第2話 悪役の俺、奴隷を盗む
ムカついた俺は街に来ていた。
スラムに近い場所に向かう。
(やはり異世界と言えば奴隷だと思うのだが。俺はなぜ今まで奴隷を買っていなかったんだろうな)
そんなことを思いながら俺は奴隷商へ向かった。
金なんてない。
奴隷を買うだけの金なんてない。
だが向かう。
金なんて必要ねぇんだよ。
俺は大悪党様。
物は盗むに決まっている。
「いらっしゃい」
恰幅のいい奴隷商に話しかけられた。
まぁ、奴隷を盗んだことにより追いかけられてもぶっ殺して逃げてやればいい。
人生簡単だよ。ここは異世界だからな。
捜査の精度も悪い異世界の連中から逃げ切るなどイージーだ。
「何をしている?おっさん」
「おっさ……」
俺の言葉にイラッときたのか笑顔が失せるおっさんに続ける。
「客が来たのだ。リストくらい出したらどうだ?貴様は。トロトロするな。トロそうなのは見た目だけにしておけ」
「は、はぁ……」
イライラしてるのを隠そうとせず俺にリストをくれる奴隷商。
「もっと子供っぽいのはいないのか?」
俺はリストを突き返した。
「は、はぁ?子供っぽい?」
「全部言わせるな。リストを出せ。分からんのか?!俺が求めているのはロリなんだよ」
俺はロリコンだぞ。
俺は悪党なんだから犯罪ドストライクの事をするに決まってるだろ。
「そうだな。歳は12歳前後がいい」
「お、おう……」
そう口にした店主だったが
「すまねぇな。流石にそのレベルのは監視がキツくてな……仕入れてねぇんだよ」
「譲歩して16歳だ。そこまでのリストを出せ。18歳以上はババアなんだよ。覚えとけ」
「は、はぁ……やべぇやつがきたな……」
「聞こえてるぞ」
「聞こえるように言ったんだよ」
客は神様だろうが、何を言ってんだと思いながら俺はリストを受け取った。
「よし、この子にするぞ。このAカップまな板の身長130cmの幼女体型の俺のストライクゾーンど真ん中の子だ」
「は、はぁ……」
先程から困惑しっぱなしの奴隷商について行って俺は奴隷が収容されている地下室に向かった。
そうして鉄格子の檻が並ぶ中。
俺は一つの檻を見つけた。
「おい店主。やっぱり俺はこの子がいいぞ」
俺はトコトコ歩いてリストにいなかった女の子の檻の前に向かう。
俺のユニークスキルである【年齢看破】が告げている。
「この子絶対12歳だろ!」
檻の中にいた少女に俺は鉄格子を掴みながら訊ねる。
「はぁ……はぁ……君何歳?」
「じゅ……12歳です」
そう答えてくれる少女。
決めた。
俺はこの子にする。
するとドシドシと歩いてきた男。
「悪いんだがその子は買い手が決まっててね、兄ちゃん」
「俺に売れよぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
「売れねぇつってんだろ!いい加減にしろ!」
怒鳴られた。
イラッと来た俺は奴隷商をぶん殴った。
「がっ!」
気絶する奴隷商から鍵を抜き取ると、女の子の檻の鍵を見つけ出して檻を開ける。
「はぁ……はぁ……俺が来たからにはもう安心だぞ」
そう言って少女を抱えると奴隷商を代わりに檻にぶち込んで鍵を閉める。
「ははは、ざまぁみろ。盗んでやったぞ!欲しいものは盗むんだよ!ばぁぁぁぁぁぁぁぁぁか!!!あーはっはっは」
これでこそ天下の大悪党カイン様である。
見たか。自称悪党共。
盗みくらいやってみやがれ。
帰り道。俺はギルドに立ち寄って先程の店に大悪党がいたことを匿名で垂れ込んだ。
ふふふ、これで俺は奴隷盗みの大悪党として名が広まるはずだ。
カインがやらなかった悪事を俺はどんどんとやってやるぞ。
俺はソッコー家に帰ると少女に名前を聞いた。
「12歳サナです」
「はぁ……サナちゃんか……ふふふ。ちょっと待っててね。はぁ……」
俺はとりあえず自分の下着と自分の服を出してから、サナに風呂に入ってくるように伝えて身体を洗い終わったら俺の部屋に来るように伝えた。
部屋の場所は教えてあるので問題ない。
ベッドに座ってどんなイタズラをしてやろうとか考えながら待っているとサナが入ってきた。
「ふ、服の用意ありがとうございます。で、でもブカブカですね」
「今日は時間なかったから、明日に服は買いに行くよ」
俺はそう言ってサナにベッドに寝転ぶように伝えた。
やべぇ。ギンギンだ。
とか思ってたら
「カイン?カイーン?」
と俺を呼ぶ父上の声が聞こえた。
サナに席を外すことを伝えて俺は部屋を出た。
(ったく、なんなんだよこのクソ忙しい時に。俺は今から存分に愛の詩をサナちゃんに囁くつもりだったのにな)
俺はそのまますぐに父上の書斎に入っていった。
「父上、何だ?」
「おう、カインか」
「呼び出してどうしたのだ?」
「お前に少し用事があってな」
と切り出してから。
あ、そういえば、となにか思い出したような顔をした
「帰ってくる時にギルドの方が騒ぎになっていたな」
俺は内心ワクワクして訊ねる。
絶対俺のことじゃね?!と思って。
「いやぁ、奴隷法を守っていなかった奴隷商が捕まったようでな」
「え?奴隷法?奴隷商?」
「知らないのか?奴隷法。奴隷として販売していい人間には制限があるという法律だが」
だからあの店主は監視がどうのと言っていたのか。
「それでな。何やらその奴隷法に触れる奴隷を販売していたらしくてな」
と俺に号外を渡してきた父上。
その号外に載っていたのは
(俺が今日行ったとこの店主じゃねぇか!!!)
「該当する奴隷が1人地下室から消えていてな。それでその子は救出されたんじゃないか?って噂が流れててその救出した奴は英雄って巷で噂になってたよ」
は?
英雄?
悪者じゃなくて?悪党じゃなくて英雄なの?
「いやー確かに凄いよな、その英雄は。人知れず、奴隷の少女を救出しちゃって。カッコイイな。カイン、お前もその英雄のような存在になれよ」
ハッハッハと笑う父上。
俺がその英雄なんだけどぉぉぉぉぉぉぉぉ?!!!!!!!!!
なんかまた意図せず、こんな結果になってしまった。
俺はただ悪党になりたいだけなのに。
こんなんじゃカイン以下だぞ?!俺!
それより
「父上?俺に用とは何なのだ?」
「あー、その件だがな」
と話し出す父上。
「お前もそろそろ貴族の息子として婚約のひとつくらい結ばないとな、と思って」
そう言って俺は1枚の紙を渡された。
そこには家の名前と娘の名前が書かれていた。
お見合いがしたい、との申し出が添えられている。
「お前の都合のいい日で構わない。私とお見合いに行こう」
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