最近はどんどん賢くなってくるAI。AIを題材にした作品はカクヨムでも数多いが、その中でも本作はかなり異色な作品だ。何せ作者がミステリーを途中まで書き、その解答パートをAIの小説ソフトに書かせようとするのだから。
作者が問題パートで書く事件はヒントが見え見えでとっても簡単に見える。たとえば1話目に登場するダイイングメッセージなんて小学生でも解けそうな代物だ……だが、AIはこのダイイングメッセージを解くどころか、ダイイングメッセージの存在そのものに気づかない……! ダメだこいつ……!
そこで作者はAIが正しい手掛かりへ辿り着けるように、作中の描写を加筆していく。この結果、本作は推理小説であると同時に、如何にしてAIに事件を解かせるか作者が悪戦苦闘する高度な実験小説へと姿を変えていく。
この試みが非常に楽しい。ただ事件を解かせるだけではなく、3話目では文章スタイルを切り替えることのできる機能を使って、多重解決風のミステリーに挑戦するなど、AIの持つ可能性をとことん追求しているのも素晴らしい。
しかしこのAI、謎解きこそはとんちんかんだが、小説の文章自体はわりとしっかり書けている。今後AIがますます発達していけば、本当に作者の代わりに、AIが完璧な解答を書いてくれる時代がやって来るかも……。もしかするとこの作品を読んで無邪気に笑っていられるのは今だけかもしれませんよ……。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎 憲)