永遠の誓い

あの日、雨も止み、優美のお母さんからも大説教を受けた。


「学校でなにしてんの!!!!」


…そこ?やはりこの母娘は若干ズレている。



それから、優美先輩は再び病棟に戻った。

俺も、花壇の世話を再開し、しばらく変わらない日々が続いていた…。


しかし、日常というのはぱーっと音を立てるように消えてしまうようで…



…優美の容体が急変した。

それを知った俺は、病棟に走った。



「優美先輩!」

「はぁっ、はぁっ……涼…クン…?」


どうしてここに、といった感じでこちらを見る優美先輩を、涼は抱きしめる。

優美は急なことにビックリして目を見開くが、そんなの関係ない。…こうしていないと、優美先輩が消えて、離れて行ってしまうように感じて…。



「ねぇ、涼クン…。」

「なんですか、優美先輩」

「今だけ…優美って…呼んで…?」


「っ!…ゆ…優美っ!!」

「えへへ…ありがと…」


「涼…クン…」

「はい…?」


今まで生きてきて、一番嫌な予感がした。

優美はか細い声で、

「花壇の…事…お願い…するね…」


その予感は的中してしまった。

「優美!?優美ぃぃ!!」



優美は亡くなった。…急すぎた。俺はショックでしばらく学校へ行けなかった。


でも…


「託されたんだ…花壇…」


遺された花壇を必死に、独りで世話をした。優美も…こんな気持ちだったのかな。


明くる日も毎日、毎日、花壇の世話をした。学校を卒業しても、職に就いても…定年退職して、老いた身体でも…



そして、いつものように花壇へ向かう涼。そこで涼は理解できない光景を見た。


重機が、花壇を破壊していた。そんな話は全く聞いていない。


涼は、近くに居た学長を問い詰めた。

「貴方は…ずっとこの花壇を世話していた方だね。これしか言えないが…すまない。学園事業の一環で、この花壇のスペースは別の事に使われてしまう事になってね」

「そんな…そんなの…あんまりすぎる…」


今まで自分が費やしてきた時間なんてどうでもいい。優美との誓いを守れなかった。それが、それだけが、ただ悔しかった。


「…ん?」


悔しさに膝をついた、その足元に、何か箱があった。薄汚れた、一つの箱が。

迷わず涼はその箱を開けた。…手紙?



「お疲れ様っ!!」

「っ!!」


間違いない…これは…


「今、この手紙を見ているって事は…花壇、壊されちゃったんだね。でも、貴方はそれまでずーーーっと誓いを守ってくれた。…ありがとう。大好きだよ、涼クン。」


優美…………!!


「くぅ、うううっ…あぁぁぁあああ……!!」



しばらくその場で泣き崩れる涼だった。そして…役目を果たしたかの如く、涼も病に伏せた。



「優美…俺にもお迎えが来たみたいだよ…今、逝くから…」

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病弱の君 びたーすてら @A_ma_ka_sa

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