第8話 拠点確保

 冒険者ギルドの受付嬢に紹介してもらった宿屋に到着して、すぐに部屋を借りた。ベッドが一つ置いてあるだけの簡易で小さな部屋。だけど、一人部屋で格安だった。なので、非常に満足している。


「ふぅ。この部屋が、これから僕の拠点か」


 荷物を置いて、ベッドの上に寝転ぶ。少しだけ気になるニオイのシーツ。埃っぽい室内。薄汚れた壁や天井。値段相応だろうから仕方ないか。これから冒険者の活動を頑張って、もっと良い部屋に住めるように上を目指す。


 現代では、まだ両親と暮らしている僕。だから、一人暮らしというものは今回が初めて。旅の間の宿泊も一人だったけれど、拠点での生活となるとまた違う。なんだかワクワクする。これからは、一人で生活するのか。


 これから、冒険者という仕事を始めることになる。現代では、まだ経験できない事を、僕はいち早く経験することが出来る。そう思うと、ワクワクした気持ちが強くなっていく。


 ベッドから起き上がり、荷物を確認する。旅で酷使した剣。手入れ用の布切れや油などの小物類は揃っている。防具は革製の胸当てくらいしかないけど、これも新しく買い替えたい。武器装備を充実させたいな。


 他にも色々と必要な物はありそうだ。お金はある程度持っているけど、無駄遣いはできない。節約していかなければ。まだ僕は、正式な冒険者じゃないらしいから。


 まさか、試用期間があるなんて知らなかったな。王都にあるギルドだからなのか。僕の前にも何人か登録していた。冒険者になろうと考える新人は多いのかな。だから増やしすぎないために試用期間を設けているとか? わからないけれど。


 とにかく、試用期間をクリアしなければならない。


 絶対に冒険者になるために、積極的に依頼を受けて、活発に活動していこう。僕の実力が、どれぐらい通用するのか。それらをしっかり考えていかないと。


 心配事も多いけれど、期待も大きい。これから僕は、冒険者として活動するんだ。憧れていた、あの冒険者に僕も。


 落ち着かず、胸が高鳴る。そんな状態で、再びベッドの上に寝転んでから僕は目を閉じた。


 目を開けると、別の天井が見える。これは、現代の僕の部屋。一旦、戻ってきた。興奮した状態だと、なんだか危なそうだと感じたから。ここは落ち着くために時間をおいた方が良いと思った。そのために現代へ。


 僕が目覚めた時間は、ちょうど学校へ登校する準備を始める頃合い。


 いつも通り朝ごはんを済ませて、制服を着て、カバンを持つ。今日も学校へ行く。勉強して、食事する。何事もないように過ごす予定。


 それぐらい間を空ければ、この興奮も落ち着くはず。


 おそらく他の人には出来ないだろう、僕だけの方法で気分を落ち着かせる。焦らずゆっくりと、確実に。まずは冒険者として認められる必要があるのだから。


 試験は、向こうの世界だけじゃない。こちらの世界でも、高校の入試テストがあるから。その勉強も必要だった。高校へ行くため、テストの勉強もしないといけない。偶然にも同じようなタイミングで、両方の世界で試験がある僕だった。


 どちらの世界も生活も、大切にしていかなければ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【未完】現代世界と妄想異世界の二重生活~二つの世界を行き来して、マイペースで最強になっていく物語~ キョウキョウ @kyoukyou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ