第3話 心の底から
――リリアの身動きを封じてから、数十分ほど経過していた。
「ふっ、ふっ、ふぅ――」
すでに彼女の呼吸はかなり乱れている。
ルエラの使う淫魔法は視界にさえ捉えていれば、効果の増幅は容易だ。
徐々に、少しずつ――彼女を追い詰めている。
「何の……つもりですか?」
不意に、リリアが睨みながら口を開いた。
「ん? なぁに?」
「殺すなら、早く殺せばいいでしょう……!」
「そうねぇ、でも――それをするもしないも、私に選択権があるの。ちなみに、私はあなたを殺すつもりはないわよ?」
「な……っ」
リリアは驚きの表情を見せていた。
ルエラは彼女に近づくと、軽く下腹部の辺りに手を触れる。
「ん……っ」
ぴくりと、わずかに身体を震わせた。
彼女の身体は、強制的な発情状態――身体に触れられるだけでも、快感に繋がってしまう。
だが、その快感というのも――リリアには理解できていない。
全てが未知というのは、逆に言えばどこまでも開発し甲斐のあるもので。
「どう? 気持ちいい?」
「……? 変な感覚しかない、と言ったでしょう……っ」
「ふふっ、そう……」
気持ちいいという感覚すら分かっていない――そんな勇者が、自分の命を狙ってやってきた。
ルエラにとっては、どこまでも可愛らしく、愛おしい存在だ。
――だが、きっと彼女の存在が知られては、他の幹部からはすぐに始末するように言われるだろう。
無論、そんなこと命令される筋合いはないし、従うつもりもない。
この子は――今日からルエラのモノになるのだ。
魔法で作り出した鎖を操り、リリアの姿勢を変えてベッドまで運ぶ。
彼女はその状態でも、何とか脱出しようと必死に動いていた。
――それが、結果的に自身の負担になっているということにも気付かず、だ。
「……はっ、はっ――」
頬を朱色に染め、呼吸はさらに乱れている。
目には涙も浮かび――けれど、自身の身体に何が起こっているのか分からない。
そんなどこまでも無知な勇者の姿を、ルエラはこの上なく堪能する。
少しだけ、身体を震わせているリリアに向かって、ルエラは優しく声を掛ける。
「大丈夫よ、痛いことはしないから。安心して?」
「だ、誰がそんなことに怯え――んっ!?」
リリアが反論を言い終える前に、無理やり唇を奪う。
舌を無理やり押し込んで、絡めるように――突然のことで、リリアは混乱しているようだったが、
「っ」
すぐに、ルエラは舌を引いた。
――つぅ、と口元から血が流れ出す。
リリアが、ルエラの舌を噛んだのだ。
「……もう少し遅ければ、あなたの舌を噛み切れたのに」
興奮状態にあって、身動きも取れないのに――戦意は失われていない。
どこまで彼女は誘ってくるのだろう――ルエラは昂っていた。
こういう子を、心の底から屈服させるのが楽しいのだから。
「ふふっ、いい子ね……」
舌を噛まれたというのに、ルエラは満足そうに笑みを浮かべて――彼女のベッドの上に押し倒す。
そうして、身体に優しく触れた。
「んっ……」
「まずは……そうね。お話から始めましょう?」
「答えることなんて、何もありません……!」
「いいのよ。時間はたっぷりあるもの。お互いのこと、ゆっくりと知っていきましょう?」
それから――二人の長い夜が始まった。
***あとがき***
無知勇者とサキュバスのお話でした。
以前に書いていた百合をもうちょっとえっちな雰囲気にしたいと思ってリメイクした作品を書き始めてみたので、よろしければどうぞ。
『騙されて奴隷になったSランク冒険者が没落令嬢に買われるお話』
魔王軍幹部のサキュバスですが、乗り込んできた勇者が可愛い女の子だったのでお持ち帰りしました 笹塔五郎 @sasacibe
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