雨の降る学び舎で
今日も放課後から気合を入れて花壇の世話。
ええっと、こいつにはあれ撒いて、ここには確かこれを植えて…
若干うろ覚えだったが、優美の指示を忠実に。
お見舞いに行く度に花壇の状況と次にする事を聞いたりしているのだ。それでなんとか。
「わぁ!すごいすごい!涼クンにしてはよくできてるね!」
そう、この人………って、
「んん!?はぁ!?」
「きゃあ!?急に大きな声出しちゃ駄目でしょ!」
「あ、すんません…じゃなくて。どうしてここに?」
「花壇が気になっちゃって…てへ」
「全く…一回り見たら戻らないとだめですよ」
「あはは、すっかり涼クンの花壇だね」
「…託されましたから」
ボソッと言う涼。
「ん?今何か言った?」
「え?あ、いや、なんでもないですよ」
優美の命はそう長くはない。…ちょっと褒められる程度じゃだめだ。もっとしっかりしなければ…。
「ほえ~…ほんっとにこれ涼クンがやったの?すごいねぇ。才能あるよ!」
「花壇の手入れの才能、ですか…それもいいですね…ん?」
ポツっと腕に…雨か。そういや今日は夜荒れるって予報だったっけ…忘れてた。これは、不味いな…。
「優美先輩、雨、降ってきたんで戻った方が」
「今からじゃ間に合わないよ…あ、そうだ」
じゃらっと鍵の束を見せてくる優美。謎の蛇のキーホルダーが際立つ。
「これが、そこの養護室の鍵~!」
何者だこの人は。まぁそれならそれで…
「じゃあ養護室に避難してて下さい。」
「え?涼クンは?」
「俺は…」
雨風に負けないように、花達にブルーシートを張っていく。普段はここまでしないのだが、今日はかなり荒れるらしいから…念のためだ。
と、シートを持って二か所目に移ろうとしたその時。優美先輩がすっ飛んでくる。
「私にも手伝わせてっ!」
「なっ…もうかなり降ってますから。身体に障ります、養護室で…」
「やだもんっ!これくらいなら…!」
止めても無駄そうだ。なら、とっとと終わらせてしまうまでか…!
…。
なんとか全部の花壇にブルーシートをかけ終えた二人。
急いで養護室に駆け込む二人。
「はぁ、はぁ…優美先輩、大丈夫ですか?」
「う、うん…ちょっと…寒いね…」
ちょっとどころじゃなさそうだった。顔は真っ青、身体もブルブル震えていた。
「タオルくらいはあるな…着るものは…流石に無いか。先輩、タオ…ル…」
優美の方を向くと、何故か服を脱いで、こちらを見ていた。
「ねぇ涼クンも脱いで…濡れたままじゃ、風邪ひいちゃう…」
「えっ、あっ、そう…っすね……」
言われるがままに後ろを向いて。制服に手をかけたのは…優美だった。
「先輩ッ!?」
「えへへ…たまには、いつも頑張ってる、涼クンを労わなきゃ…って…」
拙い手付きで涼の制服を脱がし、タオルで優しく身体を拭いてくれる。
「さ、次は優美先輩ですよ。嫌とは…言わせませんよ?」
「う。うん…優しく、お願いします…。」
まるで骨董品の手入れをするかのような力加減で優美の身体を拭いていく。
「ひゃん…くすぐったいよ…」
「す、すんません…」
お互い身体を拭き終え…養護室のベッドを借りる事に。
「えへへ…二人だと、ちょっと狭いね」
「そりゃそうでしょう」
「でも…こうしてると…暖かい……。」
「涼クン…好き…だよ…」
「俺も優美先輩の事、愛してます…」
身を寄せてくる優美。抱き合い、キスをした。
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