第7話


「そう言えば、みんなの目標を聞いてなかったけど、みんなの目標って何?」


 部員全員がキョトンとした顔で、莉愛の方を見つめてきた。


「うーん?」


「やっぱり、目指せ春高バレーじゃん?」


「まあ、そうだよなー」


 何だろう、この感じ……。


 「はぁーー」っと、莉愛は大きなため息を付いた。


「みんな、ちょっと聞いて!そんな曖昧な目標じゃ気合も入らないよ。あと、大会で使う横断幕探してみたらボロボロで使えそうにないの。今までは『精神一到』だったんだけど……今の私達には合っていないような気がするのよね。どうせ作り直すなら変える?」


「んー?」


「どうする?」


「あー横断幕?」


 首を捻る部員達。


 狼栄との練習試合が終わり、自信が付いたのは良いが、最近の部員達はだらだらと練習をしているだけのように見える。このままではいけない、気を引き締めなければ……。


 莉愛は持っていたボールを、体育館の床に叩きつけた。するとボールは天井へと高く上がり、ゆっくりと落ちてくる。時間にして数秒の出来事だったが、部員達はボールをゆっくりと目で追った。天井からゆっくりと落ちてきたボールは、莉愛の手の中へと吸い込まれるように収まった。


「ねぇ、みんな分かってる?私はコーチとして教えるのが好きなわけでは無いんだよ。私は勝利という言葉が好きで、勝利が欲しいの。私が欲しいものが分かった?それなら、私に勝利を捧げなさい」


 莉愛の言葉に、部員達の背筋がゾクゾクと震えた。


 「姫川に勝利を捧げるぞ!!」


 拓真のかけ声に、部員達全員の声が重なった。



「「「「「おーー!!」」」」」



 *



 それから決まった横断幕の言葉は『捧げよ』だった。 


「ねぇ……これ本当に大丈夫かな?」


「いいんじゃん。みんなこれで納得してるんだしさ」


 サラッと言ってきたのは猫目の瑞樹だ。


「そうかな?どこぞのアニメみたい……」


「姫川それ以上言うな……それは俺達も思っていたところだ」


 拓真が莉愛の言おうとしていた最後の言葉を遮ってきた。


「『捧げよ』いいじゃん。格好いいよな?」


 瑞樹がにゃははッと笑うと、流星も笑いながらもっともらしいことを言ってきた。


「全てを捧げてバレーに打ち込む?みたいな感じで取られるんじゃないかな?」


 それなら良いけど……。


 ちょっと心配になってしまう。


 心配する莉愛をよそに、拓真が思い出し笑いをしていた。


「それにしても、あの時の姫川カッコ良かったよな。『私に勝利を捧げなさい』ってさ。女王様みたいでさ」


「あっ、分かる。俺も思った」


「俺も、俺も」


 拓真と一年生コンビが嬉しそうに同意している。


 じょっ……女王様って何よ。みんなの冷やかしとも取れる言葉に、莉愛は恥ずかしくなって顔を背けた。


「だって、みんながだらけているのが悪いんだよ。ほら、もう練習開始!」


「「「うっす!」」」



















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