さなぎ

第1話

　なぜ人は嘘をついてしまうのか、そこに過去の嘘があるからだ。

　嘘も方便とも言うが、この現代社会日本において大義があろうとなかろうと嘘をつかずに生きるのは難しい。SNSというのは嘘の百鬼夜行であるし、嘘を嘘であると見抜けないものはなどということわざめいた言葉もある。大きく見せるための嘘、誤魔化しの嘘、自分を守る嘘、空気を読む嘘、意味のない嘘、ああわたる世間は嘘ばかり！

　しかしそんなことを考えているような私は、自分のついた嘘にほとほと困っている一人なのだ。

　東京に出てきてから早13年、分不相応な都心の1Kで一人暮らし。31になる身体に鞭打ち、サラリーマンとしての本懐のみをこなしてきた私に、この春から付き合う彼女が出来た。大学のサークルの後輩であったまさみとは、もう8年ほど面識は無かったが、私が住む月島から、ふらと立ち寄った門前仲町の少しレトロでモツ煮が絶品な居酒屋で偶然に出会ったのである。

　居酒屋で出会って昔話で談笑をしてから、彼氏彼女の仲になるには、時間と艱難がかかったが、今や私はそこに至っている。成し遂げたのだ！本当は諸君らにはこの結果だけを伝えておけばそれで良いのだが、それでは面白くなかろう。ここからが本題であるところで、私はこの結果の過程で嘘をつきにつきまくった結果ほとほと困った状態になってしまったのである。