第29話「奪われた力」

クリーチャー撃滅作戦から数日後……。


数日間太陽光が届かなかった地球全体で急激に気温が下がり冬の様に寒くなっていた。

正信がストーブを出して来る。

「うー……寒っ……まさか8月にストーブを出す事になるなんてな……」

そこへ勇一が帰って来た。

「ただいまー、いやー、人が居ないから灯油貰ってお金だけ置いて来たよ」

「まぁ……仕方ないな……クリーチャーを全滅させてもこの空じゃ誰も安心して戻って来れないよな……灯油だって、その内無くなるぞ……」

「そうだね……早く邪神を倒さないと……」

勇一は灯油を買いに行っていた様だ。


早速ストーブを点け暖を取る勇一と正信。

「あー寒ぃ~……」

手を擦り合わせ摩擦で温めながらストーブの火に手をかざす。

まるで真冬の光景だ。

「その内食料も尽きる……さっさと、邪神を倒さないとヤバいぞ……」

「わかってるよ……でも、ルシフェルを倒してからクリーチャーも出て無いし……後はアスモデウスとゴルゴディウスだけだ……」

「最後の戦いは近いぞ……」

「うん……わかってる……」


そこへ、日菜乃と篤史も龍宝神社を訪ねた。

「こんにちはー」

「やぁ、いらっしゃい」

「いやぁ、寒いですね……」

正信と篤史が挨拶をかわす。

「日菜乃……どうした?」

「あっ……うん、お父さんと話して一緒に居た方がいいんじゃないかってなって……その方が灯油の節約にもなるし」

そう言って日菜乃は灯油の入ったポリタンクを見せた。

「なるほど……確かにそうだな」

「食料も持って来ましたよ」

そう言って篤史も持って来た食料を見せた。

中には、カンパンや缶詰め等の非常食と、水が数本入っていた。


今、東京に居る人はごく僅かだ……しかし、いずれ電気もガスも水道も止まり、食料も尽きてしまうだろう。

勇一はその前に何としても邪神との決着を着けたかった。


その頃、警視庁でも最後の戦いに向けて準備が進められていた。

1人の刑事が会議室に入ってくる。

「失礼します。科警研より特殊強化弾が届きました」

「よし……これで補充もオッケーだな」

牧田が確認しながら言う。


そこへ、葛城が入ってくる。

「お疲れ様です」

刑事達は一斉に敬礼しながら言う。

「お疲れ様です!!!」

「皆さん、本当にお疲れの所申し訳ないですが、我々もこれ以上被害を大きくする訳にはいきません。奥戸さんの強力でCSSのレベルを上げ、アスモデウスの居場所を見つける事が出来ました恐らくそこに邪神も居ます……」

「とうとうわかったか……このチャンスを逃す手は無いな……」

牧田が反応する。

「ええ……しかしまだGTN-1は前回のダメージの修復が終わってません……今直ぐにと言う訳には……」

そう、GTN-1は前回のルシフェルとの戦闘で受けたダメージによりシステムが大きく破損。

修復にも時間が掛かっていた。


その頃、藤波博士は研究所でGTN-1の修復を急いでいた。

「いよいよ最終決戦が近いな……急がなくては……」


そして、勇一は最終決戦に合流する為に警視庁に向かっていた。

そんな勇一の前にアスモデウスが現れた。

勇一はバイクを止める。

「お前は……」

アスモデウスが不敵に微笑む。

「龍神……あなたの力……貰いますよ……」

「何っ!?」

アスモデウスは怪人体に『変身』。

勇一も『火の宝玉』で『変身』。

龍神ドライガーが『ファイヤードラゴン』の姿で登場。


ドライガーはアスモデウスと戦う。

ドライガーはパンチを叩き込むが、アスモデウスには効いてない様子。

「何っ!?」

アスモデウスはそのままドライガーの腕を掴み投げ飛ばす。

そして更にドライガーに迫る。

ドライガーは立ち上がり『水の宝玉』で『ウォータードラゴン』にチェンジ。

ドライガーは『ドラゴニックランス』を手にアスモデウスに攻撃。

しかし、アスモデウスは『ドラゴニックランス』を掴みドライガーの攻撃を封じる。

ドライガーが押しても引いても『ドラゴニックランス』を動かせない。

「くっ……何なんだ……コイツは……」

そして、アスモデウスは『ドラゴニックランス』を叩き折る。

「え……?ウソだろ!?」

アスモデウスはドライガーを突き放し光弾を撃つ。

ドライガーは大ダメージを受ける。

そこへ、邪神ゴルゴディウスが現れる。

ゴルゴディウスはドライガーから『水の宝玉』を奪う。

「フッフッフッ……まず1つ……」

宝玉を奪われたドライガーは変身が解除。

勇一が、必死に抵抗する。

「邪魔だ」

ゴルゴディウスは勇一を蹴り飛ばす。

「残りの宝玉も奪っておきましょう」

そう言ってアスモデウスが勇一に迫る。


だが、そこにサイレンの音が聞こえて来る。

警察が到着した。

「チッ……邪魔が入りましたね」

「まぁ、いい……気にするな……」

ゴルゴディウスは『水の宝玉』を吸収した。

「ぐぁっ!?くっ……おのれ……龍神め……まだ抵抗するか……」

『水の宝玉』を吸収した途端ゴルゴディウスは苦しみ始めた。

邪神にとって龍神の力を取り込む事は相当な苦しみの様だ。

「まずい……ここは引きましょう……」

アスモデウスがゴルゴディウスを連れて姿を消す。


パトカーが数台到着し、勇一を発見。

「勇一さん!?」

火村が勇一に駆け寄り抱き起こす。

「勇一さん!しっかりして下さい!勇一さん!」

「火村さん……大丈夫……です……」

勇一はかなりのダメージを受けてはいたが、意識を取り戻した。

そのまま勇一は警視庁に向かった。


-警視庁-

「力を奪われた!?」

火村は驚いた。

勇一は力の一部を奪われた事を話していた。

「ええ……まだ、水の宝玉だけですが……」

「奴らは勇一さんの龍神の力を封じるつもりみたいですね……」

そう葛城が言うと、周りは騒然とした。

もしこのまま全ての宝玉を奪われれば邪神に対抗する手段が無くなってしまうからだ。

「大丈夫……宝玉は俺が必ず取り戻します!」

勇一はあえて明るく言った。

不思議と今までも死の淵から蘇った勇一の言葉なら信じられる。

そんな想いが刑事達にも安心感を与えていた。


「よーし……それなら俺達は俺達が出来る事を全力でやるぞ!!」

牧田の指揮で志気も上がった。

刑事達は早速装備の点検と、最終決戦の準備を始めた。

この作戦には蔵田隊長や寺本を失ってから体勢を立て直した自衛隊も加わる。

戦車部隊の編成もされ、いよいよ総攻撃の時が刻一刻と迫っていた。


だが、アスモデウスは既に動き出していた。

アスモデウスは街を無差別に破壊し始めた。

どうやらドライガーを誘きだそうとしている様だ。


警視庁にも連絡が入った。

「クソッ……こっちの準備はもう少し掛かるってのに……」

牧田は苛立ちを隠せなかった。

「俺が行きます!」

そう言って勇一は出ていく。

「あっ、おい……勇一君……」

牧田が声を掛けるが勇一は行ってしまった。

その時、火村のスマホに藤波博士から電話が入った。

「はい、火村です」

「火村君……GTN-1の修復が終わったぞ!」

「わかりました、今から行きます!」

火村は藤波博士の研究所に向かう。


その頃、勇一は既にバイクで現場に向かっていた。


現場に着くと、アスモデウスは相変わらず無差別に街を破壊していた。

「アスモデウス……お前を許さない!!」

勇一は『火の宝玉』で『変身』。

龍神ドライガーが『ファイヤードラゴン』で登場。

「やっと来たな……」

ドライガーは『ドラゴニックボンバー』を繰り出す。

しかし、いきなり必殺技を使ってもアスモデウスには通用しなかった。

アスモデウスが反撃し、ドライガーにダメージを与えた。

ドライガーは『風の宝玉』で『ストームドラゴン』にチェンジ。

一度空に避難し、上空から攻撃を仕掛ける。

『ドラゴニックヴァレット』でアスモデウスを攻撃する。

しかし、アスモデウスもその攻撃を避け空に向かう。

激しい空中戦を繰り広げる。

そして、アスモデウスの攻撃でドライガーは地上に落下。

そこに、ゴルゴディウスが現れドライガーを襲った。

ゴルゴディウスの攻撃で、『風の宝玉』を奪われた。

ドライガーは変身解除。

ダメージで動けない勇一から残りの『火の宝玉』と『土の宝玉』『雷の宝玉』を奪った。

「くっ……か……返せ……」

「フンッ……貴様はこれで……ただの人間だ……」


アスモデウスとゴルゴディウスは去って行く。


「クソッ……チクショー……」


続く……。

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