第25話「ドライガー死す……」

ゴルゴディウスの闇は世界を覆い尽くした。


正信は勇一の事が心配になり病室を飛び出した。


街を走り回り勇一を探すが……勇一の居場所がわからず途方に暮れる正信。

「勇一……何処だ?何処に居るんだ?」


そこへ1人の警察官が声を掛ける。

「この辺りは危険です。直ぐに避難して下さい」

しかし正信は……。

「息子が……息子が危ないかも知れないんだ。避難なんてしてる場合じゃない!」

「そうですか……わかりました。では一緒に探しましょう」

警察官は正信をパトカーに乗せ勇一を探すのを手伝ってくれる事に。


その頃、病院では火村が目を覚ました。

起き上がると腕に『Gアクセラー』が無い事に気付く。

辺りを見回すが……無い。

「そうだ……僕は……あのクリーチャーにやられて……」

火村は自分の身に起きた事を思い出し、病室を抜け出した。


その頃、小田と川島はイナゴクリーチャー撃滅作戦の手伝いをしていた。

そこへ小田のスマホに着信がある。

「火村……?」

小田が電話に出る。

「火村か?お前目を覚ましたのか?」

「ええ……たった今。それより小田さんGアクセラーを知りませんか?」

「ああ、それなら葛城警視が藤波博士に修理を頼むって持って行ったぞ」

「そうですか、ありがとうございます」

「あっ、ところでお前……ちょっ……」

電話は既に切れていた。


火村は病室に戻ると急いで着替えをし、出て行った。


勇一を探す正信は警官と一緒にクリーチャーが出現してた場所に向かっていた。

「あっ!居ました!」

倒れてる勇一を発見。

パトカーを止め正信が降りる。

「勇一、勇一!」

正信が名前を呼び続けるが反応は無い。

そして、警官は近くで倒れてる葛城を発見。

「あっ……、この人は……葛城警視!!」

そして、勇一と葛城をパトカーに乗せ病院へ急ぐ。


その頃、火村は藤波博士の研究室に到着。

「博士!私のGアクセラーは?」

「ん?おお、火村君か。もう少しで修理が終わるから待っていてくれ」

まだ、修理中だが、もう少しと言うのでその場で待つ事にした。

「今回は随分派手にやられたな……」

「ええ……何も出来ませんでした……」

そんな会話をしながら藤波博士はふとある事を思い出していた。

「そういえば……ゲシェードの王が現れた時も似たような事があったな……」

「え……?」

そして、藤波博士はゲシェードの王との戦いの事を話し出す。


今から3年前、ゲシェードと呼ばれる異世界からの侵略者とグレイザーが戦って居た。

だが、ゲシェードの王が初めて現れた時グレイザーとして戦った守は恐怖を覚え戦えなくなってしまった事があった。


それを聞いた火村は……。

「そんな……信じられません……あの守さんが……」

「まぁ、信じられないのも無理ないが……守君はまだ大学生だったしな。戦いも成り行きでそうなっただけだったから……戦う事に怖さを覚えたんだよ……」


「3年前……自分はまだ警察官になったばかりで、東京にも居ませんでしたから先輩から当時の話を聞いただけなんですが……グレイザーは本当に勇敢に戦って世界を救った英雄だと聞いてましたから……」


「誰だって初めからヒーローな訳じゃないと言う事さ……」

そう言いながら藤波博士は火村にコーヒーを出した。

「あっ……ありがとうございます……」

「戦うのが怖いのは当たり前さ……」

その言葉を聞き火村は思った。

当時大学生だった守が世界を救ったなら警察官であり人々を守るのが仕事の自分が戦わない訳には行かないと。

「博士、まもなくクリーチャー撃滅作戦が始まると思います。その時自分は最前線で戦います。だから、一刻も早く修理をお願いします」

そう言うと火村は修理を待たず飛び出して行った。

「やれやれ……もう少しだと言ってるのに……。葛城君の下には似たような部下が集まるのかね……」


その頃、葛城と勇一は病院に運ばれていた。

あれだけ回復が早かった勇一が更に重症を負いカムバックしてきた事に医者も驚いていた。


勇一は集中治療室に運ばれ処置を受ける。


「勇一……」

正信が心配そうに勇一の様子を見ている。


葛城は病室のベッドの上で目を覚ました。

「あっ……葛城警視、目が覚めましたか?」

「君は……?」

「はっ!豊島警察署、豊島3丁目交番の黒島宏樹(くろしま ひろき)巡査であります!」

と敬礼をして挨拶をする。

「そうか……君が助けてくれたんだな。今度改めてお礼に行くよ」

「はっ!光栄であります!」

黒島巡査はまた敬礼をした。

「そうだ、私と一緒にいた青年はどうした?」

葛城が尋ねる。

「はっ……今、集中治療室に……」

「何だって!?」

葛城は急いで集中治療室に向かう。


「何て空だ……」

火村は空を見上げて呟いた。

すると、近くでCSSがクリーチャーを感知。

「出たか……」

火村は現場に向かう。


現場では既に自衛隊がイナゴクリーチャーと戦っていた。

戦っている自衛隊の中には蔵田隊長の姿が……。


火村が現場に到着し、加勢に入る。

「蔵田隊長!加勢します!」

火村はライフルを向けイナゴクリーチャーを撃つ。

「あなたは……火村さん!」

「寺本さんは?」

「……死んだよ……」

「え!?」

イナゴクリーチャーと戦いは続く。


自衛隊にも勿論特殊強化弾が支給されイナゴクリーチャーに攻撃している。

しかし、やはり倒すまでは行かなかった。


イナゴクリーチャーに反撃され自衛隊員も次々に倒されて行く。

「寺本さんが死んだってどうゆう事ですか?」

「話は後だ。それより……変身しないのか?」

「あっ……それが……今修理中で……」


そう、これはかなり絶望的な戦いだった。

Vソルジャーとして戦っていた寺本は死に、ドライガーの勇一は倒れ、GTN-1は戦闘不能状態。

つまりクリーチャーを倒せる程の戦力が何も無かったのだ。


蔵田隊長は撤退を命令。

自衛隊はその場を離れ撤退する。


その頃、すっかり人々が居なくなった東京に向かう一台の車があった。


撤退した自衛隊と火村は安全な場所を見つけ休息を取って居た。

「あの……寺本さんが亡くなったってどうゆう事ですか?」

「俺もその場に居た訳じゃないから詳しくはわからん。だが……ドライガーがクリーチャーと戦っていた場所に寺本の遺体があったんだ」

「そんな……」


その頃病院では、勇一の容態が悪化していた。

心拍数が下がり脈拍も低下。

このままでは命が危ない。


「勇一!!」

勇一を心配する正信と葛城、黒島。

医師達も懸命に勇一を救おうとする。


そして自衛隊と火村にもイナゴクリーチャーが再び迫る。

「来たぞ!逃げろ!!」

蔵田隊長の指示で隊員達はその場を離れる。

しかし、隊員達が逃げた先にもイナゴクリーチャーが回り込み襲われる。

自衛隊員達は次々に犠牲になっていく。

「火村さん、ここは我々が食い止めます。急いでここを離れて戦う準備を整えて下さい」

そう言うと蔵田隊長はイナゴクリーチャーに攻撃し、イナゴクリーチャーの気を引いた。

「蔵田隊長!!」


「逃げろー!!早く……逃げろー!!」

火村は走ってその場から逃げる。

蔵田隊長は火村が離れたのを確認すると……。

手榴弾を落とし爆発。

イナゴクリーチャー達を巻き込んで自爆した。


爆風に吹き飛ばされる火村。

「そんな……蔵田隊長ー!!」


そして勇一にも最大の危機が迫っていた。

「勇一……」

心電図はほんの少し波打つ程度にまで下がっていた。

医師や看護師が懸命の処置を続ける……。


しかし……


ピーーーー……。

勇一の心臓は止まった。

「勇一!!」


医師達は急いで心肺蘇生を行った。

勇一の胸に電気ショックを掛ける。

しかし、脈拍は戻らない。

もう一度電気ショックが行われる。

まだ、脈拍は戻らない……。

もう一度……もう一度……もう一度……。


何度電気ショックをしようが、勇一の心臓が動き出す事は無かった。


「そんな……勇一……」

正信は勇一の死にショックを受け泣き崩れる。


続く……。

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