極振りってどうなんです
数日後。
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【Status】
赤谷誠
レベル:0
体力 100 / 100
魔力 10 / 10
防御 0
筋力 500
技量 0
知力 0
抵抗 0
敏捷 0
神秘 0
精神 0
【Skill】
『基礎体力』
『基礎筋力』×5 上位スキル進化可能
【Equipment】
『スキルツリー』
━━━━━━『スキルツリー』━━━━━━━
【Skill Tree】
ツリーレベル:0
スキルポイント:0
ポイントミッション:完了
【Skill Menu】
『基礎体力』
取得可能回数:4
『基礎魔力』
取得可能回数:5
『基礎防御』
取得可能回数:5
『基礎筋力』
取得可能回数:0
『基礎技量』
取得可能回数:5
『基礎知力』
取得可能回数:5
『基礎抵抗』NEW!
取得可能回数:5
『基礎敏捷』NEW!
取得可能回数:5
『基礎神秘』NEW!
取得可能回数:5
『基礎精神』NEW!
取得可能回数:5
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というわけで『基礎筋力』を取り終えた。
いまでは明確に筋力の増加を感じ取れる。
例えば、ここにある怪物エナジーの空き缶、縦につまんでぺちゃんこに潰すことができる。どうだ、このパワー。これが筋力500の力だ!
とはいえ、超人たる探索はならばこれくらいは誰でもできるはずだ。もっと頑張らないとな。俺は才能がないから。他人の10倍、否、20倍努力しないと。
ちなみにだいぶNEW!なスキルも増えた。
この数日様子を見たところ、どうにもポイントミッションを達成すると増えているような気がする。気がするだけで詳細は不明であるが。
なお新しく【Skill Menu】に追加された解放可能スキルは次である。
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『基礎抵抗』
パッシブスキル
ステータス抵抗を増加させる
何事もまずは基礎を固めることだ
魔法攻撃による被害を抑える
備えあれば憂いなし
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『基礎敏捷』
パッシブスキル
ステータス敏捷を増加させる
何事もまずは基礎を固めることだ
素早さに関係するステータス
当たらなければどうということはない
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『基礎神秘』
パッシブスキル
ステータス神秘を増加させる
何事もまずは基礎を固めることだ
神秘を御し 未知に挑むのだ
相手は尋常ではないのだから
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『基礎精神』
パッシブスキル
ステータス精神を増加させる
何事もまずは基礎を固めることだ
神秘を相手するには強靭な精神力が必要だ
鋼の精神は最も恐ろしい武器となる
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なんとなく法則性は悟っていた。
増えたスキルはすべては基礎なのだ。
ステータスを補強するためのパッシブスキルなのだ。
これですべての基礎系スキルが出揃ったはずだ。
体力、魔力、防御、筋力、技量、知力、抵抗、敏捷、神秘、精神の10項目の基礎系スキルが揃ったからである。
これで【Skill Menu】の追加はおしまいなのか、はたまた先があるのか。
それは明日のポイントミッションを完了しないことにはわからない。
そもそもポイントミッションが解放可能スキル追加のトリガーになっているのかも不明ではあるのだが。
「さて、今日も頑張ったな。今日は食堂で夕飯食えそうだな」
先ほどポイントミッション『外周』をしてきて汗だくなので、食堂へ降りる前に、とりあえずシャワーを浴びることにした。
ステータスウィンドウを閉じる。ふと、手が止まる。ウィンドウの【Skill】の欄に奇妙な表示が出ているのである。『上位スキル進化可能』だと?
とりあえず指で触れてみる。
『同スキルを一定数獲得しました。スキル進化します』
肉体に異変が起こった。
皮膚の下でグギグギと動き出したのだ。
筋肉が、構造が変化している……っ、激しい痛みだ。
「うぐっ」
やがて痛みはおさまった。
俺は奥歯を噛み締め、荒く息をつく。
「はぁはぁ、スキル進化って何が起こったんだよ……」
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【Status】
赤谷誠
レベル:0
体力 100 / 100
魔力 10 / 10
防御 0
筋力 1,000
技量 0
知力 0
抵抗 0
敏捷 0
神秘 0
精神 0
【Skill】
『基礎体力』
『応用筋力』
【Equipment】
『スキルツリー』
━━━━━━『スキルツリー』━━━━━━━
【Skill Tree】
ツリーレベル:0
スキルポイント:0
ポイントミッション:完了
【Skill Menu】
『基礎体力』
取得可能回数:4
『基礎魔力』
取得可能回数:5
『基礎防御』
取得可能回数:5
『応用筋力』 NEW!
取得可能回数:4
『基礎技量』
取得可能回数:5
『基礎知力』
取得可能回数:5
『基礎筋力』
取得可能回数:0
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筋力が1,000になっている!?
【Skill】の『基礎筋力』×5が消えて『応用筋力』一個になってるし。
【Skill Menu】でも取得可能スキルにも『応用筋力』が追加されてる……。
確認してみるか。
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『応用筋力』
パッシブスキル
ステータス筋力を大きく増加させる
地力を充実させ 確かな実力を
筋力の高みへ進みはじめた パワー
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これは『基礎筋力』の正統進化、上位互換のスキルだな。
これひとつでステータスの上昇値が1,000もあるのか?
だとしたら化け物すぎないか? 基礎系と比べて10倍の効果じゃないか。
むむ、もしかして、これってすべての基礎系スキルにある進化なのかな。
だとしたら【Skill Menu】で基礎を一種類コンプリートするたびに、取得可能スキル全部に、応用系のスキルが追加されていくのか?
ええ……どうしよう。俺、筋力コンプリートしたから今度は敏捷あたり取ってスピード系男子にだろうとか思ってたんだけど……応用編まで出てきちゃったら、筋力極めたくなっちゃうじゃん。
「やはり古来からのロマン極振りか……? いや、しかし、これスキルポイント振り直せないよな……? ポイントミッションがいつまでも存在していると考えるのは甘えか? どこかでパタンっと音沙汰なくなるかもしれないし……スキルポイントが欲しい、需要に供給が間に合ってない……っ!」
果たしてどうしたものか。
このまま筋力道を進んでいいものか……。
翌日。
学校へ向かう。
1−4の教室はいつも通りガヤガヤとしている。
年度のはじまり、学生たちは居場所を求めて動きまわる。
例えば、それは脳のシナプスが絶えず繋ぎ代わり、変化するように学級内の人間関係も刻一刻と変化する。特に高校はじまったばかりのこの時期は、皆が自分の居場所を求めて、意識か無意識か、定位置を乗り換える。
入学から1ヶ月以上が経過し、すでにグループは固まりきった。
最初はとりあえず席近いやつと仲良くなろうと振る舞って、1週間くらいしたら「あ、こいつ違うな」「俺と属性合わなそうだな」とか、個々人が勝手に判断して、最初のグループを離れて、2個目くらいのグループで安定を得るんだ。
では、この赤谷誠の居場所はどこか。
クラスの真ん中だ。ああ、勘違いしないで欲しい。物理的に座席がクラスの真ん中にあるだけで、スクールカースト的には最底辺である。悲しみ。
わいわいしている生徒たちは教師の前の扉が開くなり、皆、席へ戻っていく。
探索者概論の担当、小峰先生が入ってきた。ピンク色の髪をした痛々しい中年教師だ。白シャツを着崩して、小脇に教科書やらを抱えている。
「授業をはじめようか」
俺は入学の時に学校から支給されたタブレットを机に置いて、タッチペンで板書しながら、先生の話を傾聴する。ごく真面目な態度で挑む。
板書の量は非常に少ない。要点のワードと、その説明だけする省エネスタイルのホワイトボードの使い方である。
探索者概論は主に、探索者がダンジョンを攻略するに当たって学ぶべきさまざまな事柄を知る授業だ。
ステータス、スキル、ダンジョン装備、そのほか異常物質、ダンジョン財団、モンスター、ボス、ダンジョンの地形、特性などなど。
学ぶべきことは多岐にわたる。
かつては学校などなく、探索者は現場でこれらのことを独学しなければいけなかったという。昔の探索者は大変である。
探索者概論を聞いていると、ふと思う。
小峰先生は元探索者だと言うし、彼に極振りについてアドバイスをもらいのはどうだろうか、と。
「よーし、一通りいい感じだな。ここまでで何か質問はあるか」
「小峰先生」
「赤谷どうした」
「極振りですよね」
「お前はなにを言っているんだ」
おっとと、解答を急いでしまった。
「パワーが正解ですよね」
「だから、お前はなにを言っているんだ」
「ステータスの質問ですよ。ステータスってまばらに振るより、極振りした方が強いと思うんです」
「独特な質問だな……」
小峰先生は肘をだき「どこから話すか」と思案げし、考えをまとめたように流暢に語りはじめた。
「まず各種ステータスの伸びなど、たいていは本人の意思でどうにかなるものじゃない。体力を増やしたい、魔力を増やしたい、そう願ったところでその通りにステータスは伸びないものだ。神の祝福、それは人間の思惑でコントロールできるものではないのさ。だから、極振りがどうという議論は意味がない。お前が自由に自分のステータスを振り分けることができるのなら話は別だがな」
実はできます。それが俺の唯一の取り柄です。
「それに探索者の強さとは、すなわちスキルパワーの強さでもある。もちろん、それだけではない。例外は多分にある。しかしだ。一般的な探索者の強さをステータス・スキル・装備の3点から見る場合、その割合は3:4:3といったところだろう。スキルの効果的な使い方、そういったものが探索者として”強い”かどうかを大きくわける。大成するか早期引退するか、はたまた殉職するかを決める要素となる」
やはり、スキルなのか。
探索者の強さはスキルの強さなのか。
それじゃあ、スキルが実質ステータスの俺って……。
「ただし、だ。最初に質問に立ち返るならば、極振り……つまり、ひとつの芸当に秀でた探索者は強い。支援、回復、攻撃などなど多様な状況に対応できる探索者もいる。だが、我々は人間だ。どんなに優れた探索者だろうと目覚めるスキルの数には限界があるし、ステータスの成長にも偏りがある。こっちを立たせれば、あっちが立たなくなると言う風にな。火力を出すダメージディーラーに、攻撃を引きつけるタンク、パーティを支えるヒーラーに、バフデバフなど多様な支援をするサポート。こういった概念が生まれるのは、探索者ひとりのリソースが限られているからだ。ひとりでできることは無限じゃない。そして餅は餅屋だ。だから、一点突破する才能のほうが活躍できる場面は多いのさ」
そこで授業終了のチャイムが鳴った。
俺の意志は固まった。
やはり、極振りです。力こそパワーなのです。
俺は寮に戻るなり、速攻でスキルポイントを割り振った。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【Status】
赤谷誠
レベル:0
体力 100 / 100
魔力 10 / 10
防御 0
筋力 2,000
技量 0
知力 0
抵抗 0
敏捷 0
神秘 0
精神 0
【Skill】
『基礎体力』
『応用筋力』×2
【Equipment】
『スキルツリー』
━━━━━━『スキルツリー』━━━━━━━
【Skill Tree】
ツリーレベル:0
スキルポイント:0
ポイントミッション:完了
【Skill Menu】
『基礎体力』
取得可能回数:4
『基礎魔力』
取得可能回数:5
『基礎防御』
取得可能回数:5
『応用筋力』
取得可能回数:3
『基礎技量』
取得可能回数:5
『基礎知力』
取得可能回数:5
【Completed Skill】
『基礎筋力』
取得可能回数:0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『応用筋力』をさらにひとつ追加して、筋力ステータスは脅威の2,000だ。
我がスキル振りに一片の隙無し。
俺は才能がない分、無駄なステータスを上げている暇などない。
そうじゃないとみんなに追いつけない。もっと頑張らなければ。
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