基礎力強化週間 2

 最新テクノロジーの詰まった体育館から出てきた。


「というわけであれがDレベル検定だよ」


 ヴィルトはぼそっと言いながら、学園アプリを開いたスマホ見せてくる。

 画面には『Dレベル検定:Dレベル2 合格』と表示されている。


「検定もってればDレベル2扱いしてもらえるってわけか」

「Dレベル2あれば、2階層の深さのダンジョンに潜れるんだよ」


 なるほどな。Dレベルがなんなのかよくわかってなかったが、免許証、あるいは漢字検定、英語検定と同じようなものか。

 パッと見でそいつがどれくらい強いのか、どれくらいのダンジョンに通用する探索者なのか、このDレベル検定があればわかるってわけだ。


「Dレベル検定持っておくと企業やギルドに就職するとき有利なんだ」

「でも、いまの攻略、私あんまり活躍してなかったような……」


 林道は自信なさそうに言う。


「うん。だからたぶん不合格だと思う。検定はパーティの人数で内容が変わったり、採点が変わったりするらしいから」

「うええ!? そんな厳しいの!? 同じパーティなのに友達だけ合格して、自分だけ落とされるとかショックすぎるって!」


 林道は慌ててスマホをとりだし、そして「ぐはっ」っと胸元をおさえた。本当に不合格だったらしい。


「ん、待てよ、その論法で言ったら志波姫も不合格なんじゃ……」


 志波姫のほうを見やると澄ました顔で、ミケを武器棚に返却していた。


「赤谷くん、これは過去問を解いたにすぎないわ。過去とはすなわち現在には及ばないもの。2週間後のDレベル検定こそ真に意味のあるものよ」

「その言い回しは不合格だったんだな。わかってるわかってる。とりあえず志波姫神華がDレベル2の検定に落ちたことは覚えておこうか」


 ミケばっかり守ってるからだ。

 ちゃんとしてるわ、Dレベル検定。

 強い探索者にキャリーしてもらって、実力のないやつが検定に受かることがないようにできてるんだ。


「それじゃ、残りの施設も案内してあげるよ」

 

 そんなこんなでDレベル検定を終えたあとも、俺たちはヴィルトに第二訓練棟の施設を教えてもらった。

 第二訓練棟を見て回ったあとは、寮にもどって、俺は第一訓練棟訓練場へとやってきた。

 いつもの場所。ひとりだけの空間。『斬撃異常長剣ブレードソード』で、一心不乱に素振りする。


「9996、9997、9998、9999、10000!」


 それが終わればボクシング部へジャブを鍛えにいき、打撃を学び、再び訓練場にもどってMPの限り『筋力で金属加工』を鍛え、鉄球を自在にふりまわして、練度をあげたり、新しい組み合わせについて思想を膨らませたりする。

 鍛錬が終われば、ポイントをふりわける時間だ。


「さて、勉強するか……もう眠たいけどやっておかないと」


 気が付けば次の日になっていた。

 どうやら寝落ちしたらしい。

 テスト前ってこんな忙しいだなと思いながら、俺は日々をあわただしく過ごした。

 そうして瞬く間に時間がすぎた。


 ──11日後


 テスト当日の朝を迎えた。

 起床し、顔を洗い、パソコンに向かい、テスト範囲内の内容を改めてさらっと確認する。

 時間がきたので、食堂に降りて寮の朝食を食べ、部屋にもどり、コーヒーを飲みながら再び復習。

 

「よし、大丈夫なはずだ」


 時間がきた。

 そろそろ登校しよう。


 スキルツリーを確認し、シャワーを浴びる。

 そういえば、スキルツリーの進捗についてだが、ほどなくして新スキルが出なくなった。

 ツリーレベル5の種はあんまり中身が詰まってなかったのかもしれない。


 なので必然と基礎力強化週間の再来となった。

 現在のステータスはこんな感じだ。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【Status】

 赤谷誠

 レベル:0

 体力 20,000 / 20,000

 魔力 40,000 / 40,000

 防御 20,000

 筋力 40,000

 技量 40,000

 知力 10,000

 抵抗 2,000

 敏捷 10,000

 神秘 2,000

 精神 3,000


【Skill】

 『スキルトーカー』

 『発展体力』×2

 『発展魔力』×4

 『発展防御』×2

 『発展筋力』×4

 『発展技量』×4

 『発展知力』

 『応用抵抗』×2

 『発展敏捷』  

 『応用神秘』×2

 『応用精神』×3

 『かたくなる』

 『やわらかくなる』

 『くっつく』

 『筋力で飛ばす』

 『筋力で引きよせる』

 『とどめる』

 『曲げる』

 『第六感』×3

 『瞬発力』×3

 『筋力増強』×3

 『圧縮』

 『ペペロンチーノ』

 『毒耐性』

 『シェフ』

 『ステップ』×2

 『浮遊』

 『触手』

 『たくさんの触手』

 『筋力で金属加工』

 『手料理』

 『放水』

 『学習能力アップ』

 『温める』×4

 『転倒』

 『足払い』

 『拳撃』

 『近接攻撃』

 『剣撃』

 『ハンバーグ』

 『聖属性付与』

 『闇属性付与』

 『』


【Equipment】

 『スキルツリー』

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 厳正なる審査を重ね、筋力を40,000にあげ、自分の力をコントロールするために技量もあげた。

 魔力も充実し、あとは「知力ステータスをあげれば賢くなれるかも」という疑念と希望を払拭するため実際にポイントを振りわけてみた。効果があるのかはいまいちわからない。

 

 防御と体力もふった。

 体感としてはこれはかなり正解で、筋力の制御が技量だけをあげるよりずっとしやすくなったように思う。

 あとは『筋力増強』によって自壊する危険性が減ったのも、たぶんこの2つのステータスをあげた恩恵だと思う。

 

 あとは抵抗、神秘などの、いままでノータッチだったステータスにもポイントを振り分けた。

 抵抗に関しては知力補正の攻撃──魔法系のスキル──によるダメージを軽減する効果があるらしい。

 志波姫に手伝ってもらって、毎日氷の短剣で刺してもらった。あれは知力補正の魔法系スキルらしいので。

 1日ごとに抵抗ステータスを振っていき、毎日痛みというデータをとった。

 結果としてはたしかに魔法系攻撃のダメージを軽減できていた。何十回も刺された意味はあったといえる。


 こうして10日あまり基礎を充実させ、俺は生まれ変わった。

 この赤谷誠にもう死角はない。たぶん。

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