記憶のない転生勇者
ruy_sino
第1話 約束と呪い
「この花にしようよ。」
「⁉︎花びらが5つコイツだけ5つもある。」
「本当だ⁉︎」
「あぁ、この花にしよう…」
俺達は、花に願いを込める。
男は、
彼女の隣にずっと居たい。彼女の事をそばで護りたいと。約束をする。
女は、
彼とずっと一緒にいたい例えどんなに困難な道が待っていようと…約束をする。
花は、互いの願いを聴いた。
その花の名前は、『ユークラウス』
ユークラウスには、逸話がある。
願いを込めると、その願いが叶うとか… 願いを込められた花は、風に吹かれ空へと向かって消えていく。
それが儀式の完了の合図だ。
「よし…帰るか。」
「うん!!」
二人は手を繋ぎ帰っていった。
ユークラウスには、逸話がある。
稀に5つの花びらが咲いている花があると、その花には願いを込めてはならない。
願いを込めたものは…------
「今日の晩御飯は、キノコシチューよ。」
「俺の大好物だ。いただきます。」
スプーンいっぱいまですくった、シチューを口に入れる。
「アフイ…」
「バカね出来立てだから熱いに決まってるでしょうに…。」
「うん。やっぱりこれが一番好きだよ。」
「そう…ありがと。」
少し照れながら感謝の言葉を言う君。
俺達は完食をし、後片付けも終わり椅子に座りゆったりしていた。
「なぁ…話があるんだけど。いいかな…クラリス。」
「何?」
俺は、椅子から立ちクラリスの近くまで歩いた。
「結婚しよう。」
その言葉と同時に俺は、花で作った冠を彼女に渡す。
俺の問いに彼女は…
「だけど…決まりがあるのは知ってるでしょ…
この世界には決まりがある…妖精と人間は如何なる理由でも結婚しては、ならないと。
しかし、好きになってしまったのだ、好きなのに決まりを守ることなんてできない…彼女と一緒に時間を過ごしたい…悲しい時も辛い時も嬉しい時も。身体を重ねる時も…
その想いは、より強くなった。
「わかってる。だけどどうしても俺は、お前が好きだ。」
彼女の顔が赤くなり目を合わせなくなってしまう。しかしそんな事を気にもせず俺は続ける。
「お前が…決まりに縛られているなら…俺がその縛りを解いてやる‼︎何年かかっても。だから今は、気持ちだけ受け取って欲しい好きだと言う気持ちを。」
「本当は私も好き。」
「じ、じゃあ‼︎」
「でもね…決まりがあるから怖いの…破るのが、周りから何を言われるのかがわからない。それに…妖精の命は何千年よ。それに比べたら、貴方は人間…後何十年ぐらいしか生きられない。残された私はどうすれば良いのか。
ただ、さっきも言ったけど貴方のことを好きって言うのは本当。」
彼女は、一度息を吸いもう一度話した。
「だからさっき言った言葉忘れないで。
いつか…
ドシャァ
木製のドアを蹴り破り突如ゴブリン達が入ってきた。
「どうしてここが⁉︎」
ゴブリン達は武器を持っていて、俺は、剣をすぐ持てる位置に置いてなかった。
「ーーー」
と訳のわからない言語を話し、邪悪な笑みを浮かべ始めた。
次の瞬間だった。
一際大きなゴブリンの合図で小さいゴブリン達が一斉に手に持っていた槍、剣、斧で俺とクラリスを斬り始めた。
「キャァァァァァァア」
体を斬られ悲鳴を上げるクラリス、助けに行こうと思ったが、俺の体も斬り刻まれていて体に力が入らなかった。
「や…めろ…やめろ…やめろ…やめろォォ‼︎」
ただ叫ぶことしかできなかった。
好きな人が斬られて死んでいくのを見ていることしかできなかった。
俺は、クラリスに左手を伸ばした…もう息をしていない彼女に少しでも近づこうとした。
グシャア
「ぐぎぁぁッッ」
伸ばした左手が斬られ、意識が朦朧とし始めた。
「このまま死ぬのか…ここからがスタートなのに!…俺は、俺はッ‼︎」
心の中で自分に問うことしかできなかった。
視界が暗くなっていく…
「---」
ゴブリン達がまた話始まる。
何を話しているのか分からなかったが…大きなゴブリンは、ゲラゲラと笑いながら何度も何度も俺とクラリスのことを斬り刻み…
俺は、消えゆく意識の中ゴブリンの笑い声を聴き目を閉じた。
「…i…おい…起きろ。」
瞬間目が覚める。
「ここは…?」
「おいおい…大丈夫か?これからダンジョン攻略だって言うのに…。」
「ダンジョン?それに貴方達は誰だ?」
「はぁ!?俺の名前は、リューズ タンクだ。」
「こっちは、サラ。支援魔術を得意としてる。」
「この少し小さい妖精は、クラリス。こっちも支援魔術を得意としている。」
「そしてお前、カーシャ。勇者だろ?」
何も知らないところに突如いた俺の名前は、どうやら『カーシャ』というらしい。
今から目の前の洞窟(ダンジョン)を攻略するらしい。
腰には、剣があった。
「作戦は、こうだ…俺が前に出るからサラ、クラリス、で支援、回復そしてカーシャお前が敵を殺せ。わかったか?」
「あぁ…一応。」
「ならいい…行くぞ‼︎」
走りながら洞窟の中へと入っていった。
「気をつけろ!ゴブリンがいるぞ‼︎」
リューズが言い、全員が戦闘態勢へと入る。
「作戦通り行くぞ!」
リューズが前へと出て敵の注意を引く。
「カーシャ‼︎」
俺は、腰にかけてある剣を両手で前に持ち、ゴブリンへと突進した。
「ウォォォォ‼︎」
剣を突きの体勢にし、全速力でゴブリンへと突き刺した。
「グブルゥゥゥ‼︎」
ゴブリンが悲鳴をあげた。
「まだだ…。」
突き刺していた剣を抜き、今度は、剣を上に振りかざし一気に肩から腹を斜めに切り裂いた。
「はぁ…はぁ…」
「良くやった。」
切り裂かれたゴブリンは、動く事は無かった。
「いい支援だった…この調子で頼むぞ。」
リューズが支援の二人を称賛した。
その瞬間だった…
ドン…ドン…
足音が大きく聞こえ、洞窟が揺れた。
「な、何この揺れは?」
サラが声に出し周囲に呼びかける。
剣の持ち手をグッと握り力を込めた。
「みんな気をつけろ‼︎」
リューズがそう言った瞬間だった。
ブルン
と空気を切る音が聞こえるのと同時にリューズの体が真っ二つに切られた。
「ッッ無理よこんな相手‼︎」
サラが声を上げ俺たちに呼びかける。
「今逃げても間に合いません。それに村に被害が出てしまいます。」
クラリスが反論する。
「でも!!どうやって!」
サラが更に大きい声を出し、焦りを露わにする。
そうしているうちに、大型のゴブリンの姿が見えた。
俺には見覚えがあった。
「何よあれ…2.5m以上あるわ!それに普通のゴブリンだって…」
大型のゴブリンは、槍を手に持ち佇んでいた。一方で普通のゴブリンは、剣や斧、槍といった様々な武器を持っていた。
「とりあえず俺がどうにかします。」
「どうなかってもうどうにもならないわよ‼︎」
サラが怒鳴り始めた瞬間…
シュッと何かが投擲された音が聞こえた。
「サラ‼︎」
俺が声をかけた時は、もう遅かった…
「えッ?」
額に槍を刺されその場に倒れてしまった。
「クソ…。」
「----」
と訳の分からない言語を話し始め、ゲラゲラと笑い始めるゴブリン達…
その光景に見覚えがあった。その笑い声に聞き覚えがあった。そこゴブリンに見覚えがあった。
自分でも不思議だけど…
次の瞬間俺の中で、何かが弾ける音が聞こえた。
それと同時に俺の身体は、前へと進んだ。
「ウォォッ‼︎」
剣を突き出し大型のゴブリンに突進をした。
グサ
何かを刺した音が聞こえる。
目の前には、腹を貫かれて顔色が青白くなっていく大型のゴブリンが見えた。
「まだだ…まだだァァッ!!」
壁に向かって走り続けた。
ドシャン
壁に当たる音が聞こえた瞬間俺は、突き刺した剣を力づくで抜き…
「こんのォォォッッ」
抜いた剣を真っ直ぐに縦に構えて…
ドォン
左足を一歩前へと進む、その進んだ勢いを利用して大型のゴブリンの首を一気に斬った…
斬られたゴブリンの頭は、両眼を開けたまま、痛みに悶絶する顔を見せて息をしなくなっていた。
「まずい…あの女の子は?急がないと。」
大型のゴブリンの首を持って走った。
何故か…あのクラリスという名の妖精を守らないと助けないといけないと感じた。
はぁ…はぁ…
そう遠くないはずなのに何故か見当たらなかった。
グチャグチャ
「…?」
俺は足元に違和感を感じ下を見た。
「…ぁ…」
足元には、何度も何度も突き刺され苦しみの表情のまま息を閉じたクラリスがいた。
「あぁぁ」
守れなかった…
近くに隠れていたゴブリンがぞろぞろと出てくる。
大将の首を見てゴブリン達は、困惑していた。
「こんのぉ‼︎」
激情のまま振り下ろした剣は、近くにいたゴブリンの体を斜めに切り裂いた。
ブルン ブルン ブルン
何度も何度も剣を振った…激しい怒りの感情を出して、ゴブリンを殺し続けた。
そうしていくうちに、ゴブリン達は、その場から逃げていった。
「ごめん…皆んなを守れなかった…。」
俺は、血だらけの剣の刃を自分の腹に向け…
俺の腹を一気に裂いた。
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