にゃんとも大変な一日だった

「うわぁぁあ! ここ、琴音と赤谷が……!」

「頭を撫で撫でって……これはもう言い逃れできないじゃんね」

「うわぁ! 真紀、彩夏、ちがうってば、こ、ここ、これは──」


 林道はすっかり頬を染め、わたわたと両手をふって口語とボディランゲージのふたつで誤解をする友たちへメッセージを伝える。

 だが、ピタッと固まると、遠くを見つめて目を見開いた。なんだこの表情。まるでこの世の真理に気づき、脳がショートした猫みたいな顔だ。


「まぁ、見られてしまったら仕方ないかな……っ!」 


 再び動きだした林道は腰に手をあて、堂々たる姿でそんなことを言った。

 あれ、否定しないのか。それとも開き直って遊びだしたか。


「えええ! じゃあ、やっぱり、ふたりはそういう……」

「琴音って意外とやることやってるんだ……」

「解釈はそっちに任せるよ、もう何を言っても誤解をとけないだろうし!」

「いや、諦めよすぎだろ。もっと努力しろ。解釈投げたらろくなことになんねえって」


 猫頭を撫でていた手を、縦に構えて、手刀を生え際にうつ。


「いだっ」


 猫耳がぺこんっとへこんで、林道は頭を押さえた。


「これはだな、別におかしなことをしてたわけじゃない。芥、冷静に考えてもみろ、もし仮に俺と林道がなにかやましい関係だったとして、誰かに見られるリスクを犯すと思うか」

「思う、かも」

「思うんかい。ねえって。俺の前回の定期考査の学年順位は12位だぞ。こんな賢い人間に限ってそれはない」

「赤谷ってそんな成績よかったんだ、すっご」


 芥に素直に感心されて大変に気分がいい。そうだよ。12位はすごいんだ。ひれ伏せ!


「俺はただ純粋に林道の猫耳を撫でまわしてただけだ」

「途端にキモくなったぁ、彩夏、これはどうするべきかな?」

「付き合ってるわけじゃないんなら、事案じゃない? 有罪っしょ、犯罪者だ!」


 結論が二極化している。もっと中間があるだろうが。


「林道、俺の声はこの女どもには届かない。お前から言ってやってくれ」

「赤谷にいっぱい撫でられた。その事実をどう受け止めるかはそっち次第だよ」

「なんでお前、そんな解釈投げんの? ふざけてねえで説明の努力をしろ!」

「いだだだだっ!? 耳! 猫耳ひっぱらないでー!」


 耳をつまんで引っ張ったら、ようやく林道が正気になった。

 彼女の口からの説明により、ふたりの勘違いは無事に説くことができた。


「つまり赤谷はコーンスープを購入した対価としてサービスを要求したと」

「体で払えって琴音にせまったってことか」

「人聞き悪い解釈になったな。まったく逆だから。ニュアンスとしては頭撫でさせてやるから、コーンスープ買えだから。事案っぽくするのやめてね」

「ん、でもそれだと、まるで琴音から頭を撫でられにいったみたいな……」


 芥と江戸川の視線が林道へと流れる。

 

「そ、それじゃね、赤谷、ま、また明日!」

 

 そう言って林道は走りだし、あっという間に訓練棟をでていった。


「あっ、逃げた」

「待てー!」


 友人たちもあとに続いてさっていく。

 残された俺はコーンスープを静かにすすった。

 

「なんだったんだ」


 男子寮にもどってきた。

 夕食には間に合ったので食堂で飯をくう。

 部屋に帰り、風呂場でスキルツリーを確認した。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【本日のポイントミッション】

  毎日コツコツ頑張ろう!

 『キャットガールとナデナデ男』


 キャットガールをナデナデする 3/3


【報酬】

 4スキルポイント獲得!


【継続日数】170日目

【コツコツランク】プラチナ

【ポイント倍率】4.0倍

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 ご機嫌の志波姫、事故のヴィルト、幸運の林道。

 皆の協力のおかげで無事に今日もポイントミッションを達成した。

 ちなみに現在のステータスはこんな具合である。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【Status】

 赤谷誠

 レベル:0

 体力 5,500 / 100,000

 魔力 80,700 / 100,000

 防御 100,000

 筋力 100,000

 技量 100,000

 知力 100,000

 抵抗 100,000

 敏捷 100,000

 神秘 100,000

 精神 100,000


【Skill】

 『スキルトーカー』

 『スキルエナジー』

 『スキルオーバードライブ』

 『完成体力』

 『完成魔力』

 『完成防御』

 『完成筋力』  

 『完成技量』  

 『完成知力』

 『完成抵抗』

 『完成敏捷』

 『完成神秘』

 『完成精神』

 『筋力により形状に囚われない思想』

 『くっつく』

 『筋力の投射実験』

 『第六感』×3

 『瞬発力』×3

 『筋力増強』×3

 『筋力による圧縮』

 『ペペロンチーノ』×4

 『毒耐性』

 『シェフ』

 『スーパーステップ』

 『浮遊』

 『めっちゃ触手』    

 『筋力で金属加工』

 『手料理』

 『放水』

 『学習能力アップ』

 『熱力学の化け物』

 『転倒』

 『足払い』

 『拳撃』

 『近接攻撃』

 『剣撃』

 『ハンバーグ』

 『聖属性付与』

 『闇属性付与』

 『黒い靄』

 『膂力強化』 

 『再現性』

 『遠隔攻撃強化』   

 『触手生命体』

 『菜園』          

 『ハンバーガー』   

 『覇王の構え』    

 『示現解放』

 『自己復元』

 『マッサージ』

 『脚撃』

 『粘液』

 『静電気』

 『赤スモーク』 

 『セグウェイ』

 『ベタベタ』

 『もうひとつの思考』

 『フリッカージャブ』

 『高密度化』

 『怪力』

 『超人』

 『膂力強化』


【Equipment】

 『スキルツリー』

━━━━━『スキルツリー』━━━━━━

【Skill Tree】

 ツリーレベル:6  

 スキルポイント:33

 ポイントミッション:完了

【Skill Menu】

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 ようやくこの時間がやってきた。

 一番たのしい時間だ。

 今日はそこら中でにゃんにゃん鳴いていて本当に大変だったからな。

 にゃんとも大変な一日の終わりにご褒美があったっていいはずだ。

 

 夏休みから2学期のかけてスキル厳選作業をおこなってきた。

 英雄高校生に正当な交渉をし、道理を通し、スキルを回収した。

 それを『スキルエナジー』で作りだした『スキルの種』をつかって、融合させ、新しい能力にすることで、枠の節約をはかったりした。


 それぞれのスキルを馴染ませる作業も並行しておこなってきた。

 問題のある組み合わせ、リスクのある組み合わせもすでに把握している。

 俺の理想にはまだ遠いが、ずいぶん進化したといえる。俺は常に進化し続ける男、エヴォリューション赤谷なのだ。

 

「30ポイントたまったか。となると、また『スキルエナジー』でスキルの種をつくれるわけだが……どいつとどいつを合体させるか」


 俺はスキルツリーを見つめ、次なるエヴォリューションを思案しはじめた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る