Chapter 6-4

 美里が玄関ロビーまで駆け付けると、そこでは紗悠里と棗が魔どもの軍勢に手を焼いている姿があった。

 美里はクナイを投げ付けつつ、彼女らの元へ降り立つ。


「大丈夫ですか!?」

「美里さん! 空さんは!?」


 自分たちの事など構うなと言わんばかりの紗悠里の問いに、美里は唇を噛み、答える。


「申し訳ありません、敵の手に……!」


 どんな叱責でも受けるつもりだった。ゲイルに瞬間移動の能力があるのは京太から聞いていたのに。空から離れた自分のミスだ。


「分かりました。すぐにここを突破して、救助に向かいましょう」

「ああ。ここで悔んでる暇なんてねぇぜ」

「私たちも彼女を止める事ができなかった。謝らなければならないのは私たちも同じです」


 だが、紗悠里も棗も、美里の前に出てそう告げただけだった。

 そう。今するべき事は、ここで失敗を悔やむ事ではない。一刻も早く、空を助けに向かう事だ。


「……はい――!」


 美里は頷き、懐から新たなクナイを取り出す。

 と、ここで玄関ロビーに入口側から足を踏み入れる者の姿があった。


 あやめだ。背には不動の姿がある。


「あやめ様!」

「マズいっ……!」


 紗悠里が声を上げ、棗が舌打ちする。


 新たな人影に魔どもが反応した。あやめに標的を変え、奴らは一斉に駆け出した。


 美里は考えるより先に動いていた。分身を生み出しつつ魔どもの前に回り込む。その最中に、美里はあやめに襲い掛かろうとした魔どもを全て斬り伏せていた。


「美里ちゃん!」

「あやめちゃん、下がってて」


 美里は足を滑らせるようにして移動を開始した。摩擦など存在しないかのような美里の動きは神速の域に達し、その動きのままに斬り付けた魔どもは、自分の身に何が起こったのかも分からず絶命していった。


 紗悠里と棗も残った魔どもを一掃し、こちらへ駆け寄って来る。


 そんな三人へ向けてあやめは声を掛ける。


「ありがとうございます、皆さん。行きましょう、外に頭領様たちが!」

「分かりました。旦那は俺が」


 頷く三人の中で、棗が不動の身体をあやめから預かる。

 そうして四人が外へ出ると、上空から落下してくる京太と、その向こうに佇む空とゲイルの姿が見えた。


「若様!」


 瞬時に飛び出した美里が京太を受け止める。が、そこに瞬間移動で現れたゲイルが、京太と美里をそれぞれ別方向に蹴り飛ばして引き剥がす。


 ゲイルは紗悠里たちの前に立ち塞がり、細剣を向ける。


「あんたたちの相手は私だよ。楽しい愉しい殺し合いの真っ最中なんだ。邪魔はしないで欲しいね!」

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