第31話


 白熱した春高予選群馬県大会は狼栄大学高等学校の優勝で幕を閉じた。そして現在、表彰式が執り行われようとしているのだが、莉愛は大地の腕の中にいた。


「あの……大地、そろそろ離してくれると嬉しいのだけど」


「ん?……嫌だ」


 嫌だって……。


 まるで子供のように駄々をこねる大地に、回りは呆れている様子ではあるが、本日の功労者である大地に誰も何も言わない。


 ああ、もう……誰でも良いから大地に注意して!莉愛がそんな事を思っているうちに、表彰式が始まった。


 群馬体育館に響き渡るアナウンス。


「それでは春高予選群馬県大会表彰式を始めたいと思います。二校の選手は並んで下さい」


 二校の選手達が群馬体育館に整列した。そして優勝校がアナウンスされる。


「第一位、狼栄大学高等学校。おめでとうございます」


 前に出た赤尾が表彰状を受け取り頭を下げると、歓声が上がった。狼栄大学高等学校の選手の首に優勝メダルが掛けられていく。



 そして……。



「第二位、犬崎高等学校。おめでとうございます」


 拓真が前に出て表彰状を受け取り頭を下げ、こちらに振り返ると一瞬の静寂の後、先ほどの歓声よりも大きな歓声が沸き起こった。


「犬崎すごかったぞー!」


「最高の試合だった!」


「感動した!ありがとう」


「来年は頑張れよ。応援してるぞ」


 その優しい声に言葉に犬崎のみんなは呆気に取られながら、沢山の人々から送られた言葉に胸を熱くさせた。


 ああ……こんなにも沢山の人達が応援してくれていたんだ。


 応援してくれた人々に向かって私達は深く頭を下げ、大きな声でお礼の言葉を述べた。


「「「「「「応援ありがとうございました」」」」」」


 沢山の拍手の中、犬崎高等学校のみんなは手の甲で目を押さえ、涙を流した。その涙を流す姿に、更に大きな拍手が体育館に鳴り響く。高校生達のやりきった青春の涙に、体育館にいた人々は拍手をしながらもらい泣きをし、体育館が湧いた。


 莉愛もまた、涙しながら皆に拍手を贈った。


 みんな、お疲れ様。


 準優勝おめでとう。


 そして大地、優勝おめでとう。



 割れんばかりの拍手の中、春高予選群馬県大会は幕を閉じたのだった。
















































  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る