冷たい美少年はお菓子には逆らえない

闇野ゆかい

第1話母親の影響

私は母親が寝かしつける際に話してくれる旅のお話が大好きだ。

母親が私を産んでからラハエ村を離れ、旅に出ることはなかったとのこと。

父親のことは口にしない。なので、父親がどのような人柄なのか全く知らない。

一度だけ父親について口を滑らせたことがあったが、思い出したように茶目っ気のある表情を浮かべ、忘れてちょうだいと話題を切り上げられた。

母親のユーモアのある話しぶりに、私は幼いながらに外の世界の魅力に魅入られた。

私の村には、書物を読める村人は数少ない。

母親はその内の一人である。

ラハエ村の外から移住してきた人間だからだ。

私は母親に読み書きを教わり、旅に出られるように知識を得た。


私には肌身離さずにいる物がある。掌サイズの麻袋だ。

その麻袋さえ持っていれば、怖いめに遭ってもどうにかなると母親に言われている。


旅に出られる年齢としになったアルナエ・シェルエントはラハエ村を旅立つ支度に勤しんでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

冷たい美少年はお菓子には逆らえない 闇野ゆかい @kouyann

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ