第40話
大地とデートした次の日、莉愛はジャージに着替えると、犬崎高等学校の正門を出た。狼栄大学高等学校まではジョギングで20分ほどで着くため、莉愛は昨日のデートを思い出しながら機嫌良く、リズミカルに走って行く。
昨日はホント、楽しかったな。
あんなに笑ったのも久しぶりだった。
緩む頬を両手で押さえながら走っていると、あっという間に狼栄が見えてきた。しかし莉愛の足は狼栄の門をくぐること無く、その場で止る。門の前で抱き合う男女を見にしてしまったから……それは、大地と誰?
莉愛は意味が分からずパニックを起こしていた。
大地は女の子に抱きつかれているというのに、嫌がる様子も無く、微笑みながら愛おしそうに頭を撫でている。
うそっ……どうして……。
どうして、そんな顔……。
大地の優しく微笑む顔に、胸がズキンッと痛んだ。
どういうこと……。
意味がわからない。
莉愛は嫌な音を立てる心臓を右手で押さえつけるようにして、その痛みに耐える。
莉愛の視線の先では微笑み合う二人の顔が……。
あの子どこかで……。
少女のはにかむ笑顔を見つめながら、記憶を探っていく。
そして思い出す。
あの子は確かショッピングモールでこのはちゃんを助けていた女の子だ。見つめ合う二人を見ながら、莉愛は昨日のことを思いでしていた。優しい子だった。オロオロとしながらも、このはちゃんに話しかけていた。
そっか……。
莉愛は勝手に納得していた。
こんな男のような見た目の私より、可愛い女の子の方が良いに決まっている。
ズキズキと痛む胸を押さえながら視線を逸らし、莉愛は物陰に隠れた。
昨日はあんなに楽しかったのに、どうして他の子にそんな顔をするの?
大地いやだよ。
脳は納得しようと忙しなく動こうとしているのに対し、心が拒絶する。
大地と離れたくない。
この人を手放したくないと。
莉愛の瞳から大きな涙の粒がこぼれ落ちる。
こんなに……こんなにも好きになっちゃったのに……。
きっと私は振られてしまうのだろう。
大地……。
*
あれから三日が過ぎていた。莉愛は大地から別れの言葉をいつ言われるのかと、ビクビクと怯える日々が続いていた。夜も眠れず、莉愛は少しずつ衰弱していった。衰弱していく莉愛を心配して大地が声を掛けてくるが、莉愛はその場から逃げ出してしまう。
このままではダメなのに……。
大地から告げられるだろう別れの言葉を聞きたくなくて、大地を遠ざけてしまう莉愛。そんな莉愛の様子に大地は困惑していた。
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