死神の飛び回る朝に

次の日の朝、俺はいつもより早めに家を出た。

今朝は息が白い。

耳の先端に霜焼けが出来そうだ。

足下は霜が降りてうっすら白くなってる。


空は空気中の水分が霜となって落ちた為、突き抜けた様な蒼い空だ。

そんな蒼い空に何かが居た。

死神だ。

なぜか俺の上空の冷たい蒼い空を死神が悠々と泳ぎ、生命を狩りに行く。

今日も誰かの生命の日が消えようとしている様だ。


俺は昨日公園に居た少女が気になったので朝、公園に寄ってから学校に向かう事にした。


今日の死神はなぜか俺の上空をニヤニヤしながらついて来た。

俺は悪魔だ、死神に付き纏われるのには慣れている。

だか、ニヤニヤしながら付き纏うのは何故だ?


俺が公園まで来たところで女の子の泣き声が聞こえだした。

どうやらそれは公園の片隅に張られたテントからの様だ。

俺の上空に居座った死神はニヤニヤしながらそのテントに向かうとそこで大鎌を一振りした。

そして刈り取った魂を片手に意気揚々と天に登って行った。


何が起きたか理解出来ずにテントに向かうと昨日の女の子がテントの中で横たわっていて、その側で同年代の女の子が泣いていた。

俺は何が起きたか理解出来ずに、泣いてる女の子に声をかけた。

「どうしたんだ? 」


「マリアが・・・ マリアが冷たくなって息をしてないの。」


死神のニヤニヤした顔が浮かび俺は頭を殴られた様な気分になった。

「何故だ? 昨日はあんなに元気だっのに何故なんだ? 」


「ごめんない。私が・・・ 私がマリアから寝袋を奪って寝ていたの。マリアは寒いテントの中で震えながら眠っていた。朝、気がついたらマリアが冷たくなって・・・ 息をしていなかった。」


俺はマリアの昨日の約束の言葉を思い出す。

「・・・どうしょうもなくなったら使わせてもらうよ。」

こんな事に成るなんて、マリアのあの言葉はいったい何だったんだ?

俺はマリアのバッグに付けられているはずの御守りを探す。

でも、御守りは見つからなかった。

「御守りが付いていない? 」


俺の言葉に隣りの女の子の泣き声が大きくなった。

「ごめんなさい。それ私がパチンコで使っちゃいました。昨日はお金を倍に出来る自信があったんだ。マリアには普段世話になってるから恩が返せると思ったんだ。でも・・・ 」


俺はこのクズに怒りが込み上げて来た。

「でもなんだ? マリアはもう戻って来ないんだ。あのマリアの天使の様な笑顔は二度と見られないんだぞ・・・」

悔しさで心が壊れそうだった。

だか、俺は悪魔だ。

仕方ない、この娘を下僕としよう。


「いいか? コレはお前の業だ。この業をお前は一生背負って生きて行かなければならない。マリアは沢山の人々を救えた筈だ。お前はマリアの代わりに俺の下で沢山の人々を救うのだ。これからはお前の事をマリアと呼ぶ。分かったか? 」

俺は女の子の目をギュッと睨みつけた。

女の子は最初は怖くて震えていたが俺に全てを委ねる様に頷いた。


「分かりました。これからはアナタ様の下僕として出来得る限りの事はさせて頂きます。」


こんな時執事が居ると便利なんだが・・・

俺はとりあえず呼び掛けてみた。

「ミカエル、居るのか? 」


「ハイ、武様お呼びでしょうか? 」

俺のすぐ後ろから声がしてビクッとした。


「ミカエル、状況は分かるか? 」

俺は状況を一から説明する自信が無かった。


「ハイ、見ておりました。」

ミカエルの一言に救われた気がした。


「スマナイが後の事を任せて良いか? 」


「ハイ、私にお任せください。」

ミカエルの優秀さには頭が下がる思いだ。


「ありがとうミカエル。今日は俺の心の切り替えの為にも学校に行きたいんだ。スマナイ、後の事をよろしく頼む。」


「分かりました。武様、行ってらっしゃいませ。」


俺の一日は始まったばかりだ。

だか、今日という日は永い一日になりそうだ。






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