第23話 専門店
最近、朝晩通勤のため車で通る国道沿いに新しい本屋が開店した。
店先の看板には大きく「本」と書かれた文字と、その下に「営業時間:12時~26時」と表示されている。
私のように帰りの遅い者には、午前2時まで開店している本屋は便利だと思う。
21時を少し回った頃仕事を終え、いつものように車を運転し帰路に就いた。
ラジオを聴きながら10分ほど走った頃、ライトアップされた本屋の看板が目に入ってきた。
ちょっと寄ってみようと思い、車のスピードを落とし駐車場に入る。
結構広い駐車場なのだが、ほとんど満車状態である。
ドアを開け中に入った。
入り口付近は週刊誌などが並んだコーナーである。
しかし、駐車場が満車なのに雑誌を見ている人など誰も居ない。
なんか変な雰囲気である。どうやら、お客は店の奥の方に居るようである。
私も本棚の間を抜け奥に進んだ。
おぉぉぉ.....っ!
奥に一歩足を踏み入れた瞬間、感動のあまり声が出そうになってしまった。
見渡す限り並んだ本のタイトルが一瞬にして目に飛び込んできた。
(ロリータ、レズ、ホモ、SM、巨乳、ノーマル、アブノーマル....ets)
へぇぇぇ....っ! 売場の80%を占める棚で囲まれた奥のコーナーはアダルトショップになっていたのである。
雑誌や本はジャンル別に整理され、お客は好みの分野を短時間で探すことが出来るように配慮されている。そのうえ、ビニ本と言われるビニールシートに包まれた雑誌などほとんど見あたらないのである。
なんと、ユーザーフレンドリーな店なんだろう....
営業時間、店内のレイアウト、そして展示されている雑誌・本の量など、これは一流の専門店と言える。
感心しながら、じっくりと店内を見て歩くことにした。
棚の端から手に取り、掲載されている写真と文章を読むうち口元が緩んでくる。
ハッと我に返り周りを見渡すと、顔面の筋肉が緩み半開きの口からヨダレが出そうな連中ばかりである。
こんな締まりのない顔を自分もしていたのかと思いながら、更に店内を見て歩く。
おぉぉぉ....っ! 今度はグッズコーナーである。
こんな形の...大きいの小さいの...女性用・男性用...なんとも表現のしようがない形状のグッズが並んでいる。
何やら塗り薬のようなものもある。値段は数千円から数万円までのようである。
店内を散策しているうちに時間が瞬く間に過ぎてしまった。23時近い時間なのに大勢のお客で熱気に溢れている。
昨今の書籍販売はネットが中心になっており、実店舗の本屋は苦戦を強いられているの実情である。しかし、この書店はこれだけの集客力を保持しながら深夜営業している事に驚嘆する。専門的な分野に関する書籍と関連グッズに特化した戦略が功を奏していると思われる。
これは、我が社の経営戦略の参考になる事例として深く研究する必要があるだろう。
常務の独り言 @bucyo2021
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