『』

 ガツンとスタミナのつく夕食を終えて、家庭科室をあとにする。

 寮への帰り道、林道は奇妙なほどにしんみりしていた。


「どうしたんだ。急に黙って」

「いや、いいなあーって思って」

「いきなりどうした。ハンバーグ作れることに嫉妬してるのか」

「それじゃなくてさ。もちろん、ハンバーグも魅力的なんだけどね。……赤谷は芹沢せりざわ先生に才能あるって言われてたじゃん」

「あぁ、防衛論の話か」


 話が飛んだな。


「それが羨ましくて。赤谷はこの前まで私より弱っちそうだったのに、実はめちゃくちゃ強くてさ、先生にも認められて」

「そういえば林道は強くならなくちゃいけないとか、言ってたっけ。あれはまた、どうして」

「前にも言ったじゃん。私は故郷を救わないといけないんだ」


 林道の故郷──未開の土地・群馬。部族たちが縄張り争いを繰り広げ、血で血を洗う戦いがおこなわれているという地。


「最初は私もけっこう才能あると思ったんだけどね」

「お前は才能あるほうだろ。ほら、剣が光るじゃん」

「ライトエンチャントね。でも、あれまじで光るだけなんだよね。聖属性のエンチャントが有効な敵って少ないらしいし。とりあえず疑似ダンジョンのチワワには無意味っぽいんだよね」


 林道が自分のスキルにテンションさがったあたりで、分かれ道にさしかかった。


「林道は剣をずっと振ってきたんだし、志波姫に教えてもらえれば強くなれるんじゃねえの」

「あはは、けっこう適当なんだけど」

「仕方ないだろ。なにごとも頑張るしかないんだ。俺たちは才能に賭けたんだから」

「賭け、かぁ……うんん、ごめん、なんか変な感じになっちゃった。おかしいな、こんな話するつもりじゃなかったのに。落ち込んでても仕方ないね! よし、明日からまたがんばろうー!」


 林道は頬をパチンッと挟むように叩いて「痛ひっ!?」と涙目になる。IQ3かな。


「それじゃあね、赤谷」

「おう。またな」


 情緒不安定な林道と別れて寮の自室に帰ってきた。

 しんっと静まりかえった部屋のなか、俺は洗面所へ向かう。

 

「いってえ。まだ体がずきずきするな」


 志波姫に散々やられたダメージが色濃く刻まれている。自業自得とはいえ、やりすぎだろ。いちいち攻撃力が高いんだよな、あいつ。


 風呂でシャワーを浴びながらスキルツリーを生やす。


「今日のポイントミッションも無事完了っと」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【本日のポイントミッション】

  毎日コツコツ頑張ろう!

  『1人前のハンバーグ』


 ハンバーグでうならせる 1/1


【報酬】

 3スキルポイント獲得!


【継続日数】45日目

【コツコツランク】ゴールド

【ポイント倍率】3.0倍

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 ハンバーグでうならせるのはひとりでよかったが、まあ、林道のやつ、けっこう喜んでくれていたし無駄ではなかった。ガーリックライスだって食べられたしな。

 さて、ようやく本日のお楽しみタイムだ。


 さっさとスキルポイントを割り振ろう。我慢できない。

 俺はこのために生きているとっても過言じゃないんだ。


━━━━━『スキルツリー』━━━━━━

【Skill Tree】

 ツリーレベル:5

 スキルポイント:3

 ポイントミッション:完了

【Skill Menu】

 『応用体力』   

  取得可能回数:2

 『発展魔力』   

  取得可能回数:2

 『応用防御』   

  取得可能回数:2

 『発展筋力』 

  取得可能回数:2

 『発展技量』   

  取得可能回数:4

 『基礎知力』

  取得可能回数:5

 『基礎抵抗』

  取得可能回数:5

 『応用敏捷』 

  取得可能回数:1

 『基礎神秘』

  取得可能回数:5

 『応用精神』

  取得可能回数:2

 『ペペロンチーノ』 

  取得可能回数:3

 『』       NEW!

  取得可能回数:1

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 NEW! のスキルがあるな。……あ? 待ってくれ、なんか表示バグってませんか? 『』の中身が表示されていないんだが。


「これは一体……」


 俺はちょっと怖くなりながらもスキル『』を指でなぞる。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

『』

これは白紙 

なんにでも染まる無垢


効果の宿っていない祝福

スキルトーカーで力を刻める

━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 白紙、無垢。なんにでも染まる、か。

 俺の灰色の脳細胞がヴヴヴンン! っとうなり声をあげる。

 

「ユリーカ! わかったぞ、そういうことか!」


 俺の推測が正しければこの謎のスキルは『スキルトーカー』で記録したスキルに関係していると見た。


 俺はすぐさまスキルポイントを割り振って、『応用体力』『応用防御』『』の3つのスキルを解放した。

 ステータスは以下の通りに変化した。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【Status】

 赤谷誠

 レベル:0

 体力 50 / 4,000

 魔力 20,820 / 30,000

 防御 4,000

 筋力 30,000

 技量 10,000

 知力 0

 抵抗 0

 敏捷 4,000

 神秘 0

 精神 3,000


【Skill】

 『スキルトーカー』

 『応用体力』×4

 『発展魔力』×3

 『応用防御』×4

 『発展筋力』×3

 『発展技量』

 『応用敏捷』×4

 『応用精神』×3

 『かたくなる』

 『やわらかくなる』

 『くっつく』

 『筋力で飛ばす』

 『筋力で引きよせる』

 『とどめる』

 『曲げる』

 『第六感』×3

 『瞬発力』×3

 『筋力増強』×3

 『圧縮』

 『ペペロンチーノ』

 『毒耐性』

 『シェフ』

 『ステップ』×2

 『浮遊』

 『触手』

 『たくさんの触手』

 『筋力で金属加工』

 『手料理』

 『放水』

 『学習能力アップ』

 『温める』×4

 『転倒』

 『足払い』

 『拳撃』

 『近接攻撃』

 『剣撃』

 『ハンバーグ』

 『』


【Equipment】

 『スキルツリー』

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 力を感じる。

 スキルツリーを通じて、この奇妙なスキルの使い方が理解できる。


 俺はスキル『スキルトーカー』を開いた。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━

『スキルトーカー』

アクティブスキル

スキルをひとつ保存できる

【コスト】なし


祝福解読は計画的に


【記録スキル】

  『聖属性付与』

   アクティブスキル

  【コスト】MP30


  死に生きる者に制裁を

━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 記録されているスキルは期せずして記録されたものだろう。


「これをこっちに──」


 スキルツリーの導きのままに『スキルトーカー』の記録スキルを、空白の『』へと移動させた。

 するとステータスの表示は切り替わり『』は『聖属性付与』という色を獲得していた。

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