師弟関係あれこれ 🕵️

上月くるを

師弟関係あれこれ 🕵️





 そういえば、あの方、どうなさっているかしら。

折口信夫おりくちしのぶ最後の弟子」が看板だった、あの……。




      👩‍🔬




 冷えこんだ朝のカフェで、薄手の紺のダウンコートを着たまま珈琲であたたまり、『武蔵野樹林 VOL.5 2020秋』収載の赤坂憲雄さんの評論「角川源義と武蔵野」をひろげるヨウコさんの脳裡を、誇り高いメガネの横顔が通り過ぎて行きました。


 当然ながら國學院大學の出身で、某市初の女性博物館長をつとめたあと図書館長に転じ、われわれ民間業者には頭ひとつ下げていただけなかった……自身で名乗らないときは部下が心得ていて「折口信夫最後の弟子」と紹介するのが恒例だった。(笑)




      🏫




 極めてたくさんの示唆に富んでいるので、よく読まないと(よく読んでも(笑))分からない、謎めいた、ミステリアスと言ってよさそうな記述がいくつかあります。



 〇柳田國男やなぎたくにおさんが國學院大學で行った講演での発言:(弟子・折口信夫さんの古代研究は)糸のきれた風船みたいで、あれを民俗学と称するのは迷惑なかぎりです。


 〇その折口信夫さんが亡くなる前と仮定される発言:日本民俗学の大成には、柳田先生の恋愛を抜いては語れない。それを書けるのはわたしだけだ。 ((((oノ´3`)ノ

 


 ――はあ?!



 どういうこと? 詳しい事情を承知しない胸に、たくさんの疑問符が浮かびます。

 柳宗悦さんを含めてかどうか知らないけど、民俗学の世界も大変なんだね~。💦


 でも、次の武蔵野文学賞に向けての課題が増えたことは好ましいし(今年は十編の応募で終了)未知への旅はいつだってワクワクするので、今朝の収穫に感謝せねば。




      🐔




 ちなみに、先年、ヨウコさんは仕事で、世田谷の柳田邸を訪ねたことがあります。

 むろん代替わりしていて、後継の為正さんが成城の邸内をご案内くださいました。


 近所に歴史上の有名人が住んでいたというだけの偶然を自費出版した猛者の真似はできませんが(笑)電車を乗り継ぎ、自分の目で目撃したフィールドは忘れません。


 さらに、仕事で人に会うとき、いっさいの先入観を持たないようにして来ましたし、フリーになった現在も同じですが、ときどき余計なお節介の方がいて困ります。


「あの人物にはこんな面がある」なにを根拠としているのか分からない諫言など聞きたくもないですし、無責任な噂をペラペラしゃべる口への軽蔑を深めるだけなので。




      🌏




 その夜、NHK『映像の世紀――バタフライエフェクト』で、直接の師弟関係ではないものの間接的に強い影響力が伝播したふたりの偉人のドキュメントを観ました。


 すなわち「宇宙船地球号」の提唱で争いを諫めた思想家バックミンスター・フラーさん&若者に「Stay hungry, stay foolish」を呼びかけたスティーブ・ジョブズさん。


 古い時代の日本民俗学の狭い世界と比較するのもそれこそ愚かな (foolish)ことですが、あらためて親炙しんしゃと私淑の差について考えを巡らせてみたヨウコさんです。




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