第26話「稲妻の戦士」
医師達の懸命の処置も虚しく勇一の心臓は止まった。
心肺蘇生を試みたが、勇一の心臓が再び動き出す事は無かった。
集中治療室から医師達が出てきた。
「先生……息子は?」
正信が問い掛けるが……。
医師はうつむき気味にこう言った……。
「手は尽くしたんですが……残念です……。13時23分……死亡を確認しました。お悔やみ申し上げます」
医師達は一礼して去って行った。
正信は膝から崩れ落ちた。
「そんな……勇一……勇一……!?」
葛城も黒島巡査も掛ける言葉が無かった……。
龍神の力によって回復力が高いはずの勇一でさえ回復が追い付けない程のダメージ。
それに加え邪神ゴルゴディウスの力は凄まじい物だった。
それからしばらくして、正信は悲しみに暮れながら家に帰って来た。
そして勇一の母親の仏壇の前で手を合わせる。
「母さん……すまん……。勇一を守ってやる事が出来なかった……そっちに勇一が行ったら頼むな……」
そう言いながらお鈴を鳴らす。
火村は警視庁に戻り葛城から報告を受けていた。
「え……?ウソですよね?勇一さんが死んだなんて!?ウソだと言って下さい!!」
火村も勇一の死が受け入れられず葛城に掴み掛かる。
「残念だが……本当だ……」
葛城も無念の表情を浮かべながら答える。
「そんな……寺本さんも……蔵田隊長も亡くなったのに……勇一さんまで……」
「何っ!?寺本さんと蔵田隊長まで!?」
葛城は驚いて聞き返した。
どうやら葛城はまだ寺本と蔵田の死亡の報告を受けて居なかった様だ。
そこに藤波博士から電話が入り『Gアクセラー』の修理が終ってるから取りに来て欲しいと連絡があった。
火村は『Gアクセラー』を取りに向かう。
時刻はすっかり日が暮れ……と言っても空は闇に覆われ続けている為太陽は見えないが……。
その頃、龍宝神社の前に一台の車が止まった。
車から降りて家の方のインターホンを鳴らす。
どうやら来客の様だ。
「はーい」
と正信が出るとそこには……。
日菜乃と父親の篤史が立っていた。
「こんちは……」
日菜乃は相変わらずの性格だ。
「コラっ!こんちはは無いだろ。ちゃんと挨拶しなさい!すみません……ご無沙汰しております」
篤史が正信に頭を下げた。
「いえいえ……どうぞ上がって下さい」
正信は日菜乃と篤史を招き入れた。
しかし何故日菜乃が急に来たのか。
日菜乃はドライガーのフォースドラゴンの反動を抑える為、霊力を上げる修行に出ていた。
話を聞くとどうやらその修行を終え帰って来た様だ。
しかし、日菜乃は必死に修行をしたのだろうが少し遅かった。
日菜乃がもう少し早くフォースドラゴンの反動を抑える事が出来ていれば勇一は助かったかも知れない。
正信はそう思いながらも言葉を押し殺しお茶を淹れた。
日菜乃と篤史がお茶を飲み一息つくと……。
「ところで勇一は?」
日菜乃の突然の質問に正信は一瞬固まった。
当然と言えば当然の質問だ。
別に日菜乃は無神経な事を言った訳ではない。
正信は少し考え正直に話す事にした。
「勇一は……ついさっき死んだよ……」
その言葉に日菜乃と篤史は驚愕した。
「も……申し訳ありません!娘が無神経な事を言いまして!!」
篤史はその場で慌てて正信に土下座した。
しかしもう一度言っておくが、別に日菜乃は無神経な発言をした訳ではない。
「いえいえ……そんな!大丈夫ですから頭を上げて下さい」
日菜乃もショックを受けた様で言葉が出て来ない。
日菜乃は言葉を失ったまま出て行ってしまった。
「日菜乃!?」
篤史が呼び止めるが日菜乃はそのまま飛び出して行く。
日菜乃は悔いていた。
自分がもっと早く修行を終えていれば、もっと霊力が強ければ勇一を死なす事は無かったかも知れないと。
その頃、火村は藤波博士の研究室に到着した。
「ほれ、出来たぞ」
藤波博士が火村に『Gアクセラー』を渡す。
火村もそれを受け取る。
「博士……勇一さんの事聞きましたか?」
「ああ……葛城君から聞いたよ……残念だが……」
「勇一さんの力でも勝てなかった相手に私は勝てるんでしょうか?」
「はっきり言って無理だな。通常のクリーチャーが相手なら勝てるだろうが、あの強さでは無理だ……」
藤波博士本当にはっきり言う。
しかし、まずはイナゴクリーチャーの撃滅作戦が行われるだろう。
悩んでなどいられない。
火村は警視庁に帰って行く。
その頃病院の霊安室では……
勇一の遺体が寝かされていた。
顔には白い布を被せられぴくりとも動かない。
しかしこの時、勇一の体内では何かが起こっていた。
その頃、篤史は正信にある書物を見せていた。
それは篤史の家で新たに発見された龍神に関する書物だった。
「これは……先日家の蔵で見つけた物なんですが……」
正信が見せて貰うとそこには現代の言葉に訳すとこう書かれていた。
《龍神の命尽きし時、雷の如く雷鳴と共に新たな龍神目覚めん》
「この龍神の命尽きし時と言うのは龍神の力を得た者の死を意味するのだと思います」
そう篤史は言う。
「では次の雷の如く雷鳴と言うのは?」
正信が聞き返す。
「それは恐らくそのまま雷の事だと思いますが、それと共に、新たな龍神目覚めんと言うのは雷を受ける事で新たな力が目覚めると言う事ではないでしょうか?」
「雷で勇一が目覚めると言う事ですか?」
すると正信はある事を思い出した。
「電気ショック……」
そう電気ショックが雷の役割を果たし勇一の体では何かが起きていたのだ。
霊安室で眠る勇一の体内では4体の龍神が心肺蘇生用の電気ショックで得た電気の力を利用し、勇一を生き返えらせようとしていた。
その頃、火村はイナゴクリーチャーの出現を感知し、現場に向かっていた。
イナゴクリーチャーは獲物となる人間を探して警察官や自衛隊員を襲っていた。
火村が現場に到着。
『変身』。
GTN-1が登場し、イナゴクリーチャーと戦う。
警察官達からイナゴクリーチャーを引き離し『Gランチャー』でイナゴクリーチャーを倒す。
しかし、1体倒してもイナゴクリーチャーはどんどん寄って来た。
「くっ……やはり1人では……」
GTN-1は『ハイパーフォーム』にチェンジ。
『Gバルカン』でイナゴクリーチャーを次々に倒して行く。
しかし、それでも一向に数は減らない。
GTN-1が追い詰められて行く。
「まずい……このままじゃ……」
その時、空からの雷撃がイナゴクリーチャー達を一掃した!
「何っ!?」
驚くGTN-1。
そしてその雷撃を日菜乃も見ていた。
そして日菜乃は父から聞いた雷の龍神の事を思い出した。
もちろん雷の音は篤史や正信にも聞こえた。
2人も外に様子を見に来る。
「お父さん!行ってみよう!!」
日菜乃が呼び掛け3人で現場に行ってみる事に……。
現場ではGTN-1も何が起きたかわからず辺りを見回していると……。
誰かがゆっくりとこちらに向かって歩いて来た。
それは黒いボディに稲妻のラインが入ったドライガーだった。
「ドライガー!?」
ドライガーは新たな姿『ライトニングドラゴン』となって復活した。
そしてまたイナゴクリーチャーが集まって来る。
ドライガーは新たな武器『ライトニングソード』を手にイナゴクリーチャー達と戦う。
その一撃一撃に雷の力が込められイナゴクリーチャー達を次々に倒して行く。
「凄い……」
呆気にとられるGTN-1。
更に凄いのはここからだ……。
ドライガーは右手を上げると空から闇を突き抜け雷がイナゴクリーチャーに向かって落ちてきた。
ドライガーは雷を操る能力を得ていた。
「トドメだ」
そう言うと『ライトニングソード』を上に振りかぶってから振り下ろした。
必殺技『ライトニングブレイク』がイナゴクリーチャー達を倒す。
その場に居たイナゴクリーチャーは全て倒された。
「やった!」
GTN-1がガッツポーズ。
そこへ正信、日菜乃、篤史の3人も車でやって来た。
「勇一……なのか?」
正信が問い掛けると……。
ドライガーは変身を解除。
勇一は笑顔で……。
「ただいま!」
続く……。
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