第23話
「あっ、王者狼栄のお出ましだぜ」
「うっわー。すっげー迫力。気合い入ってるな」
王者狼栄の風格は凄まじく、周りにいる者を圧倒した。側にいるだけで肌がヒリつくような空気が漂う。
「おい、向こうから対戦相手のお出ましだぜ」
「マジか、鉢合わせ」
狼栄を前にして、莉愛は無視することも出来ず、狼栄の選手達の前へとやって来た。緊迫感が漂う中、狼栄大学高等学校と犬崎高等学校がエントランスにてにらみ合いとなった。
狼栄の赤尾も今日ばかりは、いつものヘラヘラとした表情を引き締めている。緊迫した状況の中、赤尾が口を開いた。
「良くここまで来たね。正直犬崎がここまで来るとは、予想していなかったよ」
赤尾の言葉に拓真は一歩前に出ると、赤尾や狼栄のメンバー達から放たれる威圧感に負けないよう、目を逸らさずに答えた。
「それはどうも。こっちは今、勢いかありますから、このまま優勝頂きますよ」
それを聞いた大地が一歩前に出た。
「それはどうかな?勢いがあるのはこっちも変わらない。優勝して莉愛……女王を奪うから覚悟しろ」
大地の言葉と熱い視線に、莉愛の体が熱くなった。
「そうはいくか。女王は俺らが守り抜く!」
一触即発の緊張状態に当人達より、回りで見守っていた人々の背から冷たい汗が流れ落ちたのだった。
*
「すっげー!センターコートだ!」
「テレビ局来てるよ。カメラいっぱい。俺らテレビに映っちゃうの?」
興奮気味の一年生コンビがキョロキョロと回りを見渡している。
「あっちに、ゆるキャラのぐんちゃんいる。俺けっこう好きなんだよね。下敷きぐんちゃんなんだ。あっトントンちゃんも発見」
「トントンちゃんと言ったら豚肉だな。群馬の豚肉はうまい」
瑞樹も興奮が隠しきれない様子で、ソワソワしていた。そんな瑞樹の隣で、珍しく祐樹も眼鏡位置を直しながら瑞樹の話に乗っている。
そんな緊張感の無い部員達を引き締めるべく、拓真が声を掛けた。
「お前ら、回りの雰囲気に呑まれるなよ。姫川が来るまで、いつものアップメニュー始めるぞ」
「「「うっす!!」」」
*
その頃莉愛は、理花と美奈に捕まっていた。
「理花、美奈試合始まっちゃうよー」
「大丈夫だって。始まる前に連絡来るから、ほら、莉愛ジッとして」
「今日は莉愛にとって、晴れ舞台なんだから、これぐらいはしなくちゃ」
そう言いながら二人が莉愛にメイクと、ヘアアレンジを施していく。
「はい、出来上がり。今日はナチュラルに見える、がっつりメイクにしたからね」
「髪もユルフワに巻いて後ろはそのままに、サイドはまとめてハーフアップにしてみたよ。清楚なクイーン風って感じかな」
二人にそう言われ鏡を受け取った莉愛は、一瞬言葉を失った。
「……これ、誰?」
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