第9話 空色の未来


「芳人。野菜がいっぱい採れたぞ!今日は鍋でどうだ?」

「お、いいな。鍋のダシ買っとくよ」


 あれから一年。

 陽光が降り注ぐ、元魔王の森の傍でエルと俺は暮らしている。


 俺らの肌には紋様がない。



『手落ちもいい所だの。見届けてやろうと思うたが……神々が手ぐすねを引いてお前が消滅するのを待ちかまえていたから、こうして手をと出してな?一番神力のありそうなヤツの頭を掴んで脅した。後は適当にやっといたぞ?』

「どんだけだよ!それ、創造神じゃないのか?!」

「ううっ……!桔梗、様……ありがとうございます!芳人、無茶をしおって……!」


 泣きながら俺にしがみつくエル。


 桔梗は咎人の紋様を全て、” 恩赦 ”とさせた。


 その代償として俺の持っていた女神の力と桔梗の小刀の力をこの世界に還元したらしい。だから、紋様が無くなった俺は生きながらえたのだろう。

 


 この世界に分骨して建てた、家族の墓。

 エルと二人で、月命日に日本と交互に墓参りをしている。


 大恩人の桔梗は、と言えば。


『ま、礼は芳人の眷属化でいい』

「桔梗様……!夫はこの命を賭しても譲れませんが、このご恩は決して!」

『……許そう。本気でかかってくるがよい』


 毎回のように、エルがエビのように丸まって転がる羽目になる。

 だが、たまに遊びに来ると、散々エルをからかって帰っていくだけだ。


 本当に、ありがとうございます。

 桔梗様、いえ。


 月読命つくよみのみこと様。

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『さよなら』の翼 〜空色の未来に、この想いを〜 マクスウェルの仔猫 @majikaru1124

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