ヒーロー活動

私はヒーローである。名前はまだない。


私は気づけば生まれていて、人助けだけをして日々を暮らす。食事や風呂などは必要なく、暑さ寒さを感じたことは無い。


そして、私は人に覚えられたことがない。どうやら私が助けた人皆、私の存在を認識できないようだ。


そのことに少し落胆しつつも、私は今日も街を駆ける。


…が、最近一つ困ったことがあった。ある一人の少女の存在に、頭を抱えている。


私はどうやら、助けた後に記憶が消えるため覚えられていないらしい。しかし、その少女は私をはっきり認識していた…そう、私が助ける前に助かるのだ。


初めての出会いは、マンホールに落ちかけた彼女を助けようとした時。携帯片手に、不注意のまま落ちそうになった彼女はその豊満な胸と鞄とがひっかかって無事に助かった。


その次は、強盗に襲われた時。流石にこれはいかに彼女が豪運だろうと助かるまいと助けようとしたその時、1話のカラスが強盗を襲って、奇跡的に少女は無傷で助かった。


3度目は、もう助ける必要も無いだろうと思っていた矢先に頭にネジが落ちてきて血がだらだらに垂れながら病院に運ばれた。


そんなことを何度も繰り返すうちに、何故か彼女は私をはっきりと認識し、いつからか事の後に雑談をしたりお茶をする中になってしまった。


あぁ…私は、何をしているのだろう。そう思いながら、茶を飲み干した。

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ラゼラータ王国物語 鈴音 @mesolem

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