悪魔な双子ちゃんが「てるてる坊主」を作ってみました!【なずみのホラー便 第132弾】

なずみ智子

悪魔な双子ちゃんが「てるてる坊主」を作ってみました!

 ずっと降り続いていた雨は、今朝にようやく止んだ。

 久々に町へと出かけた私は、偶然に元同級生の友子に会い、近くのカフェでお茶することになった。


 友子は、ちょうどお姉さんの家に届け物をした帰りであったらしい。

 私の記憶では、二歳年上のお姉さんは大学を卒業して二年後ぐらいに結婚していたはずだ。

 それから、男女の双子が生まれたらしいということも風の噂で聞いている。

 何よりも私の記憶に残っているのは、友子とお姉さんの折り合いがあまり良くなかったということだ。


 私の目から見ても、友子のお姉さんは確かにヤな感じの人だった。

 今や完全に死語となっているが、まさに”タカビー”といった言葉がしっくりとくるような女性だった。

 まあ、何事もそつなくこなせ、そうなってしまうだけの能力や容姿の持ち主ではあったともは思うけれども。


「数年前まで、お姉ちゃんは私と顔を合わすたびに言ってたのよ。『私の人生はなんて上手くいっているのかしら? 全てが計画通り、ううん、何もかもが計画以上よ。結婚にしたって好条件の男に見初められたうえ、誰もが挙げられるわけじゃないゴージャスでリッチな結婚式だって、この私は挙げることができたわ。あの結婚式の素晴らしさは一生の思い出よ。新婚生活も一戸建ての新居でスタートだったし、一年もしないうちに妊娠も分かって……おまけに授かったのは男女の双子よ。私は息子も娘も、一度に手に入れることができたのだから』ってね」


 結婚や子どもの性別についての考え方や願望は、人それぞれであるわけだから、お姉さんが間違っているとは言えない。

 でも、その自慢を幾度も聞かされ続けていた未婚の妹の心境はたまったものじゃなかったろう。


「その双子たち……”一応は”私の甥と姪にあたる子たちなんだけどね。赤ちゃんの頃は可愛く思わないわけではなかったんだけど、成長するにつれて、なんだかおかしいなって……二人とも悪気なく”とんでもないこと”をしでかしちゃうんだよね」


 友子がフーッと息を吐く。


「お姉ちゃんも、あの子たちが家の内外でしでかしたことの全てを私に話したわけじゃないだろうけど、幼稚園からの呼び出しは一度や二度じゃなかったみたい。数年前までの可愛い我が子たち自慢はどこへやら、すっかりやつれちゃってる。ご自慢の美貌もどこへやら、といった感じにね。さすがに子どもたちに向かって直接言ってはいないようだけど、『あの子たちは、私の人生を狂わせにやってきた悪魔としか思えないわ。どうして、こんなことになってしまったの? どこかでやり直すことはできないのかしら?』って、散々に見下していた私にまで愚痴ってくるんだから」


 あのお姉さんのやつれた顔というのはなかなか想像できないが、実の母親に悪魔と言わせるほど、双子たちは相当な問題児であるらしい。

 もしかしたら、そのうち”子どもたちの悪戯”では済まないことをしでかしてしまうかもしれない。


「このところ、ずっと雨が降り続いていたじゃない。だから、あの子たちは昨日の夜、二人で”てるてる坊主”を作ったのよ。ねえ、あの子たちはてるてる坊主を”何で”作ったのだと思う?」


 私の喉がゴクリと鳴る。

 そう、恐怖によって。

 双子たちが作ったのは、普通の”てるてる坊主”ではないだろう。

 まさか、小動物を殺害し、その首で”てるてる坊主”を作ったとでも言うのであろうか?


「あの悪魔な双子たちは、お姉ちゃんが大切に保管していた自慢のウェディングドレスで”てるてる坊主”を作ったのよ。私に向かって、『凄く綺麗でしょ。オートクチュールのウェディングドレスよ。若いうちにウェディングドレスを着ることができて、本当に良かったわ。あなたにはこんな素敵なウェディングドレスは着こなすことは無理だろうけど……あなたなりの”女の幸せ”を早く掴みなさいよね』って言ってたウェディングドレスをね。少し目を離した隙に、思い出のウェディングドレスを我が子たちにズタズタに切り裂かれてしまったお姉ちゃんの目は真っ赤になっていたわ」


 そう言った友子は、クスクス笑い始めた。


「これからますます、あの双子たちには困らせられるでしょうね。ほんと、結婚式の日こそが”あいつ”の人生のピークだったに違いないわ」



(完)

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