2話 南部屯所にて
龍髭国南部の屯所。南部らしく極彩色に彩られたやぐらが見える。
そのやぐらの上で、青い長い髪を荒れ狂う風に
「おお! リュウユウ、ジョウシェン! 無事に帰ってきたか!」
風を切る轟音の中で、
二匹の龍は大きな蔦籠を掴み、そのやぐらへと向かって、更に速度を上げた。
「ルオ、ただいま!」
「ルオ様、おまたせして申し訳ございません」
それぞれの龍からやぐらへと飛び降りる僕たちに、ルオは駆け寄ってきた。相変わらずの
「ルオ様! また、仙力を具現化しようとしましたね! 今朝はなかった鱗が目の下に!」
ジョウシェンは慌てて、ルオの目の下に触れる。そこには微かに透明な鱗のようなものが生えていた。
「すまぬすまぬ、つい、な」
今にも泣き出しそうな声で叫ぶジョウシェンに、留守番をしていたルオはあっけらかんと軽く謝った。リュウユウはその声から心から反省していないだろうと思った。
誰よりも先に龍を生める素質を持っていた彼は、現在「
「まあ、どうせ、私の目を使うのだから構わぬだろう。どれ、
ルオはそう言うと、トゥファとティエクァンが持つジッと蔦籠を、金色の瞳で見つめる。
この目は、ルオが龍化した時に偶然手に入れた力。真実を見れるという「龍の瞳」。
そもそも龍化は、龍仙師が龍を生む際、何かしらの手違いで龍と身体が融合してしまい、その部分に産むはずだった龍の力が宿る。何よりも厄介なのは、その龍の力を使う度に、ルオの人間性は失われ、龍へと変わっていくのだ。
「いるな。ただ、この者自体は悪意も何もない。霊たちもこの者を庇うように守っておる」
ただ、ルオは龍化を恐れず、力を使っていく。ちらりと横を見ると、彼の目の下にはまた新たな鱗が生まれていた。
「私達を昔襲ったのにですか?」
「もしかしたら、錯乱してたのかも。何せ、国を侵攻されて逃げてたんだよね」
何かを見たルオの言葉に、ジョウシェンが確認する。たしかに、彼は自分たちを襲った人だろう。しかし、僕は一度追われた事があるからわかるが、追われている時は脳内が混乱してもおかしくはない。
それに以前、
あったはずの国がない。暗に近くの国に侵攻されたという事を言ってきたのだ。母国がなくなった混乱による凶行があってもおかしくはない。
「詳細はわからないが、とりあえず、元帥は呼んだので近々くるだろう。リュウユウ、蔦でこの者を無力化はしておいてくれ。場所は教える」
「もし、ルオの言葉が正しいなら、可哀想だけど。仕方ないよね」
僕は鞭を取り出し、鞭を籠に向けて振るった。すると鞭先は、蔦が伸びるようにするすると伸びていく。籠の中へと伸びていった鞭、横にいたルオが瞳に力を宿して、その鞭と籠の中を見る。
「リュウユウ、右斜め下へ、そこで止まって奥へ真っすぐ、そこだ。よし」
「ああ、これね。籠の上へと引きずり出すよ」
がちゃがちゃとした骸骨やら木やらを掻き分けた先にある、なにか柔らかいもの。鞭の感触で、今一番話を聞きたい人だろう。
「よいしょっ!」
籠の中から、鞭を巻き付けた
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