神に愛され神を憎む少年

黒詠詩音

第1話 神楽の少年

「君が神楽の子供かね?」

「おじさん達だれ?」


これは俺の遠い記憶。

 神楽の子供、と、言うだけで色々と優遇をされて来た。

 まだガキだった俺は、自分が特別な存在だと、勘違いしていた。

 本来は違う。

「おじさん達はね、君を保護しに来たんだ」

「保護?」

「そう、保護さ」

「だからおじさん達と一緒に行こう」


俺はあの時、見知らぬおじさん達に話しかけられ、手を取られそうになった。

 だけど、その時、俺を呼ぶ声が聞こえた。


「何処にいるの? ••••••」


俺を呼んだ、誰かの声、この人はきっと、

 その人の記憶は俺には存在しない。

まるで、誰かにかき消せられたの様に••••••


「••••••れ••••••ん」


誰かの声が聞こえる。

 一体この声は誰だ? 一つだけ分かる事がある。

 この声は俺にとって


「••••••いつまで寝てるの? いい加減に起きな蓮」

「何だお前か、なずな」

「何だお前か、じゃないよ蓮」

「俺はどのくらい寝ていた?」

「三時間もぐっすりと」

「そうか、すまん」

「またあの夢?」

「ああ、また

「あの日からずっと見ているね」


そうだ、俺はあの日からずっと同じ夢を見ている。


「蓮、そろそろこの村から出ないと」

「ああ、分かっている」


俺達は、今からこの村を出て行く。

 この狂った村から出て行く。


「おい、早く彼奴らを見つけ出さないと」

「分かっている」

「神羅の娘は調子に乗っている」

「だからといって、手を出す事はできない」

「ああ、村長の娘って言うのが厄介だぜ」


やっぱり、俺達を探しているか、ちっあのくそ村長め。

 俺達は村から出る準備をしていた。

その時、外から声が聞こえて来た。

 聞き耳を立てていた。


「やっぱり私達の事・・・・・・」

「ああ、探している」

「私達がやる事って無茶なのかな?」

「今更怖気づいたか?」

「そんな訳ないよ」


こいつが、今更怖気付いても可笑しくはない。

 俺達がやる事は前代未聞だ。

それにこれが村全体ではなく、国の少数トップにばれたら、俺達の親が極刑にはなる。

 なずなの親はともかく、俺の親は確定でなる。

 普通、親が亡くなる可能性がある、そんな一大事をやるのに躊躇いを持つ。

 だけど、俺の親、そしてなずなの親も自分達の子供の命より、村の掟を第一に生きている。


「ねぇ蓮どうやって切り抜けるつもり?」

「俺に考えがある」

「考え?」

「ああ、・・・・・・こう言う事だ」

「え、それ本気で言ってるの蓮?」

「当たり前だろ?」


さてと、俺の策をなずなにも伝えたし、そろそろ俺も動くか。


「くそ、神羅の娘はともかく、神楽のガキだ」

「あの方でさえ居ればな」

「お前ら俺をお探しか?」

「!? 蓮様そこに居ったのですか」

「さぁワタシ達と一緒に行きましょ!」


俺は村人達の前に出た。

 村人達は、俺を見つけた事にお喜びをしていた。

 でも、この喜びもすぐ絶望に変わる。

その前に少しでもいいから、なずなを逃がす。


「何で俺が、お前らの言う事を聞くんだよ?」

「一体何を言ってるんですか?」

「そうですよ、蓮様お痛は過ぎますよ!」

「俺に言う事を聞かせたから、力づくで来いよ」


俺は村人達に吠え、村人達に向かって中指を立てた。

 村人達は、俺の行動に戸惑い、怒りを露わにしていた。

 ああ、そのまま怒りで感情を支配しろ。


「舐めんなよクソガキ!」

「おいバカ、やめ」


三人くらい居る、男達の一人が、拳を握り、襲い掛かってきた。

 怒り任せで襲い掛かってきた。

このまま、真っ直ぐ来い。

 まだだ、まだ・・・・・・ここだ!


「避けねぇと怪我するぞ」

「それはてめぇがな!」


男は拳を振り抜いた。

 俺は顔を逸らし、男の拳を避けた。

カウンターとして、拳を振り抜いた。

 男の顔面に直撃し、そのまま勢いよく倒れた。


「どうした最初の威勢は?」

「黙れクソガキ・・・・・・」

「ああ、そうだな!」

「やめろやめろぉぉ」


俺は倒れ込んだ男に容赦なく踏みつける。


「お望み通り黙ったぞ? まぁお前がな」

「あのバカ」

「蓮様は神羅村の中でも」

「一、二位の実力者」

「どうしたお前らも来ないのか?」

「はは、蓮様に勝てる訳がありませんよ」

「でも、私達には私達の立場があります」


確かに、こいつらにはこいつらの立場がある。

 だけど、俺には俺で譲れない物がある。


「かかってこいよ」

「行かして貰います」


さっきの男とは違い、警戒しながら、距離を詰めて来る。

 そしてそのまま、拳を繰り出して来た。


「・・・・・・やっぱ、そんな簡単に当たらないか」

「普通、あの攻撃簡単に避けれないぞ?」


確かに、普通は今の攻撃は避けれない。

 人を倒す為に洗練された拳。

だけど、俺はそれを簡単に避けれる。


「相変わらず、凄い動体視力ですね!」


次はもう一人の男が、蹴りを繰り出してきた。

 こちらもそれなりに洗練された物だった。


「もう面倒だ、終わらせよう」


・・・・・・終わった。

 今、俺の目の前には無惨に倒れた、大人が三人も居る。


「これが神羅村が誇る」

「天才児」

のガキ」





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神に愛され神を憎む少年 黒詠詩音 @byakuya012

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