海上自衛官と船酔い
※個人の感想です。
自衛隊を辞して転職した身であるが前職の話をすると毎回のように驚かれる。そのたびに身近にあると思いきや、やはり遠い存在なのだなと思い知らされるばかりである。
さて前職の話をする際必ずと言っていいほど聞かれることの一つに船酔いの話がある。曰く「船酔いには皆強いのか」、「船酔いを克服しないと船に乗れないのか」といった内容がほとんどである。たしかに一般の方からみたら海上自衛隊といえば護衛艦などの船乗りであろう。しかし、遠洋練習航海や護衛艦勤務の経験を通して主張したいこととしては海上自衛官皆が船酔いに強いかというと全くそのようなことはない。
幹部の話として限定させてもらうが、幹部候補生学校では練習船実習というものがあり、こちらは名前の通り練習船(小型クルーズのようなもの、詳しくは調べてみてね)を使用して航海を行うものである。この実習は主に江田島湾内を一周する程度のものであるため船の揺れなどは外洋と比較すると無きに等しい。しかし、船に乗る経験などそこまで多くない候補生にとっては慣れない揺れと独特のにおいもあってかなりの確率で船酔いする。練習船の船酔いについては1,2回もすれば正直なれる。江田島湾内なのでそこまで揺れが大きくないというのも理由の一つではあるが。
そのほか、幹部候補生学校で船酔いする可能性は護衛艦実習くらいであろうか。この実習では実際に護衛艦に乗艦し2,3日(だったと思う)航海を経験するものである。この時は日本近海を航海する程度ではあるものの江田島湾内よりも揺れが大きいため船酔いする可能性はより高い。
幹部候補生学校を卒業した学生たちを待ち受けているのが卒業後そのまま直行する遠洋練習航海である。遠洋練習航海は前段として近海練習航海があり、基本的に練習艦「かしま」ともう1隻か2隻の練習艦ないしは護衛艦等で構成される。近海練習航海では幹部候補生学校時代と似た形で大しけに当たらなければそこまで船酔いはないかもしれない。しかし、近海練習航海で耐えられたとしても遠洋練習航海はコースにもよるが太平洋を横断したりと外洋に出たりすることがある。そこに大しけ、荒天航行が重なれば地獄が待ち受けている。45度は言い過ぎかもしれないがひどいときには体感でそのくらい傾いているのではないかということもあり、船乗りの洗礼をここで受けることになるであろう。かくいう筆者もこの時はさすがにダウンし吐くところまではいかなかったが一時立てないことがあった。外洋の大しけ時は前述するように江田島湾内の練習船実習なんかとは比較にもならないレベルなのでそういう意味で覚悟が必要である。
最後に現役海上自衛官はどうかであるが、彼らも普通に酔う。確かに経験値が多い彼らであれば通常の航海程度の揺れであれば酔うことはない。が、先ほども軽く触れたように大しけなどの荒天に見舞われた場合酔う可能性は大いにあり得る。
船酔いに強いと思われがちな海上自衛官であるが入隊直後は誰でも酔う可能性はある。慣れてしまえば通常時は酔うことはほとんどなくなる。しかし荒天時の航海は酔う可能性はある。ちなみに、長期間航海をしていて久々に上陸したときに揺れている状態が正常と脳が勘違いをするのかいわゆる「丘酔い」という現象に見舞われることがある。酔って気持ち悪くなるわけではないが揺れないはずの陸上でふわふわ揺れていると感じることがある。
自衛隊に関するあれやこれや(短編集) みかん @kinkan_solar
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。自衛隊に関するあれやこれや(短編集)の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます