12話 許容を超える
しかし、その緑の炎は様子がおかしかった。
炎は燃え続けている。しかし、その炎は大きくなることも小さくなることもなく、ただそこで燃え続けているのだ。壁に空いた穴の向こうには、美しい夜空と砂漠が見える。
それに、燃えているのに煙も匂いもしない。
「なんで」
「なんで? なんでって、当たり前だろ。ここは、俺達が貸してる『鏡』の中なんだから。そこにあるのもここも、全部嘘でできている」
僕のつぶやきに、ボスはまるで劇の役者のように声を張り上げる。
なにそれ、意味がわからない。まるで当たり前のように話すが、全てが全て僕が知らないことばかり。
ぷつんっ。
身体の中で何かが切れた音がする。次の瞬間には視界が真っ白になる。
「なっ!?」
「わぉ」
「リュウユウ!」
意識の遠くに慌てる人達の声が聞こえ、気づけばそこは一面花が咲いていた。壁を這うように蔦が生え、ボスと根暗と呼ばれた二人の体は植物によって縛られ、吊るされている。
そして、そんな僕の頬をペチペチする星型の人形。
「す、すみません、混乱して。って、セイ、出てきてよかったの!?」
「リュウユウ、流石にやりすぎだ」
どうやら、力が暴走したのだろう。酷い有り様に僕は慌てて謝罪する。そして、僕を正気に戻すために飛び出してきたのだろう。
「セイ? ああ、セイ、ね。お前、そんな可愛い姿にいつなったんだ」
「サーカスの王子様が随分小さいな」
「……挑発しようとしたって無駄だぞ。逆になんでお前らがここにいる。『永世の都』の
セイに対して馬鹿にしたように話す二人に、セイは苦々しく言葉を吐き捨てる。セイの嫌そうな雰囲気に、吊るされたままのボスがにたりと笑った。
「俺等は世界平和の要だ。俺達がいるから、泡のような薄膜の上で、
すると、ボスと根暗を吊るしていた蔓が、緑の炎で燃えた。
「龍髭国の狂死が今、各国で広がっている。全て気位の高い奴らだ。すぐに無駄な血を流そうとする」
またもや出てくる狂死の話に、僕は顔を顰める。まるで原因は龍髭国のせいだとでも言いたいような口ぶりのボス。僕たちも困っているのにと、言い返したい気持ちをぐっと堪えた。
「だから、俺が上からの指示でここに来た」
「そして、間抜けだからハメられて捕まったと」
「姫のケツを嗅ぎ回る根暗に言われたくねぇよ」
随分と回りくどいボスの言葉に、根暗はバカにするような口ぶりで茶々を入れる。ただ、ボスもまた応戦する。
僕はこの大人たちの話を聞きながら、自分の顔を触る。その時、初めて僕が今泣いていた事に気づいた。
さっきの暴走で感情が昂ったのだろう。でも、これ以上の衝撃はあるはずがない。僕は涙を袖で拭いた後、ボスの方を向いた。
「この鏡、って一体なんなのですか」
「鏡は、鏡。
「……不思議な力ですか?」
ボスに尋ねると、ボスよりも先に根暗がぐわりと目を開いた。
「ああ、
怪しく眼光から緑の炎が燃え上がる。その目は狂気に満ちていた。ボスに視線を向けると、ボスは呆れたように顔を振った。
「俺たちは、そいつを
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