第25話
「え、友達出来ちゃったの?」
放課後の部活、事の顛末を一つ学年が上の部長に話す。幸も俺たちとは違うクラスのため意外そうな表情で聞き入っていた。
「もうちょっと苦戦してくれたらよかったのに。」
「なんてこと言うんですか部長。」
「いやだって九条院は私らのことを陰キャ扱いした重罪人だからね。もっと苦しめばよかったんだよ。」
「性悪過ぎか。」
まるで先輩の威厳もクソもない発言だった。この人会うたびに自分の株落としにくるの何なんだろう。
「でもこれでサンタ研はある意味では人助けをしたことになる。これで部員が増えてゆくゆくは…。」
そう言って部長が不敵な笑みを浮かべる。どんだけこの人はサンタ研をデカくしたいんだろう。絶対無理だけど。
「でも今回私たちは何もやってないわよね。話を聞く限り最終的には九条院さんが自分の力でどうにかしたってことだし。」
幸の言うことはもっともだ。これは九条院が自らの努力でなし得た結果。相談を聞いただけのサンタ研が我が物顔する権利はない。
「いやいや、私たちだって色々案を出したわけだし、それが良い意味で九条院の参考になったんじゃないか。きっとそうに違いない!」
「部長は案なんて出してないですよね?」
「出したでしょ、ほらラブコメの波動を感じる作戦。」
「あれが案?部長、気は確かですか?」
ただ俺がパシられてコンビニ往復し、食パンを買いに行っただけだろうが。ちなみに食パンはノエルが美味しくいただきました。
「でも九条院がこれで目標達成となると少し寂しくはなるな。何だかんだ面白い奴だった。」
部長がサンタ帽を編みながらそう呟く。
「確かに、面白い奴でしたね。」
間違いない。友達が欲しくてそれをサンタクロースもとい、俺たちに頼る人間などそうそういてたまるか。九条院はそういう意味でユニークな人間だったに違いない。
「もう既に、九条院用のサンタコスチューム作ってるのになぁ。」
「早とちり過ぎるでしょ。」
さっきからサンタ帽編んでたのはそういう訳か。俺とノエルの分も勝手に作って渡してきたし、謎のこだわりすぎる。
「じゃあ何でこんなのまだ作ってるんですか?」
「もう作っちゃったし、もしあれなら名執にあげるよ。嬉しいだろ?私自家製のサンタコスチューム。」
「もう一組持ってるし、二つ目全然嬉しくないですよ。」
チラリと横を見ると、幸が欲しそうな視線を俺にぶつけてくる。何で俺を見るんだよ。
「俺はいらないんで幸にでもあげたらどうですか?」
「そうか?じゃあユキユキにプレゼントしよう。」
その言葉を聞いた途端、幸の顔があからさまに明るくなる。
「名執くんが要らないなら仕方ないですね。私がいただきます。」
はいはいこれでいいんでしょう。だんだん幸の扱いにも慣れてきた。
「遅くなりましたー。」
元気な声と共に部室のドアが勢いよく開いてノエルが姿を現した。
「ほんとに遅かったな。何やってたんだ。」
「ふふん、今日は皆さんに紹介したい方がいましてっ。」
得意げな表情のノエルは後ろにいるであろう人物に部室に入るように促す。
「失礼するわ。」
ノエルに促されて入ってきた少女は、明るい髪色に時代遅れなツインテール。そして生まれ持ったものだろうか、やや高飛車な雰囲気を纏って堂々と佇んでいる。昨日まで何回も見てきたその顔はより自信に満ち溢れていて、以前までの焦りなどももう感じない。
「よ、九条院。」
どこか嬉しかったのか、俺は彼女の姿が見えるなりそう声をかけていた。
今年のクリスマスプレゼントはサンタクロースでした。 雲類鷲(うるわし) @uru-washi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。今年のクリスマスプレゼントはサンタクロースでした。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます