ハイケンスのセレナーデ

鐵 幻華

プロローグ はじまりの汽笛

小さい頃に誰しも一度は「ブルートレインに乗りたい!」と思ったことはないだろうか?勿論小さな頃から鉄道が大好きな俺みたいなやつはそう思うのは当然だが、鉄道が好きでなくても「ブルートレイン」には自然と惹かれるだろう。そんな不思議な魔力を放つ青15号に白色や金色の帯が絡まりさらに魅力を引き立たせている。駅で眺めいて頃その列車に乗る人々はどこか神秘的で美しく見えた。そして俺が初めてブルートレインに乗ったとき、ホームから一歩車内に入るとそこには城が広がっていた。食堂があり、シャワーがあり、ベットがある。これはまさに城と言っても過言ではないだろう。個室に入るとそこは最高級のホテルだった。実際にはB寝台だったのでそこまで広くはなかったが当時の俺にはこの車両の小さな一室が世界の中で一番輝いて見えたのだった。外に見える景色は城のガラスを通して見ているからなのか、ここに世界で一番美しい景色が映っていると本気で思った。街のネオンや家やビルから放たれる光そしてなんといっても俺たちを照らしてくれる月の光…ちょうどこの日は満月だったため大きな満月が窓の縁ぎりぎりのところに大きく写っていた。窓には少々水滴がついていた。その水滴は外の景色を一つにまとめた美しい宝石に見え た。今考えてみると当日は雨が降っていて室内は暖かかったので結露した水滴だったのだろう。だが俺はその水滴を手でなぞりが反射した光が写っていたのだろう。幼いながらそれは生きるための喜びに溢れているように見えた。こんなに素晴らしい経験が今まであっただろうか?

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