第12話 学園入学
ティネが通うことになった学園の入学式が行われた。ゲームのシナリオが開始するのは、彼女が2年生だった時のはず。だから、まだまだ先の出来事。だけど、次第に近づいてきた。
シナリオが開始される時に、主人公と出会うことになるかもしれない。ティネは、まだ主人公と出会っていない。私も、彼女の姿を見ていない。学園に居るはずだけど、入学式の場では見当たらなかった。
もしかしたら、この世界に主人公は存在していないのかも。私が邪神になったように、ゲームとは違う未来になっているのかもしれない。主人公が存在しないルート。
そうだとしたら、ティネは何事もなく平穏無事に暮らせると思う。まだ邪神の問題は抱えたままだけど。ゲームのシナリオのような展開に巻き込まれなければ、それはそれでいい。
「この服、どうかな?」
「とっても可愛いわよ、ティネ」
「ありがとう! ママも、そう思ってくれて嬉しい!」
学園の入学式が終わって、屋敷に戻ってきた私達。ようやく落ち着くことが出来たティネが、私の目の前でクルリと一回転して、新しい服装を披露してくれる。学園に通う時に着用する制服姿を。
意見を求めるティネに、私は笑顔で答えた。とてもよく似合っていて、ものすごく可愛らしい。まるで妖精みたいだと思った、と。
私にだけ見せてくれる、ティネの無邪気な表情や仕草。それを見る度に、胸の奥が温かくなるような感覚を覚える。ずっと見ていたいと思ってしまうくらいに愛おしい気持ちになるのだ。
普段の彼女は、とても落ち着いている。冷静沈着という感じだろうか?
いつも微笑みを絶やさないけど、どこか大人びているように感じる時がある。そういう時は、年齢以上にしっかりしているように見えるんだよね。とても大人な彼女。
ただ、今のように子供っぽい一面を見せることもある。そのギャップがまた良い。それにしても……、こうして改めて見ると本当に綺麗になった。
これまで彼女からは離れず一緒に居て、どんどん成長していく姿を見届けることが出来た。とても、良い子に育った。
ゲームに登場するキャラクターとは、全く違う性格になった。
いつも怒鳴り散らして、常にイライラしていて、周りには意地悪をしてストレスを発散するようなキャラじゃない。優しく穏やかで素直な性格の子なのだ。
私は思う。この世界のティネが、彼女の本来の姿であると。
邪神に惑わされなければ、こんなに素敵な女性に育っていたはずだ。部屋に一人で放置されているような環境じゃなかったら、ゲームに登場した彼女もきっと、もっと明るく楽しい人生を送れていたはず。
そして今のティネは、とても素敵な女性に育っている。ゲームのシナリオのような展開になったとしても、彼女は大丈夫だと思う。きっと、違った展開になるはずだと信じたい。ティネが悪役なんかにならない、そんな素敵な展開。
だって、今のティネには私が居るから。絶対に酷いことにならないように、彼女を守ってあげたい。そして、幸せな姿をずっと見守っていたいと思っている。これからずっと。
そのために、この世界に主人公がいるのかどうか確認しなければ。そして、ゲームのシナリオのような展開を回避するためには、どうするべきなのか考える。考えて、なんとかする。必ず、きっと。
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