第51話


 決勝戦のセンターコートにて二校の選手達がにらみ合っていた。


「よう大崎、覚悟は決めてきたか?莉愛は頂くぞ」


「はっ!ふざけるな。莉愛は渡さないと言っただろう」


「くくくッ……それで、あいつはどうした?まだ来ていないようだが?」


「莉愛ならアップが終わる前には来るはずだ」


 両校がアップを始めていると、一人の少女がコートに向かって歩いてきた。


「おい、あれ……」


「うっわ!美人」


「キャーーッ!莉愛様!」


「女王ーー!」


鳳凰の観客席からはどよめきが、狼栄の観客席からは黄色い悲鳴が聞こえてきた。莉愛は長い黒髪をなびかせ、颯爽と歩いてやって来た。背筋を伸ばし自信たっぷりに歩く姿に皆の目が奪われる。そこにいるだけで空気が変わる、圧倒的な存在感に皆の胸が震える。そしてそれを目にした豪が高鳴る自分の胸を鷲づかみにしていた。


「やっべえな。マジかよ……本気で俺のモノにしてえ」


 *


「大地、みんな最後のレシーブ練習始めるよ」


「わかった」


 大地達は莉愛に促され、レシーブ練習を開始した。


「いくよ」


 莉愛は膝を使い、高くジャンプするとサーブを打ち込んだ。


「ズドンッ」


 連続して響くボールの重低音。


 女神降臨のように静止して見える美しいジャンプの後、凄まじいサーブがその女神の手から放たれる。そして、ストンと床に舞い降りた女神は美しく笑う。その姿に体育館にいる人々からどよめきと、ほうっと息を吐く音が聞こえてくる。


「美しい……」


「すっげーー」


「これだよ、これ。俺、生で見たかったんだ。今日来て良かった」


「莉愛様、素敵ーー!」


 *


 東京体育館にアナウンスが響き渡った。


「全国バレーボール高等学校選手権大会決勝戦を始めたいと思います。始めに両校のメンバー紹介です。前年度優勝校、山形県立鳳凰学園。1番キャプテン高田浩二(たかだこうじ)、3番島野達樹(しまのたつき)、4番竹田豪(たけだごう)、7番八屋颯太(はちやそうた)、11番遠野修也(とおのしゅうや)、13番野田浩介(のだこうすけ)」


「続きまして対するは、前年度ベスト4狼栄大学高等学校。1番キャプテン赤尾正隆、4番大崎大地、9番安齋学、11番大澤和彦、13番尾形壮、15番熊川貴志」


本日のスタンディングプレイヤーの名前が呼ばれ、会場にいる人々に挨拶をしながらコートに並んでいく。相手チームと挨拶を交わすとコーチと話をするために戻ってきた。


「泣いても笑っても、これが最後の試合だ。全力でいけ」


「「「うっす!!」」」


 金井コーチの話が終わると皆が莉愛に視線を向けてきた。莉愛はジャージを脱ぎマントのように肩に賭けると、腕を組み顎をクイッと上げ妖艶に笑って見せる。化粧を施し、いつもより妖艶に見える莉愛の姿に、皆の喉がゴクリと鳴る。


「さあ、跪きなさ」


 莉愛に従い選手達が片膝を付き頭を垂れる。


「決勝戦、最後の戦いです。勝利は目の前、つかみ取りなさい。あまた達なら出来るでしょう。そして私に勝利を捧げなさい!」


「「「仰せの通りに!」」」





















































































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