羽生先生、ありがとうございました
成長したスキルツリーを展開して、ツリーウィンドウを確かめる。
━━━━━『スキルツリー』━━━━━━
【Skill Tree】
ツリーレベル:5
スキルポイント:0
ポイントミッション:『外周 2』
【Skill Menu】
『応用体力』
取得可能回数:4
『発展魔力』
取得可能回数:3
『応用防御』
取得可能回数:4
『発展筋力』
取得可能回数:2
『発展技量』
取得可能回数:4
『基礎知力』
取得可能回数:5
『基礎抵抗』
取得可能回数:5
『応用敏捷』
取得可能回数:1
『基礎神秘』
取得可能回数:5
『応用精神』
取得可能回数:2
『ペペロンチーノ』
取得可能回数:3
『拳撃』 NEW!
取得可能回数:1
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ほう、増えたスキルは『拳撃』か。
どれどれどんなスキルか確かめてみよう。
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『拳撃』
アクティブスキル
拳を使った攻撃の威力を強化する
【コスト】MP100
最後に頼りになるのはアナログだ
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すごいわかりやすい。
だからこそ使いやすそうだ。
俺は瞬時に既存のスキルコンボに組み込めるかを想像する。
漠然と最大火力の更新を狙えるような予感がした。
現状の最大火力は『
威力の単純比較はできないので、『圧縮』+『とどめる』か、『温める』×4+『瞬発力』+『とどめる』か、2つのパーツの威力、どちらが優れているのかという部分が争点だ。
所感だけなら、後者のファイアエンチャントが施してある近接攻撃のほうが強いとは思っている。
そこに『拳撃』という明確にパンチ力を強化するスキルが加われば、いよいよ『
「むふふ、ちょっと楽しみだな」
頭のなかで最大火力の夢をいだきつつ、本日のポイントミッションを確認する。
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【本日のポイントミッション】
毎日コツコツ頑張ろう!
『外周 2』
英雄高校の敷地を外周する 0/15
【継続日数】41日目
【コツコツランク】ゴールド
【ポイント倍率】3.0倍
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なるほど、シンプルな難易度アップバージョンか。
日課の重さもどんどんあがっていくのが、このポイントミッションの恐ろしいところだ。
でも15周くらいならたぶん問題はない。
タオルと水をもって俺は校門にむかった。
中央棟のまえを通りかかった時、くたびれたジャケットの男と鉢合わせた。
「羽生先生、おはようございます」
「赤谷くん、奇遇だね、こんなタイミングで会うとは」
羽生先生はカバンを片手に校門のほうへ向かっているようで、自然と同じペースで並んで歩くことになった。
朝のこの時間帯に、どこかへいくというのは違和感があった。
わざわざ出勤して、荷物だけもって、学校を出ていくということだし。
「赤谷くんはこれから訓練かな」
「はい、ちょっと外周でもしようと思って」
「いいね。とてもいい」
「昨晩は本当にありがとうございました」
「どういたしまして。赤谷くんもよく頑張ったよ」
「でも、ジェモール先生を怪しんでいたのならもっとはやめに助けてほしかったです」
「志波姫くんにはもしもの時に守るように伝えておいたんだけどね。君が保健室で痛い思いをしたのは、僕のせいじゃあない」
志波姫さんの独断だったか。やはり氷の令嬢。人の心とかないらしい。
「屋上にどうして戦闘機なんかあったんですか」
「予防策だよ。扉間ひぐれのスキルがどれほどぼスケールで機能するか不明である以上、ああいう移動手段は必要になる」
「あれのおかげで助けられました。もう終わったと覚悟決めてた時に、空から降ってきてびっくりしましたよ」
「降ってきたとえば、志波姫さんが速攻で機体から飛び降りてびっくりしたね。君のために必死だったみたいだ」
「俺のために必死? まさか。あれは氷の令嬢ですよ」
「僕が廃工場へ向かおうとした時、勝手についてきて、連れていけと駄々をこねられた。言っても聞かなそうだし、彼女なら自分の身は自分で守れそうだし連れていったら、勝手に飛びだしたんだ。君が思ってる以上に、君のことを気にかけているように思えるよ」
校門にたどり着く。羽生先生は「さてと、ここでお別れだ」とつぶやいた。
改まった言い方だった。今この時点だけのお別れより長い意味でのお別れを意味している気がした。
「どこかいくんですか」
「そうだね。どっかにいく。英雄高校とは今日でお別れだ。あんまり長くいるのはよくないからね」
「辞めるんですか」
「そういうことだ」
「突然ですね」
「そうでもないよ。決まっていたことだからね。僕は非常勤講師だ」
「チェインを捕まえたからですか?」
「志波姫さんから聞いたのかな?」
「はい」
「ふむ。だとしたらついてにひとつアドバイスを送っておこう」
「アドバイスですか」
「もしかしたら君は厄介な者に目をつけられているかもしれない」
「え……チェインはもう捕まったんじゃ?」
「チェインの背後には支援者がいるみたいでね。人造人間は高価な兵器だ。すぐに用意するのは難しいのに、君に適応したモデルを配備していた」
「チェインの支援者、ですか。何者なんですか」
「これからそれを調べる必要がある。チェインやひぐれが口を割れば話ははやいんだけどね。君はあの現場にいた。当事者でもある。支援者がチェインに肩入れしている場合、君に復讐を考える可能性がある。見えざる脅威に怯えすぎても仕方ないが、気を引き締めて学園生活をおくったほうがいい」
「平穏が戻ってくると思ったんですけど」
「なに、もしかしたら、というだけの話だよ。杞憂の可能性のほうがずっと高い」
羽生先生は背を向けて「それじゃあ朝練がんばってくれ、赤谷くん」と手をふって去っていった。
不思議な人だったな。
わかったのは、ただの先生じゃないということ。
そして俺の命を救ってくれたということ。
「ありがとうございました」
羽生先生の去っていく背中に、俺はちいさく頭をさげておいた。
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