第3話

朝早く目が覚めてしまった俺は柄にもなく散歩に出かけた。こんなことをする時、大体何かしら起こるというがそれは本当だった。

道にタオルが落ちていたからだ。周りを見ると、すこし先にジョギングしている人がいるだけだった。

俺はその人の持ち物だと思い走って追いかけた。もし違っても交番に届ければ良いし。

追いかけている途中で前を走っている人は女性ということがわかった。ただペースが女性の割に速く追いつくので体力を使ってしまった。

「すいません。これ違いますか」

俺は拾ったタオルを見せた。

「それ私のです。拾って下さりありがとうございます」

彼女はそう言い、タオルを受け取った。

俺は目的も達成したし、学校もある為、家に帰ろうとした時

「出来れば、お礼できるものがあれば良いんですが……」

そう彼女が言ったので

「気にしないでください」

そういい走って、家へ帰って行った。


『天は自ら行動しない者に救いの手をさしのべない。』シェイクスピアの言葉だったか。

こんな朝早くからジョギングをしてる彼女はすごいと思ってしまった。


いつも通りの授業を受けているはずが朝のことがあった為、普段より疲れて入った昼休み。

飲み物を買おうと思い自動販売機の前に立ち、財布からお金を取り出そうとしていると、横から声をかけられた。

「あの、今朝のタオル拾ってくれたひとですよね」

そう言われて声をかけられた方を見ると、今朝会った女性がいた。

「やっぱり……。お礼したかったんですけどあの時は何もなかったので」

そういい彼女は飲み物でお礼になるかわかりませんがといい、断るのも悪いと思い、買おうとしていた飲み物を買って貰った。

「敬語じゃ無くていいですよ。僕一年生なので」


「同い年かぁ。私の名前は西条日桜里。今朝は本当にありがとう」


「同い年だったのか。俺の名前は神山祐希。よろしくな」


「神山くんはいつもあの時間に走ったりするの?」


「今朝はたまたま目が早く覚めたから。そっちは毎日やってるの?」


「そうだね。私バスケ部なんだけど、やっぱり体力使うから」


「女子バスケ部って遅くまでやってたような」


「それも知られてるのかぁ。うちのバスケ部の先輩が強いからね。負けないように毎日やってるんだよ」


「西条は努力家なんだな。応援してるよ」


「ありがとう。期待に応えられるようにするね」

そのまま話して教室へ帰っていると彼女のクラスの前に着いたようだ。

「本当にありがとうね」

そういい彼女はC組へ入っていった。彼女を待っていたグループにいつも図書室で会う女性――花村唯の姿もあった。


そして、特に変わったことも無く放課後になり、いつも通り図書室に向かった。


田中先生に挨拶して奥に向かうと既に先客がいた。


「あれ遅かったわね」

 

そう言いこちらを見てくる女子――花村唯がいた。

 

「ホームルームが長引いていたんだよ。スポーツ大会が近いのもあるから」


「そういえば来月末だったかしら」


「もう5月になるから早めに決めとくといいみたいな感じだな。そんなことより感想言い合うんじゃなかったのか」


「そうねだけど……」


と言い花村は周りを見た。今自分が図書室にいることを思い出したんだろう。


「気にしないでいいって俺か言うのも可笑しいけど、ほんとにここには人が滅多に来ないから多分問題ないと思うぞ」


「五月蝿く騒がないなら話すのは大丈夫よ」


と田中先生が言ってくれた。


「これで公認になったし問題ないだろ」


「そうね。ならここの場面の心情描写なんだけど……」


「あぁ男の俺から意見させてもらうと意外とこういうことあったりするぞ。作者が男の人だから共感できるところが多かった」


「そうなのね。なら……」


と話していたら気づいたら下校時刻近くになっていた。


「もうこんな時間なんだな。次は推理小説とかで話したいな」


「私は普段知らない視点からの会話が出来て楽しかったわよ」


といい花村はこちらを見て笑った。ドキッとしてしまった。恋愛小説の感想を言い合ったからそういう仕草で主人公が恋に落ちるのも解ると思った。


「なら今度からお互いで違う小説をおすすめしあって感想言うか」


「いいわね。来週までに考えておくわ」


「もう金曜日だしな。俺も考えておく」


「期待してるわよ。それじゃあまた来週図書室で」


「あぁまたな」


 と言って花村と別れて帰宅した。

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春の椛 木山翼 @siomac

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