第8話 もくひょう!編

「わたし達ってさ、なんで歩いてるんだっけ?」

「たんけん!」

「それだけだっけ・・・?」

「うん」

「私思ったんだけどさ、このシマを出て、人がいるようなまち?とかに行けばお腹すかずにおいしいご飯とかいっぱい食べれるんじゃないかな」

りーはさっきまでの「おなかすいた」って感じの顔から「あたまの上に電球が浮いてそう」な顔になった。

「そーじゃん!!!」

「あくまで仮説だし、どうやって行くかも分からないんだけどね」

りーの顔が「おなかすいた」の顔に戻った

「そーじゃん・・・」

「・・・ごはん食べる?」

「たべる!!」

今日の昼ごはんは長細くて四角い形の、ところどころに穴が空いた「高カロリー戦闘食」にした。

緑の飛行機の中で見つけたもので、りーがずっと食べたがっていた。

味は甘くておいしいけど、水がなければ食べれないほど乾いた食べ物だった。

「おいひぃ!」

「水いる?」

「ほひぃ!」

りーはスキットルの水をぐいぐい飲んだ。

このシマはやはりおかしい。

森の中に周りは緑なのに一部だけ枯葉が落ちている場所があったり、たまにスキットルの水が増えていたり、来た道を振り向いてみたらなかったはずの岩があったり。

私の「常識」を完全に無視するような感じがする。

りーはなぜかそのおかしさを「常識」として見ている

りーがそういうふうに振る舞うと私の常識ってなんなんだろうと思ってしまう。

「あおいちゃんはここがシマだとおもう?」

「私は無人島かなって思ってるよ」

「じゃあさ!うみわたってさ、むこうにいこうよ!」

「さっきその方法がないから無理って言ったじゃん」

「ふねつくる!」

「そんな都合よく行かないよ・・・だいいいちどれぐらい離れているかもわからないのに」

「うー・・・」

りーの楽しそうな感じを見て、私の中には二つの思いが浮かび上がってきていた。

一つは「本当に過去を知りたいのか」

もう一つは・・・「本当にこのシマの外に出て、このシマの生活をやめたいのか」

思ってみればこのシマで生きるのは楽しくないわけではなかった。

美味しくないけどご飯は食べれるし、一緒に笑ったりできる「友達りー」もいる。

よくおかしなことが起きて飽きることはないし、景色は綺麗だし。

もし、私が思う「常識」だらけのシマにわたし達が投げ出されていたら、美味しくないご飯どころかご飯を全く食べられずに死んでいたかもしれない。

りーと喧嘩になって、一人で寂しく森を迷っていたかもしれない。

ずーっと続く、変わり映えのない森に飽きて、嫌になっていたかもしれない。

私はあまりよくわからない、常識から大きく外れるような出来事やモノがあまり好きではなかった。

でもそれは私がいつまでもふつうにこだわっていたからで、受け入れてみればどうってことはなかった。

「ねえあおいちゃん、あそこになんかあるよ」

りーがまた何かおかしなものを見つけた。

変な黄色と黒のマークが描かれているちょっといせきに似た感じの白い箱だった。

「近づいてみようか」

このシマはよくわからない。落ちているものが安全なのか危険なのかも

でもそれがなんだか面白かった。

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シマ流しになったわたしたち つきみなも @nekodaruma0218

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