異世界転生した元凄腕ハッカーが、最強の師匠達に死ぬほど修行させられて最強になって世界を変えたい話。

@kouchousensei

第1話どうやら彼等の逆鱗に触れてしまったようです?

真っ暗な部屋の中で、カタカタとキーボードを叩く音が絶え間なく流れている。

五枚のモニターの明かりに不気味に照らされているのが俺、光守 英史(コウガミ エイジ)だ。

俺はとても忙しい、インターネットを使って世界中のあらゆる情報を収集している。

自作の情報収集・分析ツールを常時24時間稼働させ人の動き、政治、経済、宗教、軍事、噂まで多義にわたり網羅している。

多分、世界で一番情報収集能力に長けているのではないかという自負がある。

各国の情報機関にも負けない、というかそういった組織も利用している。

俗にいえばハッカーとも言える。

そして、公人や企業の不正、軍事的な緊張等を分析察知して世界に情報公開し警告している。

なぜそんなことをやっているか、というとこの世界を俺は不公平だと感じているからだ。

世の中に住む人のほぼ大多数の割合の人々は、残りの極少数の意思決定によって行動を決定づけられている。

端的にいえば、莫大な富と権力を持つ者達が膨大な一般市民の生活をその意のままに操っている。

それも、知らぬ知らぬの間にだ。

権力者達の狡猾なところは、世界を自在に動かしているにも関わらず、操られている市民たちはそれに気付くことすらできない。

国、大手メディア、大企業達は選択肢を作り、市民に選ばせ自分で選んだ人生だから仕方ないと錯覚させるプロだ。

知らず知らずに搾取されている大多数の人間がいる、そう気付いてしまった俺は、権力者たちに戦いを日々挑んでいるというわけだ。

恐ろしいのは、この事実を証明するネタを公表しても世界に与える影響は殆ど得られないでいる。

影響力のあるメディアはすでに権力者の支配下、その組織の中にも支配を受けていない正義の心を持つ記者もいてそんなものに情報を渡したことがあった。

どうなったか、その記者は風説の流布と組織に叩かれ職を失い更にそのあと自ら命を絶った…。

ならばとSNS、動画サイト等を使って直接人々に情報発信。

するとどうだ、大半の反応が陰謀説だ妄想だといったものばかりだ。

更には名誉棄損だ権利の侵害だとアカウントを削除される。

大手の情報インフラも権力者の手中の中ということ、それはそうだそれらサービスを運営しているのが権力者の配下企業なのだから。

ともすれば、残った手段はというと革命家組織や反権力者団体への協力ということになる。

これはかなりリスキーだ。

信頼を得るために直接的な接触や、彼らの喜ぶ協力をしなければいけない。

結局、どれだけ凄腕のハッカーだろうが世界の真実を掴んでいようが個人ではどうもこうもできない、世界を変える力なんて持ちえないのだ。

だから不本意ながら、俺も組織に身を置いて活動していた。

なのだが、俺の提供する情報が膨大で驚異的だったのか、組織の活動が国の防衛機能に引っかかってしまった。

組織の構成員の元に公安となのる捜査官達が押し寄せて次々と捕まった。

勿論、俺の元にも迫ってきている。

俺の情報が飛び交い、その正確性に気付く。

捕まった組織の誰かが司法取引で俺の情報を吐いたようだ。

仕方ない、こわーい捜査官に脅された後にあまーい言葉で誘われたのだろう、誰だってそうするから責めることはできない。

多分俺だって、この後そうしてしまうだろう。

情報収集・分析能力は世界最強!でも陽にも浴びず部屋にこもってパソコンをいじってばかりでがりがりもやしの俺が、日々捜査に励んでいる屈強な捜査官の方々に手も足もでない。

逃げることは諦めている、もう捕まるのは時間の問題だ。

そう思い、見られちゃまずいファイルだけ消そうと断腸の思いで作業を始めたと同時に、彼らはやってきた。

街はずれの今は使われていない工場跡地を拠点にしているのだが、セキュリティシステムが侵入者がいることを知らせている。

侵入者達の迷いのなく俺の元に近づいてくるのを横目に、最後の作業として家族の写真・情報の入ったフォルダを開けた。

絶対に迷惑をかけてはいけない…いやもう遅いかもしれないけど、そう思いながら削除しようとする。

バタンッ

部屋の出入り口が勢いよく開きヘルメットに防弾服、手には重火器を携えたザ・特殊部隊ってのが姿を現す。

一瞬で複数人が俺を取り囲むように並び、重火器の銃口を俺めがけて並べた。

この間、スローモーションのように状況が流れていて、直感的に感じたのが「あれ、これ殺されるわ」

別に抵抗するそぶりを見せてるわけでも、凶器を携えた凶悪犯ではないというのは一目でわかりそうだが。

普通は「動くな!」御用だ!御用だ!と言わんばかりに身柄を拘束されて取り調べられて法の下に裁かれたり、司法取引を持ちかけられたりしそうなものだが。

こんな肌の色が真っ青なもやし男をサーチアンドデストロイ(見的必殺)しようとしている、これは多分だけど、通常の操作手順を逸脱している。

ということは、よっぽど権力者にとって俺は都合の悪い脅威になっているのかもしれない。

世界を牛耳る超権力者の脅威に、俺はなったんだ。

多分、数刻後にはド玉ぶち抜かれてとてもグローイ絵面を作っているんだろう。

めちゃくちゃ怖いし、結局何も変えることができなかったから悔しい。

だけど、俺はそいつら権力者達を動かさせてやったんだ、結論はどうあれ信じてきたことは間違っていなかったんだ。

そう思うと、謎の充足感が浮かぶ。

もう殺されようとしている人間の表情に笑みが浮かぶ、俺ってかなりクレイジー(狂人)だなぁと。

さようならこんな不平等で、つまらない世界。

願わくば、人々が平等で笑顔に過ごせる世界が訪れますように…。

あ、あと、消した個人的な恥ずかしい趣味のファイル達は復旧させないで欲しいというのが、最後の望みかな。

それと、買ってある株や仮想通貨といった資産は恵まれない子供や動物たちに寄付してほしい。

って、なかなかに走馬灯っていうか、死ぬ直前の超スローモーション体験って長いんだな。

それならもう一つ神様への我がまま言ってみようかな、出来れば素敵な天国に行きたい。

インターネットがあって…、可愛い動物たちがたくさんいて、あとオタクにやさしいギャルがいて…。

既に、銃口を向けられ、引き金が引かれれば俺はあの世というか天国逝きという状況がとてーも長く感じられる、というか止まっている?


「天国、逝けませんよ」

はっきりとそう聞こえた、今まで聞いたことのない不思議なトーンの女の声で。

「へ?」

俺は間抜けな声をあげてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界転生した元凄腕ハッカーが、最強の師匠達に死ぬほど修行させられて最強になって世界を変えたい話。 @kouchousensei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ