剣撃
イケメン三銃士のひとり、左ジャブをほぼ極めたという加藤先輩のもと俺はサンドバッグを打ちまくった。
たびたびトイレにいってポイントミッション『ジャブ漬けの日々』を確認したところ、進行状況に変化があった。
思うに一定のクオリティ以上のジャブ、あるいはサンドバッグを殴る必要があったと思われる。
サイレントレギュレーションだ。見えざる規定に抵触していたから今朝はジャブカウントが進まなかったんだ。
「赤谷は呑み込みがはやいよ、こいつにはボクサーの才能もあるにちがいない」
「気合もすごいな……もう1万回くらいひたすらジャブ打ってないか?」
「地道な鍛錬を面倒くさがらず、基礎を固める……壁4枚ぶちぬくパワーをもっていて、それでも技術を身に着けようとする貪欲でまじめな姿勢。なるほどな、本当の強さを求めてこうやってコツコツやってきたんだな」
ポイントミッションを進めるためにジャブを打ちまくってたら、いつのまにか俺のまわりにボクシング部の連中が集まっていた。
集中できないのでやめてほしかったが、部室を貸してもらっているし、やたら感心しているので追い払うわけにもいかず、結局俺はみんなの注目するなかジャブを打った。
「見ろ、俺たちにまるで気づいてない」
「なんて集中力だ」
「あの集中力が代表者競技を勝ち抜いた集中力か」
いや、気づいてるんだよ、めちゃ気にしてるんだよ。おかげで全然集中できてないんだよ。
やたら好評にとらえてるけど、俺は自分のためにポイントミッション進めてるだけだし、集中してないしで、全然立派でもなんでもないので、的外れな感心はしないでほしいんだけどな……。
「今日はここまでにします」
「おつかれ。自分でなにか納得できたようだな」
「またいつでもこいよ。サンドバッグなら貸してやる」
キレのある素早い小パンがだいぶ身についてきたので今日のジャブはここまでにする。
寮で夕食をとって、部屋でシャワーを浴び、スキルツリーを展開して、お楽しみのポイントふりわけを行おう。
━━━━━『スキルツリー』━━━━━━
【Skill Tree】
ツリーレベル:5
スキルポイント:3
ポイントミッション:完了
【Skill Menu】
『応用体力』
取得可能回数:4
『発展魔力』
取得可能回数:2
『応用防御』
取得可能回数:4
『発展筋力』
取得可能回数:2
『発展技量』
取得可能回数:4
『基礎知力』
取得可能回数:5
『基礎抵抗』
取得可能回数:5
『応用敏捷』
取得可能回数:1
『基礎神秘』
取得可能回数:5
『応用精神』
取得可能回数:2
『ペペロンチーノ』
取得可能回数:3
『剣撃』 NEW!
取得可能回数:1
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おや、本日は『剣撃』ですか。拳の次は剣と。
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『剣撃』
アクティブスキル
剣を使った攻撃の威力を強化する
【コスト】MP100
いうて刃物には勝てない
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いうて刃物には勝てない。それはそう。
ステータスを眺めながら、俺は熟考し、『応用体力』『応用防御』『剣撃』の3つのスキルを解放した。
ステータスは以下のように変化した。
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【Status】
赤谷誠
レベル:0
体力 980 / 2,000
魔力 18,130 / 30,000
防御 2,000
筋力 30,000
技量 10,000
知力 0
抵抗 0
敏捷 4,000
神秘 0
精神 3,000
【Skill】
『スキルトーカー』
『応用体力』×2
『発展魔力』×3
『応用防御』×2
『発展筋力』×3
『発展技量』
『応用敏捷』×4
『応用精神』×3
『かたくなる』
『やわらかくなる』
『くっつく』
『筋力で飛ばす』
『筋力で引きよせる』
『とどめる』
『曲げる』
『第六感』×3
『瞬発力』×3
『筋力増強』×3
『圧縮』
『ペペロンチーノ』
『毒耐性』
『シェフ』
『ステップ』×2
『浮遊』
『触手』
『たくさんの触手』
『筋力で金属加工』
『手料理』
『放水』
『学習能力アップ』
『温める』×4
『転倒』
『足払い』
『拳撃』
『近接攻撃』
『剣撃』
【Equipment】
『スキルツリー』
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攻撃力も大事だが、耐久力面でのステータスも充実させたいと考えるようになってきた。
『筋力増強』による自壊もあるいは耐久力をあげることで改善がみられるかもしれないしな。
あとはバランスを整えたかったという気持ちもある。
「『剣撃』は『拳撃』とほとんど似た性質のスキルに思えるな。拳の剣バージョン的な。ってことは『剣撃』+『近接攻撃』でも現状の理論最大かな」
ここ最近やたらと特定の物理属性耐性を有する敵と戦いすぎてるせいか、物理属性1属性だけだと安心できない体質になっていたので助かる。打撃と斬撃。2つの物理属性攻撃をそろえておけば、まあとりあえずは安心できそうだ。
でも、剣か。
俺って別に剣術を修めてるわけじゃないから、正直、あつかえてる気はしてないんだよな。
まじで見様見真似でふりまわしてるだけだ。積極的に使おうとは思ってない。近接なら普通に打撃の『
今日の異常攻撃に対する防衛論やジャブ漬けを通して学んだが、技能ってけっこう大事な分野だ。適切なフォームで攻撃できているか否か。効率的な力の使い方ができているか否か。地味な部分だが、これができるだけで戦闘力はおおきく向上する気がする。
なによりスマートだ。洗練された戦闘技術にはあこがれを感じる。
芹沢先生にさんざんかけられた投げ技、志波姫がたびたび見せる卓越された剣術、代表者競技で見た薬膳先輩の体術そのほか。
お手軽なペペロンチーノも美味しいけど、手の込んだハンバーグも美味しい。
これまでは鉄球飛ばして満足してたが、近接攻撃という選択肢をちゃんと扱う場合、俺も技術の領域に進出してもいいのかもしれない。
ポイントミッションくんが『ジャブ漬けの日々』を見せてきたのも、俺の進む道を示してくれているのやも。
「素振りからはじめるか」
剣術は基礎武器実習の授業で多少触っているが、それだけで身につくはずもない。
俺は『重たい球』を『
ボクシング部のイケメン三銃士がパンチを教えてくれたように、だれか剣の振り方を教えてくれる師匠がいればいいんだが。
「…………いや、ないな」
一瞬、志波姫の姿が脳裏に浮かんだが、あの氷の令嬢が俺に剣を教えてくれるはずがない。『剣の振り方を教えてほしい? これが剣術よ』とかいって、俺の脳天を峰打ちとかしてきそう。まじかよ志波姫最低だな。
益体のないことを考えるのをやめ、俺は1,000まで素振りを数えた。
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