第3話 ありのままですがなにか

 

「冴島さん、少しは化粧したら?」

 

 バカにしたような男の声に、名指しされた女は、不快な声がした方に目玉だけをぎょろりと動かす。ここは妙齢の男性マスターが基本一人で営む小さな居酒屋で、5席しかないカウンターと小さなテーブルが2席しかないような店だ。そして、カウンターに不運にも二人きりな女も男もこの店の常連と言える客であった。

 

 男は四十か五十か、偉く洒落ついたブランドスーツを着ており、髪の毛もびっちりと決めている。体も年の割にはシュッとしており、整っているとは思う。ただ、小綺麗にしていると言えば聞こえはいいが、なんとも高圧的な営業マンというのが滲み出ていた。

 かたや女は、二十代半ば。ざっくりと黒ゴムで髪の毛を一つ縛りにし、安物メガネに大量生産品の安いブランドのトレーナーとジーンズを履いている。そして、言われた通り、女は全く化粧をしていない。少し前に出来たニキビ跡も、隠す気はなく晒したままだ。そして、体型もそこそこふくよかであり、ぽっちゃりというよりはぼっちゃりしている。

 

 全く正反対の二人は、常連と言えど、殆ど話したことはない。辛うじて、名前はお互い知っているが、会話という会話は記憶の奥底に薄っすらと、マスターを介して話したくらいだ。

 

 正直、このような失礼な言葉を言われる関係性ではない。

 

 女こと、冴島満姫さえじまみつきは持っていたあと一口分だけあるボンジリの串に、大口開けて齧りつく。ボンジリは旨い。プリッとした油が口の中に広がって、味が溶けていく。マスターの唐揚げも美味しいが、焼鳥はどれも値段以上に美味しい。暫くその美味しさに酔いしれて、飲み込んだあと、隣にあった梅酒のソーダ割りをぐびぐびと飲む。ああ、酒は旨い。

 

 店のマスターは、先程隣の男が追加注文した焼鳥セットとからあげを調理師に行ったきり戻ってきていない。

 

 だからこそ、隣の男はこんなことを言ってきたのだろう。

 

 男の言葉を一旦無視をして、一頻り幸せを享受したあと、こちらをぎょっとした顔で見ている男の方に満姫は振り向いた。

 

「なんで?」

 

 色々言いたいことがあるが、まずはそこからだ。満姫は自分の従姉妹とやり合う時を思い出しながら、渾身のジャブを打ち込む。果たして男の口から出てくるモノは、モノなのか、大変楽しみである。

 

 男は少し面食らった後、焼酎のお湯割りグラスを机に置くこともせず、少しばかり顰めた顔のまま言葉を続けた。

 

「だって、妙齢な女の子がお店に一人で飲んでるなんてねぇ、寂しいんじゃないの? 大抵の子はマスターの紹介とかで、恋人できるのにさあ。冴島さんは、ねぇ」

 

 じろりと見てくる男の視線に、満姫は興味なさそうに自分のグラスに口を付ける。

 たしかにマスターは少しばかりお節介が過ぎる。自分も昔それをやられたが、そこを基準にされるとは。

 なんとも言えない気持ちを流すように、しゅわりとしたソーダと爽快な梅酒の味が胃の中に流れていく。

 

「女子の一人飲みって流行ってるんですよ。それに、私にはマスターも紹介してこないんで」

 

 一応、まだ軽くジャブだけはしておくか。様子見程度の拳は男に届くだろうか。と横目で男を見るが、男はさも残念なものを見たかのような蔑みが満ち溢れてる様子でいた。

 

「そりゃ、紹介するにもねぇ」

 

 明らかに含みのある言葉に、流石に私もカチンとくる。なるほど、紹介ではなく、紹介と勘違いしたのだろう。短い言葉に込められた気色の悪い想像の悪意に、満姫は辟易とした気持ちで目の前に残るねぎま串に手を伸ばすのをやめた。

 

 遠回しにも程がある。

 

 女々しいという言葉はあまり好きではないが、こういうやつにこそ当て嵌まるのだろうと思う。

 

「何が言いたいんですか?」

 

 直球で尋ねれば、男はまるで釣り堀で狙った魚が掛かったかのよう。口の端を気色悪いほど釣り上げた。

 

「……言っちゃう? ハラスメントとか言わないでよ? 今の子そういうのうるさいでしょ。でも、おじさん、親切だからね。アドバイスをしてあげるよ」

 

「へぇ? 何? アドバイスですか、どんな?」


満姫の喋り方が少しばかり殺伐としており、男を見る目はかなり厳しい。しかし、男は随分と酔っているせいか、今にもジョッキグラスを投げつけられてもおかしくはない、剣呑な雰囲気に気づけなかった。

 

「まずは、その口調だよね。もっと、こう愛想いい言葉使わなきゃ。それにさあ、髪の毛も可愛く整えてさあ。服も何そのヨレヨレで、安っちぃの。可愛いブランド、詳しいからおじさん教えてあげるよ〜。あ、でもその前に、ねぇ? 似合うのあるかなぁ? あ、なら先にジムとかの優待いる? 俺、有料会員だから割引あんだよねぇ。には頑張らないとね?」

 

 ペラペラと駆け抜けるゴミみたいな男のご意見を聞きながら、満姫は冷めていくねぎまを眺める。やはり、ねぎまを選ぶべきだった。言いたいことは沢山あるし、時代が時代なら拳で語り合っても良かった。

 本当にハラスメントとかに過敏なこの時代でも、こういうやつは大概いる。

 特に、に出たらお構いなしのタイプは。

 飲み屋で知り合ったやつとこんな些細なことは、名刺すら入手されない限り、首輪の先には繋がらないとでも思ってるのだろう。

 

 マスターはまだ戻る気配がない。なんとなく、その意味を察した満姫は、ジト目でマスターのいる方を見た。焼き物を調理しているマスターの表情は、こちらからでは見えない。

 

「ああ、本当に親切だなあ、俺。でも今会社でやるならセクハラとか言われんだよ? 親切心からなのにさぁ。あ、冴島さんはアドバイス求めたんだから、そんなこと言わないよね?」

 

「ハッ、親切心って、セクハラな上にモラハラかよ。しかも、念押しとかセッコいなぁ」

 

 猫撫で声に、気持ち悪い厭味ったらしい言葉。耳障りな言葉の末に、満姫は遂に鼻で笑ってしまった。本当に今どきこんなやつがいるのか、と男の務める会社を思い出し、思わず心のなかで十字を切った。

 

「え? も、モラハラ?」

 

「メイクしないの? って、もうすでにセクハラなんだっつーの。

 それに、なに、今のアドバイス。

 なーーーんも心響かなすぎ。時間の無駄。なんで、、そんなアンタの言うために、んなダリィことしなきゃなんねぇの? メイクすんのも、服買うのも、髪の毛も整えるのも、全部金掛かんだけど。まあ、言うのはタダだろうけどさ?」

 

 満姫の回る口は止まらない。男はその反論を信じられないものを見たかのように目を見開き、まだ脳が追いつかないのか、言葉の鋭い玉をただぶつけられるだけだ。

 

「それになに? アドバイスだから文句言うな? 爪の先ほど役に立たない他人扱き下ろして、自分のキメェ持論だけ押し付けてさあ、それがパワハラとか、モラハラになるのわかんないの? ハラスメント研修ないの? あんたの会社」

 

 会社まで引き合いに出された男は、ハッと見開きやっとのことで反論する言葉を探し始める。勿論、男もハラスメント研修はしたことがあり、自社の社員、特に女性社員には最近は気を使っていた。それなのに、ここでそう言われる筋合いはないと男は思った。

 

 反論しなくては。

 

 しかし、満姫の猛攻は止まらない。

 

「私はさぁ、この店にはお世話になってるし、優しいから、別に訴えねぇけどさ。

 何? 見目悪いから痩せろ、メイクしろって言いたいんだろ。さっさと言えよだりぃな。遠回りすぎんだよ」

「なっ、なんて口の聞き方だ」

 

 次から次へと出てくる言葉に、男は振り絞ったかのような反撃しかできない。投げられ続ける豪速球を返すには、男の頭はまだ戻ってきていない。

 

「そもそも、私はあんたの意見に従って、媚び諂う必要もねぇの。同じ会社でもあるまいし。うちの会社はノーメイクだって仕事に支障ないんだから、いらないでしょ?」

 

 ここまで言えば、この男も少しはわかってくれるだろう。多少煽りつつも正論をぶつけたつもりの満姫は、男の前で厭味ったらしく首を傾げる。可愛い子がやったなら、小悪魔的な仕草だろうななんて、満姫は柄にもないことをかんがえながら全力で煽りにかかる。

 

「でも、社会人のマナーとしてするのがだろ?」

 

 そして、男はまんまと満姫の煽りにかかった。

 

「まあ、会社からしろって言われたらするけど、赤の他人にしろって言われるくらいなら、しねぇに決まってるだろ。つーか、私の会社すっぴんだらけだしな。女も男も」

 

 満姫は実際問題、社内SEという部署で働いており、業務上比較的にデスマーチの多い。それに、個人の美醜に囚われるほど人の顔を見て仕事をすることがない。

 なので、満姫のようにすっぴん率も高く、なによりも異性の同僚たちもそれを気にすることはないのだ。

 人前に出る仕事は難しいかもしれないが、一人一人に事情というものがある。

 

「ふんっ、努力しない人間の言い訳にしか聞こえないな。今どきの子は、そういう事にはもっとできると思ってたのに」

 

 ただ、こういうタイプはやはり物分りが悪いのだろうか。まだまだ、満姫と戦い合う気なのだろう。でも、その言い分はすでに精神論と成り果てていた。

 

「アハハハハッ、努力って、ウケるなあ」

「何を笑っている。こういうのが大切な努力だろ。メイクも、服装も、振る舞いも、なんなら整形だって努力だろう。それを怠ってるくせに、なにを……」

 

 乾いた笑いをする満姫に噛みつく男は、すでに冷静さを欠いてることに気づいていない。でも、満姫には何一つ響くことはない。

 

「当たり前じゃん。人には人それぞれの努力のベクトルと容量があんのに。自分の見た目がこれでいいやと思ってるのに、貴重な容量を使うわけ無いじゃん」

 

 満姫は呆れたように肩を竦めながら、そう話す。別に自分が可愛いとは思っていない。でも、自分がこれでいいと思っているのだから。

 

「あとね、その子達はたしかに、ものすごく努力してるかもしれない。でも、可愛い自分になりたいから、努力できるの。どんな努力にも、目標があるからできるんだよ。

 私はそこまでして、可愛い自分になりたいわけじゃない。その子達と努力したいベクトルが違うの」

 

 満姫はそう言いながら、従姉妹の姿を思い出す。あの人は、私と違い、みんなが認めるお洒落を突き詰める人だ。でも、それは彼女がお洒落が好きであり、自分が一番綺麗に見える姿を研究するのが好きであり、目標だから努力ができる。また、その従姉妹と共通の友人は、自分の中の美しさを追求した結果、手段として整形しているだけだ。


「私は貴重な努力を自分の見た目に使うくらいなら、大好きな可愛いキーキャップやガジェット探しに行くとか努力に使いたい。

 お互いが好きな目標に向かって、自分が見つけた方法を選択して努力する。今はそれが普通なんだよ。それをなんで、プロでもなんでもない他人があれこれ言うの?

 マジで、滑稽なんだけど」

 

 少なくとも私の知ってる二人共は、自分の中で明確な目標があるから可愛くなる努力をしている人たちだ。だからといって、その努力の仕方を押し付けることはない。言われたら噛みつくことはあるし、ちゃんと相談すればおすすめしてくれることもあるが。


「それに、肌トラブルで化粧できない人もいるし、服だって着れる服着れない服がある人もいるし。整形すればいい?やったことないやつが抜かすなよ。あれは、精神と身体が強くないと簡単にはできないよ。いろんな要因で、死ぬこともあるんだ。誰一人として簡単に薦めてはいけないもんなんだよ」


 以前友達が鼻の修正と輪郭の骨切り時、ダウンタイムの辛さにかなり精神がやられていたことを思い出す。痛みと腫れと滲み出る血と涙。話を聞いたりすることしか出来なかったが、それを見てるからこそ、簡単にそういうことを言う男が許せなかった。


 アドバイスというものは、言われた側に役に立つことでなければならない。満姫の痛々しいニキビ跡も、流石に自分も気になるから美容皮膚科か皮膚科に行くべきかと、二人に相談したことがあった。

 すると、二人共に評判のいいところを教えてくれた。大変ありがたかったし、相談の上と一つの医院を予約した。そういうのが本来のアドバイスというものだろう。

 

「いい? 少なくとも、アンタの言う通りにするために子なんて、ここにはいないんだよ」

 

 満姫は一番言いたかった事をぶつける。余計で耳障りなアドバイス程、尊大なのは何故なのだろうかと本当に思う。お前が言う可愛いのメソッドなんて誰も求めてない。

 それがわからないのに、押し付けて、勘違いしてくるのだ。

 

 気色悪いったらありゃしない。しかし、男も降参する気はなく、少しばかり脂汗を滲ませながらも満姫に食らいついた。

 

「ふん、そうやって強がって、どうせ三十路超えたら結婚しなきゃと焦るんだろ? 俺はそういうやついっぱい見てきたんだぞ」

 

 焦らせてるのはどうせ、お前だろ。

 満姫は心の中から出てきた言葉を口の中で咀嚼し、これはあまりにも偏見だと、喉ゴクリと動かして飲み込んだ。

 

「まあそういう人もいるだろうけど、少なくとも私は違うんだけど? 勝手にの括りに入れるんじゃねぇよ。そもそも独身主義だ」

 

 独身主義。こればかりは、従姉妹と意見が一致する貴重な一つであり。心の底からそう思っていることだ。今までまともな恋愛や恋人が出来たことのない満姫にとって、結婚なんて地獄にしか感じられない。

 

「なんだ、結婚しないと? はぁ~一人で死んでいくのは惨めだぞ。俺は可愛い孫にまで恵まれてるのにな」

 

 男はやっと弱点を見つけたと言わんばかりに、高飛車にこちらを煽りに煽る。可愛い孫まで使ってマウントを取ろうとする姿に、満姫は思わずぽろりと言葉を零す。

 

「結婚してようが、慕われてようが、死ぬとき一人なやつなんて、この世に腐る程と居るっつーの」

 

 それはとんでもなく鋭いパンチだった。

 

「……まあ、俺は違うな。家庭にも、愛されてるし、な」

 

 男の顔が分かるくらいに引き攣っている。相当パンチが深くキマったのだろう。まるで自分に言い聞かせるように、呟いたその姿は先程よりも一回りも二回りも小さく見えた。

 

「家庭にも、愛されてる、ねぇ。そんなやつが、店のカウンターに座ってる女にキメェ絡みしにくるかよ。早くお家帰って、奥さんの機嫌でも取りに行けよ、も待ってるでしょうに?」

 

「なッ……」

 

 しかし、満姫は容赦ない。まさに死体撃ちするかのように、言葉を続けた。それを受けた男は酸素を欲しがる魚のようにパクパクと口を動かしているだけだ。

 

「勝負あり、ですかね」

 

 いつの間にかカウンターに戻ってきていたマスター。

 その優しいマスターの声掛けにより、遂に二人共静かに口を閉じる。これはここでの戦いの幕引きの合図。本当に少しばかり愉快犯のマスターは、敢えて放置していたのだろう、やっと焼き場からこちらに戻ってきた姿はにこやかである。

 

風月ふうづきさん、今度問題起こしたら出禁って言いましたよね? 出禁になる前に一度頭冷やしてきたらどうです?」

 

 どうやら、この隣の男はイエロカードを出されてたようだ。そして、まんまと私の隣でレッドカードとなり、その場でマスターに退場を促される。満姫はマスターの背中を見ながら、「このたぬき親父め」と心の中で吐き出した。

 多分だが、満姫以外の女性だったならば、マスターはこんなにも放置しなかっただろう。そういう区別というか、差別というか、対応の差は良くないと思うが。

 思えば、前に駄目な酔い方をする男がいると他の常連とマスターから聞いたことがあった。

 仲良くなったと勝手に思った常連の女の子の容姿に、ずけずけとアドバイスをしてくる男がいると。前に言われた子は、どうやら気にしている事だったらしく、泣いてしまったと聞いた。

 その頃から、出会ったずけずけと言われるだろうなあと思っていたが、まんまと今回出会してしまったようだった。

 

「すみませんねぇ、おでんと唐揚げサービスさせてくださいね。日本酒もオイシイのあるんですよ〜」

「……マスターじゃなかったら、二度と店来ないとこですよ」

 

 ジト目でマスターを見た満姫であったが、マスターはほほほっと楽しそうに笑うと、サービスの品を出してくる。ファイトマネーというところだろう。みたいな奴だったら足りないところだが、あの程度をやっちまうくらいならこれでチャラにしてもいいかもしれない。

 

 そんなこんな考えつつ、呟きアプリで今のことを愚痴ろうかとスマートフォンを取り出し、画面を点ける。

 するとスマートフォンのメッセージアプリに一件通知があった。

 

 アプリを開くと、数少ないタイムラインの一番上に来ている名前に満姫は顔を顰めた。そして、そのメッセージを開いてまたもや後悔する。

 

【また叔母さんに連絡してないの? うちに鬼電あったんだけど。可愛いヒメちゃんと連絡とれない〜って】

 

 噂をすればなんとやら。自分とよく舌戦を繰り広げてくれる、最強の毒を持つ女である一つ上の従姉妹からだった。

 しかも、嫌味なのかはわからないが、満姫が最も呼ばれたくない母親からの呼び名を、わざわざメールに使ってきている。

 

【琴子姉ちゃん、ごめん、デスマーチしてるわ】

 

 満姫が呼び名は見なかったことにして、そう返すと、思ったよりもすぐにメッセージが既読になる。時間は9時になりかけており、従姉妹は家でゆっくりしている頃だろう。スマートフォン廃人の従姉妹なら、この速さで既読がついても納得だった。そして、ぴこんと増えたメッセージの速さも、彼女らしかった。

 

【は? また? ブラック過ぎじゃない? 身体は一つしかないんだから程々にしなさいよ。あんたなら別に仕事先沢山あるだろうし】

【たしかにそうだけどさ】

【体壊す前に身の振り方だけは、考えなよ】

【そうだね、わかった】

 

 あまりにも正論すぎる言葉に、満姫はうゔっとうめき声を上げる。

 

 私だって、我が身は可愛いものだ。だからこそ、こうやって美味しいご飯を食べて、美味しいお酒を飲んで、甘やかしている。

 

 でも、仕事がそんな可愛い我が身に毒なのもわかっている。まあ、この名前を着けてくれた母親の過干渉とかも、そこそこ微毒だが。この仕事の激務さについては、何も反論できない。

 

 仕方なくマスターがいる方に向く。厨房からマスターが沢山のおでんと焼鳥、そして、唐揚げも持ってこちらに向かってきた。

 

 今はもう、自分を美味しいもので、可愛がることだけ考えよう。

 さあ、これを食べたら、職場に戻って仮眠だ。満姫はそう思いながら、氷が溶けて薄くなった梅酒ソーダの一口を飲み干した。

 

 

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