[商品レビュー]高価スマートウォッチの生態

陰キャの私にもちかけられた企画は、一週間後の「クォーターマラソン」への参加。

当然ただ走るだけではなく、商品レビューを同時に行う。

それは近年流行りつつある『スマートウォッチ』であった。

画質・音質の性能向上などと華々しく謳うスマートフォンなどのハイテクノロジー製品は、陰りが見えてきている。

ならばこそ次の分野として"ヘルステック"つまりは、健康×技術による製品として生み出された新製品がスマートウォッチなのである。



今日も今日とて女子高生2人は、来るべきマラソンに備えランニングを朝からしていたのだった。


「涼香ちゃん、この時計の"毎日の目標"って大変すぎない?」

やや息を荒げながら、彼女に伝える。


スマートウォッチは、ただ歩数をカウントするだけではない。

"脈拍"や"心拍数"、"血中酸素”を測定する機能などが近年発売されてきている。

それにより、ストレスの感知や運動不足などの解消を促す通知を送るアプリケーションが展開されている。


だが、年齢・体重・身長の入力をすることで、おおよそ必要な一日あたりの運動量が勝手に目標としてスマートウォッチに設定される。


私達に課せられた歩数は

『1日7000歩』 『有酸素運動30分』 『起立時間4時間』


特に7000歩は初めて見た時は驚いた。

これが社会人となったらどうなる・・・。

おそらく、10000歩なんて言われてしまうのだろう。

娯楽が「ゲーム」と「漫画アプリを読む」そして「自分が憧れる配信者をベッドでごろごろしながら見る」という生活を送っていた私には、この目標がとんでもない高いハードルだと思ってしまう。


「うーーん。まぁ7000歩は確かに多いかもしれないけど、こんな感じで友達同士で有酸素運動してたら簡単簡単!!」


とも・・・だち。


いかんいかん。意思疎通が難しいゴーレムみたいじゃん!!

私は、陰キャ卒業を目指して、陽キャ番長の琴峯 涼香を相方に動画投稿者デビューした。今となっては、プライベートも共にするほどだし"友人"と呼んで差支えないだろう。


「ところでこのPAIってなに?」


小休憩を公園で取ろうとなり、いつぶりに使ったかもわからない公園産の水道で水分補給をしていた。


そしてふと私がスマートウォッチをスライドして色々と記録したデータを見ていると。


(あれ?なんだろうこれ。PAI?)


「涼香ちゃんこの先週のPAIってなに?心拍数?」


「あぁそれは心拍数じゃなくてマイルストーンみたいなものだよ。」


「まいる・・・すとーん??」


「簡単にいえば一週間単位の目標みたいなもの!

いっぱい走ったりするとそれが貯まってって、一週間で100以上貯まると

寿命が5年以上伸びる可能性があるとかなんとか!

だから、私は毎週100貯まるように毎日心がけてる!」


彼女が腕を曲げて、見えたディスプレイには[先週:117PAI]と記されていた。


「涼香ちゃんすごいね。私も頑張って100貯める!!」


ふん!と両手をグーにして肘を腹部の前につけ、やる気を上げるのだった。


(ちょっと前までは、相手の気分を害していないか不安だったけど、最近少し前向きになった気がする!!)


「じゃあ使うかはわからないけど、動画のサムネイル用に時計と私達を映して撮ろっか!」


ポケットからスマートフォンを取り出して横に傾ける。

そのまま、手を伸ばして斜め上からのアングルでカメラモードにした。


「う、うん!ポーズはどうしよう。」


スマホを休憩している東屋のベンチに置き、彼女は考えている。


「そうだねぇ。じゃあ手をチョキの形にしてみてー!」


言われた通り、両手でチョキを作ってカニさんになる。

ってこれ普通にピースでは??


「んで。親指も開いてー。それで顔の横に両手でつける。

それで・・・斜め上からのアングルだから、顔も斜めにすると映りがいいかも!」


私は今までしたことのないポージングをして彼女と撮影したのだった。


自宅に帰って、シャワーを浴び汗を流す。


(これがネットでよく見る朝活かぁ・・・)


朝活なんて言葉は意識高い人だけの専門用語かと思ったが、

意外とやってみると清々しい気持ちになる。


(学校行くのもそんなに憂鬱じゃないかも)


朝なんていつもお布団の誘惑と格闘する時間だから、好きではなかったが

ふと彼女と学校でも話せるかもと思うと少し口角が上がる。


本日の朝活で28PAIもゲットしたことを確認し、今日も頑張ろうと前向きに考えるのだった。

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陰キャ娘でもバズりたい @kou_Aries

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