第2話

翌朝。


「湊様。学園まで送りいたします。」

「えっとな。無理しなくてもいいぞ?」


高層マンションでも嫌になったのに、マンションの目の前にはリムジン…平凡な生活がしたいのに。させてくんねぇよ。


「お乗りください。無理などしておりませんので。」

「そ、そうか」


メイドの北条さんがドアを開けてくれた。俺は大人しくリムジンに乗り込んだ。


「では、出発させていただきます。」


あっ、北条さんも着いてくるのね。

車内では、会話がなく気まずい雰囲気が流れていた。まぁ、俺が普段喋ってないから苦手なのもあるし、人を信用してないのが原因なんだけど。


「……」

「……」


本当気まずい。俺がそう言って窓の外を見ていたところ、北条さんが口を開いた


「湊様、本日は申し訳ありません。」

「ん?急にどうした…?」


深々と礼をしながら申し訳なさそうに話してくる。


「私が不甲斐ないばかりに、旦那様を説得して連れてくることが出来ず、湊様お一人で行くことになってしまいました。」

「……」


北条さん、責任感が強いな…

メイドだから腰が低いんだろうけど、逆にこちらも困る。


「北条さん顔をあげて?」

「…」

「北条さんのすぐ責任を自分に押し付けて謝る癖が俺は嫌いです。別に俺はひとりでも構いませんので。どっちみち俺は学校で、一人は慣れっこですので」


笑いながら冗談ぽく言う。


「で、ですが…」

「なら北条さんが見にきてよ。そしたらひとりじゃなくなるじゃない?」


北条さんは腕を組み沈黙が続いた。少ししたら車が止まった。多分学校に着いたのだろう…


「じゃ。行ってくる」

「いってらっしゃいませ。湊様。少し時間がかかってしまいますが、必ず行きますので」

「無理しなくていいぞ」


多分冗談だろって思いながら歩いていく。北条さんの反応に少し気になったが振り向かず歩いていく。



「変なご主人様です。」


ーーーーー


なんかめっちゃ視線を感じる。まぁ毎回だから流石に慣れたな…


「おい。あれ」

「あの大手企業の息子…」


同じ新入生の声が耳に入る。

やっぱりか…金ばかり見て、俺を見てくれない。だから嫌なんだ。


「あいつ顔がいいからって調子乗りやがって…どうせヤリチンだろ」

「しかも金を使って彼氏持ちやったらしいぜ」

「彼女も何人もいるってのも聞いたよ?」


もう、嘘の話がどんどん出てくる。

勝手に妄想して押し付けてきているが、これじゃ友達もできそうにないな…


しかし、これ入学式も始まってないのに詰みじゃない?


「なんか、頭抱え始めたぞ」

「なんか、怖い…行こう」


俺の平凡な学校生活さよなら…


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平凡な僕 こはく @powa__n

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