たくさんの触手
高難易度ポイントミッション『金属製の猫フィギュア』を終えることができた。
スキルコントロールは上達していたつもりであったが、それはまだまだ甘くて、俺は道半ばにいることを理解させられた。
もしかしたらポイントミッションくんが要求しているレベルが高いだけかもしれないが。まあ、そうだったとしてもこれから先、日課をこなしていくためには毎日ポイントミッションを越していく必要があるので、自分の水準をそこに合わせていく必要があるのだ。
洗面所でスキルツリーを展開する。
━━━━━『スキルツリー』━━━━━━
【Skill Tree】
ツリーレベル:4
スキルポイント:3
ポイントミッション:完了
【Skill Menu】
『応用体力』
取得可能回数:4
『発展魔力』
取得可能回数:3
『応用防御』
取得可能回数:4
『発展筋力』
取得可能回数:2
『応用技量』
取得可能回数:3
『基礎知力』
取得可能回数:5
『基礎抵抗』
取得可能回数:5
『応用敏捷』
取得可能回数:4
『基礎神秘』
取得可能回数:5
『応用精神』
取得可能回数:3
『ペペロンチーノ』
取得可能回数:3
『足払い』
取得可能回数:1
『たくさんの触手』 NEW!
取得可能回数:1
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NEW!なスキルがある。『たくさんの触手』……だと?
大変に興味深いスキルだ。さっそく詳細を確認しなければ。
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『たくさんの触手』
アクティブスキル
触手がたくさん伸ばせるようになる
【コスト】MP 200
恐るべき触手の応酬
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たくさん伸ばせるらしいです。
スキル名が『触手』とは違うようだが……。
普通の『触手』のスキル詳細を開いて比べてみる。
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『触手』
アクティブスキル
触手を伸ばせるようになる
【コスト】MP40
はいそうです 想像通りの触手です
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明確な差は【コスト】だろうか。
『触手』が【コスト】MP 40に対して、『たくさんの触手』は【コスト】MP200である。
スキルパワーが『たくさんの触手』のほうが高い。これは期待できる。
熟考し、俺は『応用技量』『足払い』『たくさんの触手』を解放することにした。
ステータスは以下のように成長を遂げた。
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【Status】
赤谷誠
レベル:0
体力 1,000 / 1,000
魔力 1,200 / 20,000
防御 1,000
筋力 30,000
技量 3,000
知力 0
抵抗 0
敏捷 1,000
神秘 0
精神 2,000
【Skill】
『応用体力』
『発展魔力』×2
『応用防御』
『発展筋力』×3
『応用技量』×3
『応用敏捷』
『応用精神』×2
『かたくなる』
『やわらかくなる』
『くっつく』
『筋力で飛ばす』
『筋力で引きよせる』
『とどめる』
『曲げる』
『第六感』×3
『瞬発力』×3
『筋力増強』×3
『圧縮』
『ペペロンチーノ』
『毒耐性』
『シェフ』
『ステップ』×2
『浮遊』
『触手』
『たくさんの触手』
『筋力で金属加工』
『手料理』
『放水』
『学習能力アップ』
『温める』×4
『転倒』
『足払い』
【Equipment】
『スキルツリー』
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『応用技量』をとったのは、猫フィギュアの導きゆえである。従来通り筋力30,000を完全に御するためという意味合いもあるが、同時に俺にはよりスキルコントロールを高めることが要求されていることも判明した。ゆえに技量ステータスが必要になった。これから先、ポイントミッションの継続日数が【コツコツランク】が上がるにつれて、日課の難易度があがっていくだろう。その時に「今回は無理でした」は許されない。一度でも日課を怠れば、【継続日数】はリセットされてしまうだろうから。毎日コツコツ積み上げることは何よりも重要だ。
『たくさんの触手』は取りたかったから解放した。それ以上の理由はない。触手なんてなんぼあってもいいですからね。
「うぐ、うぉ、ぉ」
左腕がうずく。皮膚の下で巨大なミミズが蠢いているように波打つ。骨格が変形し、人体に存在しない器官が急速に発達していく。生物が何千年、何万年とかけて行う進化をわずか数十秒に詰め込んだ。それは痛みを伴う人体変態だが、スキルツリーを展開したり収納したり、触手の獲得も二度目ともなれば慣れたものだ。
左腕の進化が完了した。俺は腕を持ちあげる。
肘関節あたりにあったフジツボみたいなやつの数が増えている。以前は3つだったが、いまは8つもある。
『たくさんの触手』により、俺のフジツボは5つ増加したらしい。なるほど確かにスキル名に偽りなしだ。たくさんである。
触手を伸ばしてみる。操作感はこれまで『触手』を積極的に練習してきた経験値がそのまま役立ちそうだった。
ただ性能面で『触手』と『たくさんの触手』にはいくつかの違いがあった。
『触手』
射程8m、最大射程での精密動作は不可能、伸縮速度が遅い、パワーは出ない
『たくさんの触手』
射程16m、最大射程での精密動作が可能、伸縮速度はまだ遅い、パワーはまだ微妙
明確な違いは触手の射程である。
長さが2倍あると全然違う。てっきり”たくさん”あるので、それだけ性能低下している系かと思ったがそんなことなかった。完全なる上位互換だ。
ちなみに伸縮速度はちょっと速い気がする。パワーも微妙に出る気がする。ただこれは熟練度があがってスキルコントロールが向上しているorいましたが取得した『応用技量』1,000上昇分の差な気がする。それでも、まだまだ『たくさんの触手』単体では運用できない。依然として『瞬発力』による初速補強、『筋力増強』による威力補強は必須だ。
また最大射程での精密動作も可能になった。精密動作といっても16m伸ばした状態で、触手の先端でマグカップを持ち上げることができる。ただまあこれも『応用技量』さんのおかげ━━以下略。
そんなわけで我が触手が進化した。
なお『たくさんの触手』を解放した影響か『触手』のほうも性能が向上していた。
というのも俺の触手8本すべてが同じ長さまで伸びるのである。8本あるうちの5本が16m伸びるのは当たり前だとしても、内3本は『触手』の触手なハズなので、8mまでしか伸びないと思っていたのだが……良い意味で期待が裏切られた。
気になって『触手』のスキル欄を確かめてみた。
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『触手』
アクティブスキル
触手を伸ばせるようになる
【コスト】MP200
はいそうです 想像通りの触手です
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スキル『触手』の【コスト】が変化していた。MP40からMP200に変わっていた。
『たくさんの触手』にインスパイアされて普通の『触手』もやる気だしたのかもしれない。
かくして俺は射程が倍に伸びた高性能な触手たちを手に入れたのだ。3本だと対象の右腕左腕足一本までしか拘束できなかったが、8本あれば両手両足を拘束してもおつりがくる。ほらね、なんかいろいろ出来そうじゃないですかね。なにがとは言いませんけど。いろいろとね。夢が広がるね。
ひとりニヤニヤしながらテンションあがってると、すぐに虚しい気持ちになった。
使うことのない爪を必死に研ぐような、ゾンビの溢れた世界でお札を集めるような、虚無感である。
もちろん戦術的な価値は格段に向上したのだが……ね。
「そうだ、薬膳先輩に自慢しよっと」
パワーアップした触手たちになんとか意味を見出しつつ、俺はベッドに飛びこんだ。
今日も疲れたな。
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