近藤達彦
俺は前世の事を思い出していた。
前世で俺は大切な人を、妹を護ろうと誓ったのに護ってやる事が出来なかったのだ。
俺は・・・
俺は妹を護ってやれなかった。
次に生まれかわったら『悪魔となって大切な人を護ろう』と心に誓ったんだ。
今の俺の願いは前世で妹だった
そして前世で護ってやれなかった笑美里を今度はしっかり護ってやる。
俺の願い通り悪魔に生まれ変われたのに・・・
なのに・・・
なのにこのザマはなんだ?
「俺は悪魔なのに一体何をやってるんだ? 」
昨日マリアからもらった髪で編んだ靴紐を見ながら俺はブツブツ呟いた。
これではこの靴紐が遺品みたいじゃないか?
死神に刈られる人間は悪魔の俺が選ばなければならないんだ。
「しっかりしろ! もっと悪魔らしくしろ! 」
俺の叫びはトンネルの中で虚しく響いた。
俺は憂鬱な気分をふきはらう様に学校の授業に集中した。
でも、さいたま高専の授業は退屈だ。
物理や化学なんて勉強したって製薬会社や石油関連、化学関連会社にでも就職しない限り全く使われる事など無い。
図式幾何学なんてものは大雑把な俺の性格ではイライラするだけの授業だ。
こんな気持ちで受ける授業はある意味拷問だと思う。
しかし、こんな拷問の様なつまらない授業を昼まで受けていると朝の出来事なんか遠い過去の事のように思えてくるから不思議なものだ。
午前の授業も終わって昼休み、俺は一人で弁当を食べていたらクラスメイトの近藤達彦から声をかけられた。
近藤は妙にニタニタした顔で俺の所にやって来る。
「おう青木? 昨日の夜に公園に居ただろう? 」
上から目線で近藤から声をかけられ俺は少しイラッとする。
「あぁ、公園に居たけど・・・ それがどうした? 」
「ハハハ実は俺さ、お前が少女に金を渡しているトコ写真に撮ってたんだ! 」
まるで優越感に浸る様な顔をしている近藤に俺は益々イラッとしたが話しだけ最後まで聞いてやる事にした。
「それが一体なんだというんだ? 」
近藤は更にニタニタした顔で続けた。
「お前、少女に金を渡してエンコーしているんだろう? この写真をばら撒かれたくなかったら俺にも10万援助してくれないかな? 」
近藤の態度に俺はイライラが止まらなかったが脅されるフリをする事にした。
「つまり・・・ 俺に『10万円でこの写真を買え』という事か? 」
「まぁ、簡単に言えばそういう事かな? 」
「10万円なんてどうするつもりなんだよ? 」
「そんな事どうだっていいだろう? バイクを買う頭金にするんだよ! 」
くだらない金の使い道につい俺は拳をかたく握ってしまった。
だか、今は騙されてやる事にしたのでグッと堪えた。
「10万円払えば写真を渡してくれるんだね? 」
「あぁ約束するよ。」
「分かった。用意するまで2〜3日待ってくれ。」
「分かったよ。なるべく早く頼むな! 」
近藤との別れ際、俺は心の底から笑いが込み上げて来た。
悪魔の輪転機(Time is money) アオヤ @aoyashou
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