第13話 学園生活
ティネが真剣な表情で授業を受けている。私は、少し離れた場所から彼女の様子を見守っていた。彼女の視界に入らないように注意して。
学園に居る間は、ティネとの交流を断つと決めていた。授業に集中してもらうために、彼女と私は離れ離れになっていた。
だけど、今までずっと一緒に居たから、こんなに離れた時間を過ごすのは初めてで心配だった。何かあれば、すぐ飛び出していける位置に私は常に待機しておきたい。だから今も、ティネの近くに私は居た。彼女からは見えないようにして。
そもそも彼女のそばから遠く離れることが出来ない私は、ひっそりと彼女の様子を見守るだけ。授業を受けて、真剣に学んでいるティネを応援していた。
私の応援は、あまり必要ないかもしれないけれど。ティネは成績優秀だったから。幼い頃から家庭教師に教えてもらったことを、しっかり吸収していた。貴族社会でのマナーや、歴史に関する知識はバッチリだった。
魔法に関する実力も非常に高い。あれは、私が教えた。この世界に来てから、私も魔法を使うことができるようになっていた。
私の頭の中に魔法の使い方が自然と思い浮かんできて、それをティネにも教えた。彼女とは幼い頃から一緒に学び、鍛えてきたから、魔法を扱う能力については非常に高い。おそらく、学園内で一番の実力者だろう。もしかしたら、教師にも勝てるほどの実力があるかも。
少し、親バカが過ぎるかしら? でも、事実だった。ティネは成績優秀である。
だから、学園生活も順調だった。私の助けが必要な場面は、一度もないぐらい。
「「「ティネ様!」」」
授業が終わるとティネの席の周りに、女の子達が集まってくる。皆、同じクラスの子だった。
「どうしたの?」
「ここ、教えてくださいっ!」
「どこ?」
「これです」
「それは、こうやって――」
「私も教えて下さいっ!」
「「「私も!」」」
「じゃあ、話を聞きたい子は皆。こっちに来て」
ティネは大人気だった。授業で分からなかったことを、教師ではなくティネに質問することも多かった。そして、彼女が質問された時は真剣に対応していた。ティネは面倒見が良いし、優しいから。
「わかった?」
「なるほど、わかりました! こういう事なんですね」
「そう」
「ありがとうございます、ティネ様っ!」
「また、分からないことがあったら聞いて」
「感謝します、ティネ様!」
「「「ありがとうございます、ティネ様!」」」
そんな感じで、ティネの周りは常に賑わっていた。女の子達の笑顔で溢れていた。他の生徒達から慕われている。
学園に入学する前は、人との交流がほぼ皆無だったティネ。私とメイド達と父親、それから顔合わせ以降ほとんど会っていない婚約相手ぐらい。
同年代の女の子と話す経験が無かったティネ。だから、少し心配だった。ちゃんと学園でコミュニケーションをとれるのかどうか、話せるかどうか。
だけど、心配は無用だったみたい。ティネは、しっかりと親しい友人を作ることが出来ているようで良かった……。
ほっとした気分になった私は、彼女達には気付かれないよう静かに見守り続ける。今日もティネが元気よく、楽しげにしている様子を目に焼き付けた。
【未完】悪役令嬢の中に封印された邪神に憑依してしまった私は、その令嬢を全力で可愛がる キョウキョウ @kyoukyou
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