完成筋力と完成技量

 俺は自室のシャワールームでスキルポイントを振りわけることにした。

 現在のステータスはこんな具合である。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【Status】

 赤谷誠

 レベル:0

 体力 20,000 / 20,000

 魔力 40,000 / 40,000

 防御 20,000

 筋力 40,000

 技量 40,000

 知力 10,000

 抵抗 10,000

 敏捷 20,000

 神秘 10,000

 精神 10,000


【Skill】

 『スキルトーカー』

 『発展体力』×2

 『発展魔力』×4

 『発展防御』×2

 『発展筋力』×4

 『発展技量』×4

 『発展知力』

 『発展抵抗』

 『発展敏捷』×2

 『発展神秘』

 『発展精神』

 『かたくなる』

 『やわらかくなる』

 『くっつく』

 『筋力で飛ばす』

 『筋力で引きよせる』

 『筋力でとどめる』

 『曲げる』

 『第六感』×3

 『瞬発力』×3

 『筋力増強』×3

 『圧縮』

 『ペペロンチーノ』

 『毒耐性』

 『シェフ』

 『ステップ』×2

 『浮遊』

 『触手』

 『たくさんの触手』

 『筋力で金属加工』

 『手料理』

 『放水』

 『学習能力アップ』

 『温める』×4

 『転倒』

 『足払い』

 『拳撃』

 『近接攻撃』

 『剣撃』

 『ハンバーグ』

 『聖属性付与』

 『闇属性付与』

 『』


【Equipment】

 『スキルツリー』

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 最近はもっぱら基礎力強化に投資を続けている。アクティブスキルがあんまり増えなくなったので、スキルポイントの使い道がステータス上昇系のスキル以外なくなったのが理由だ。

 

 残念なように言ってしまったが、実際のところは基礎ステータスを充実させることの恩恵と意味を、いまは強く感じている。というかいつだって基礎ステータスは確実な成長を俺に与えてくれた。


 今夜、俺はその先へいこうと思う。

 筋力40,000にも慣れてきた。まだそのすべてを使いこなせているとは思えないが、次の段階にあがる準備はできている頃だと思う。


 すなわち筋力40,000、つまり『発展筋力』×4のその先、『発展筋力』×5による進化、俺の予想が正しければおそらく━━━━

 

 俺は5つ目の『発展筋力』と5つ目の『発展技量』、そして2つ目の『ペペロンチーノ』を取得した。


 ステータス欄の隣に『上位スキルに進化可能』と表示される。

 想定内だ。だが覚悟が必要だ。

 俺は恐る恐る指先で『上位スキルに進化可能』をタッチした。


『同スキルを一定数獲得しました。スキル進化します』

 

 声が聞こえたのち、ステータスは以下のように変化した。

 

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【Status】

 赤谷誠

 レベル:0

 体力 20,000 / 20,000

 魔力 40,000 / 40,000

 防御 20,000

 筋力 100,000

 技量 100,000

 知力 10,000

 抵抗 10,000

 敏捷 20,000

 神秘 10,000

 精神 10,000


【Skill】

 『スキルトーカー』

 『発展体力』×2

 『発展魔力』×4

 『発展防御』×2

 『完成筋力』  NEW!

 『完成技量』  NEW!

 『発展知力』

 『発展抵抗』

 『発展敏捷』×2

 『発展神秘』

 『発展精神』

 『かたくなる』

 『やわらかくなる』

 『くっつく』

 『筋力で飛ばす』

 『筋力で引きよせる』

 『筋力でとどめる』

 『曲げる』

 『第六感』×3

 『瞬発力』×3

 『筋力増強』×3

 『圧縮』

 『ペペロンチーノ』×2

 『毒耐性』

 『シェフ』

 『ステップ』×2

 『浮遊』

 『触手』

 『たくさんの触手』

 『筋力で金属加工』

 『手料理』

 『放水』

 『学習能力アップ』

 『温める』×4

 『転倒』

 『足払い』

 『拳撃』

 『近接攻撃』

 『剣撃』

 『ハンバーグ』

 『聖属性付与』

 『闇属性付与』

 『』


【Equipment】

 『スキルツリー』

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 『発展筋力』と『発展技量』はそれぞれ『完成筋力』と『完成技量』に進化したようだ。

 その数値は驚異の100,000。技量と筋力が桁違いの領域にたどりついた。

 身体にふつふつ沸き立つエネルギーが広がっていく。それは内側から俺の肉体を変化させはじめた。

 生物学的な変態が、俺の筋肉の構造を変化させ、より複雑に緊密にしていく。


 暴れだしそうになる力を俺はぐっとこらえてその場でたちつくす。拳を握りしめ、歯をくいしばる。

 

 やがて変化はおさまった。

 俺は慎重な手つきで近くのコップを手に取った。

 力加減を間違えて握りつぶしてしまうことはない。

 次は机をもちあげてみた。手で端っこをもって数センチ浮かせる。

 こちらも大丈夫だった。机の端だけちぎってしまうことはなかった。


 思ったよりは激しくなかった。

 経験上、100,000筋力もの力を手に入れてしまったらてっきり筋力暴走がおきてもおかしくはない。

 

「技量をいっしょにとったおかげかな」


 仔細は不明だが、事件が起こらないのならそれに越したことはない。

 

 ツリーウィンドウを眺めると、取得可能スキルの欄から『筋力』や『技量』に関するスキルが消えていることに気が付いた。

 どうやら取得するだけで恒久的にステータスを上昇させるスキルは『完成』を迎えたらしい。

 

 100,000というひとつの到達点に夏休みをまえにして俺はたどり着いたのだ。

 

 まわりのものを壊さないようにゆったりと窓辺に足を運び、手を夜の闇へと差し向けた。

 空気がうねり、逆巻く風が室内のものをひっくりかえし、衝撃波が窓の外へ放たれた。ドンッ! と炸裂音が響いたのち、パリンっと儚い音が聞こえた。

 砕け散る白いガラスが、男子寮の裏手に雨のようにふりそそぐ。カーテンが夜風にはためている。

 廊下のほうからは男子たちの「なんだなんだ!?」「爆発音したぞ!」と騒ぎを聞きつけた声が聞こえた。


 ただ空気を押し出しただけだが……これが筋力100,000のパワーか。

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