上がなんだコイツみたいな表情を向ける中当主はどうでも良さそうな顔をしていた、な。
普通自分のものをそんなふうに扱われたら怒るよな?
(少し探ってみるか)
俺は魔力を少しずつ家中に浸透させていく。
これで家の内外を問わずにこの家で何が行われているのかは把握ができる。
家の中に覆面の男が4人。ロープで拘束された人達が何人か。
(なるほどな。家に盗賊が乗り込んできた、ってところだろうか)
そして目の前のこいつは当主ではない。
理解した俺はこの部屋以外にいた3人を魔法で氷漬けにした。
「さぶっ!」
何かが起きたのに気付いたらしいが、もう遅い。
目の前の盗賊も俺は足を凍らせた。
「ティナ、これでいいんだよね?」
「は、はい!」
唯一何も分かっていないらしい父上は不思議そうな顔をする中俺は目の前の盗賊に聞く。
「他の奴らは首だけ残して全身凍ってるよ」
俺がそう告げてやると
「なっ?!」
驚く盗賊。
「さて、質問が幾つかあるんだが。面倒だな父上。こいつら盗賊だよ」
俺は父上に知っていることを話す。
こういう面倒なことは丸投げする。
「なっ!それは本当か?!」
「本当だよ」
そう言うと父上はこの部屋の奴の対応を始めてくれた。
俺は各部屋に移動して氷漬けにしたやつらをロープで縛り庭に放り出して、拘束されていた人達を解放する。
そうして男爵を名乗る男の人を連れて俺はまた応接間に戻ってきた。
「しかし、よく気付いたな?我が息子。流石カインだ」
そう言ってくる父上に答える。
初めから色々違和感はあったけど、黙っていると父上は俺を褒めちぎってくる。
「あのローテーブルの粗相の件もお前流の探りなんだな?!すまない!私が馬鹿だった!目の前の男爵を無意識に本物だと思ってしまった私は馬鹿だ。全てお前のおかげだ!カイン!」
そう言って俺に飛びついてこようとした父上を避ける。
「な、何故避けるのだ?!」
「そりゃ避けるよ」
と答えるとレイフォンの男爵も俺に例を言ってきた。
「君のお陰で助かったよカイン君!ホントにありがとう!」
「カイン様、ありがとうございます。」
ティナも一緒に感謝してきた。
また結果的にいい事をしてしまった。
俺は悪いことをしないといけないのに。
どうしてこうなるんだろう?
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