託されたモノ

しばらく療養を余儀なくされた優美に代わって、


「俺が…なんとかしなきゃ」


花の事はそこまでよくわからなかったが、優美から教わった事をノートにメモって、必死に花壇の世話をする涼であった。


「ありがとう。精が出るわね」

「あ、あなたは…あれ?優美先輩のお母さん?」

「そう、養護室からは花壇とあの子がいつも見えていてね…」

「てか、養護の先生だったんですね」

「教頭先生にちょーっと無理を言ってね…ふふっ」


そうだったのか…なんとなく合点がいった。


「でも、弱った身体をおしてまで、彼女がこの花壇を世話する必要は…何かあるんですか?それも、独りで…」

「この花壇はね、優美のお爺ちゃんの遺していったモノなの。」

「!!…何があったか、聞いても…?」

「昔、お爺ちゃんもこの花達を独りでお世話していたわ。それはもう、庭園と言えるほどだった。優美はそれに魅かれてちょっとずつ花の世話を覚えていった…矢先だったわ。」


「お爺ちゃん、工事中の重機がバランスを崩した時に運悪く下敷きになってしまってね…亡くなったわ。その影響で、庭園の規模も今の形になってしまったのよ。」

「そんな…」

「それから、優美はお爺ちゃんの遺志を継ぐように、独りで、この花壇を守り続けてきた、と言う訳なの。」


「じゃあ、今回体調を崩して倒れたのは俺が無理させたから…?」

「いえいえ!そんなことはないわ。あの子は多分嬉しかったのよ。今までずーっと独りだった所に、声をかけてくれる人が現れたから。」


俺は思ったより難しい顔をしていたのだろう。優美の母からぽんぽんと頭を撫でられ、

「これからも、優美の事、よろしく頼むわね♪」


「…はいっ!!」

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