時計は過去を見るか現在を見るのか?

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第1話

それから暫くして、俺が住んでいる城の部屋の窓から外に太陽が出てきたのが分かったので、俺は窓を開ける事にした。

開けると、そこには草原が広がっており、奥に小さな村が見えた。

その時、風が吹いてきたと同時に草の匂いがしてきた。

そして、風に乗って美味しそうな匂いもしてくる気がした。

俺はその匂いで朝食を作った方がいいと思いキッチンへ向かった。

キッチンへ入ると、そこは見た事のない料理が沢山あった。

俺は取り敢えず目に付いた料理を皿に乗せてテーブルに運んだ。

そして、運んでいる最中に気付いたのだがテーブルの上はいつも使っているものより綺麗になっていたのだ。

そこで、ふとある事を思った。

それはあの時計だった。

さっき確認した時は何も無かったはずなのだが......

もしかしたらあれは夢ではなく現実かもしれない。

そう思った瞬間、怖くなってきた。

それと同時に好奇心が湧いてくる。

俺は一度自分の部屋に戻った後、机にあったナイフを持ち出した。

そうして俺は包丁を手に取り、その包丁を壁に刺す事に決めた。

そうして俺はそのナイフを持ったままリビングに戻り、壁に向かって思いっきり突き立てることに決めた。

俺は勢いよく腕を振り下ろすと、突き刺さっていた包丁がそのまま壁に刺さりそうになった時、今度は急に体が引っ張られたかのように後ろへと引きずられ始めた。

突然の出来事に驚く暇もなく俺の体は何処かへと吸い込まれていったのであった。

「はぁ~......」

俺は今、深い溜息を吐いた。

何故なら、目の前には誰もおらずただ広いだけの空間があるだけなのだ。

そんな場所で一人っきりになっているのだから溜息の一つでも吐きたくはなるだろう。

「......何でこんな場所にいるんだ?」

俺は改めて自分のいる場所について考えることにした。

まず、ここはどう考えても部屋ではないことは確かだ。

だとしたら、何故自分はここにいるのだろうか?

確か、先程まで俺は部屋で掃除をしていたはずだ。

だが、気がついたら何故かこの場所にいた。

これが意味する事とはなんだ?

もしかしてこれは所謂ワープと言うやつなのか?

そんな事を考えていると、いつの間にか俺の足下に何やら文字が書かれている事に気づいた。

「『貴方がここに呼んだのは他でもない貴方にとある世界に行ってもらいたいからです』......?」

この文章を読んでいる最中にもずっと同じ内容の内容が書かれている気がするし、読む度にどんどん理解出来なくなってきたぞ......!?

もう訳が分からない!

俺は一旦深呼吸をして気持ちを落ち着かせる事にした。

そうしていると段々気持ちが落ち着いて来たのでもう一度文字を読む事にした。

俺が読んでいる間に書いてある内容はこうだ。

『貴方は先程、自分が住む場所を自分で決めようとした時にこの部屋へ来る事になりました。これに関しては私が指定した訳ではないため謝る気はありません』

「......謝ってくれるのか」

『貴方の今の服装は学生服です。なので、今から制服を用意させます。制服が出来上がるまでは少し時間がかかるでしょうからその間はその服を着て待っていてください。 ちなみにここでの事はこの部屋にいる間の記憶は全て消させていただきます』「っ!?」

それを読んだ途端俺は恐怖で全身が震え上がった。

まさか本当に記憶が消えるなんて思ってもなかったからだ。

記憶を消すってどういう事だよ......?

俺としては怖いのだがそれよりも先に確認しないといけないことがあった。

それは『お前は誰だ?』というものだ。

『私は神様みたいなものだと思って下さい。名前は特にありませんし覚える必要もないですよ』

「そっか」

『これから貴方の身体能力をかなり高めておきましょうか?

その方が早く済みますからね』

「......」

『どうしますか? 受けますか? それとも拒否りますか?』

「その二つの選択肢しかないのかよ」

結局俺は二つしか選択出来ないことに呆れながら拒否することにした。

正直言えばいきなりそんな事を言われても困るんだがな。

まぁいいか。どうせ断れば何もしてくれないだろうし受けるだけ受けておこう。

「一応受けたらどうなるのかを聞いても良いか?」

『簡単に説明しますね。もし断った場合は今までの記憶を全てリセットして最初から始めます。その場合は元の世界へ戻ることが出来るようになっていますのでご安心を』

「それ断るメリットあるのか?」

『勿論ありますよ~。

まず一つ目としてこの世界に来てしまった理由を知る事が出来ますね。

次に二つ目はお金に関してですね。お金は持っててもあまり意味がありませんから』

「なるほどな......」

確かに言われてみればその通りかもしれないな。

金を持ってたとしても価値の無いものを持っていたとしても意味がない。

それにいくらあったところで使う場所がないんじゃ意味が無いしな。

よし。それなら俺は喜んで記憶を取り戻そうじゃないか。

「じゃあ頼むわ」

『分かりました』

「そう言えば俺の他にも同じ状況になってるやつとかいるのか?」

『いますよ。貴方以外は全員揃っていますので安心してください』

「良かったー」

『ですがまだ誰もここに来ていないので誰なのかは分からないですけど......』

俺は心の中で胸をなじませた。

俺だけじゃなかった事に安心したのだ。

だがその後にとんでもない事が聞こえた。

『あともう一つ条件があるのですがそれがクリアできたら貴方も記憶を取り戻すことが出来ますよ』

「マジで!? どんなんだ!」

『今から貴方が向かう異世界に存在するダンジョンをクリアしてください。そうすれば私の加護を受けられますし、お金を渡すことも出来るようになります。ただその前にクリアして欲しい試練があるんですけどね......』

『えっとだな......。それは一体なんだ?』

『魔王討伐です』

「......はい?」

『だから世界を救うために頑張ってください』

「いやいや! なんで俺なんだよ!?」

突然言われた言葉に混乱したがすぐに落ち着いた。

落ち着け......落ち着くんだ俺......!

『え、だって貴方は魔王の生まれ変わりなんでしょう?』

その言葉に再び心臓が大きく脈を打った。

そしてそれと同時に冷や汗が出てきた。

「(どうしてそれを知ってるんだよ......)」

『分かるに決まってるじゃないですか~。私は女神ですよ?』

「いや、そういう問題じゃ無くてだな。

俺が言ってるのは何で魔王と同じ能力を持っているのかって事だ」

『その事ですか? その答えは簡単ですよ。転生特典だからです』

転生特典......?

「それってつまり特典って奴か?」

『そうですよー。と言っても特典は一人一個しか与えられてないので気をつけてくださいねー』

マジかー。でも貰えるのなら貰っといた方がいいよな......。

ん?待てよ。それなら俺にも一つだけ与えられるんじゃないか?

例えば聖剣エクスカリバーみたいな。

『出来ますよ。と言うか今貴方の脳内に直接語りかけてるんですけどねぇ~。それでどうしますか?』

ふむ......だったらアレでいいかな。

『何々?』

「それじゃあ一つ目として俺を超絶イケメンにしてくれ」

『はいはい』

「二つ目と三つ目は俺が使える最強魔法を教えてくれ。

あ、因みに四つ目はないからな」

『いいですよ~。では最後に私の事を好きにしてください』

『......はっ?』

いきなりの発言に思わず呆けた声を出しちまった。

「好きにしろってどういうことだ......?」

『言葉通りの意味です。私を楽しませてくれたらなんでもしてあげますよ♪』

『そうか。じゃあ遠慮なくそうさせてもらおうかな!』

『そうですか~。なら早速始めてください♪』

「えっ......」

『それでは始めますね。まずは名前から決めてもらっていいですか?』

そう言われて頭の中に浮かんできた名前をそのまま声に出した。

「そうだな......よし! 俺の名前は『ハジメ』だ! んでこれからよろしく頼むぜ!!」

『いい名前ですね~。これからもよろしくお願いしますね、『南雲ハジメさん』(・・・・・・・・・・・・・)。

それともう一つ頼みたい事がありますけどいいですかぁ~♪』

『なんですかぁ?』

なんだか妙にテンションが高い気がするんだがどうしたんだ?

「あー。それはどんな願いごとなんだ?」

『それはですね──────

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